景気は底入れしたというが、喜ぶのは早い。米国の景気回復の余慶にあずかっている面が強いからである。その米国の立ち直りの牽引(けんいん)力は企業である。IT投資を削減し労働力の投入も思い切って減らした。全体としては労働分配率を下げながら企業の体力を取り戻し、生産の回復、そしてIT投資の再開に入ったということである。
消費が予想ほど落ち込まなかったのには2つの理由がある。第1は同時多発テロが愛国心を呼び沈滞ムードを押し返したことと、ゼロ金利で自動車の購買意欲をそそり、新車購入のデモンストレーション効果を引き出したこと。第2は、消費者信用、つまり消費者の負債は上限まで来ているのだが、株価が戻し、所有不動産の価格もあまり下がっていないために、消費者のマインドが底堅いことである。
しかし、消費は今後更に伸びるのだろうか。賃金水準が高止まりしているために、これからの雇用増は、IT投資で換えられてゆく公算が大きく、期待はできない。米国の回復は緩やかなものと見る必要がある。
一方、日本は米国のIT投資の回復の影響がアジア諸国にも及ぶ中で、輸出の増加が景気回復の柱となっている。円安の寄与も少なくない。しかし労働分配率は、と言えば、米国に比べてかなり高い水準のまま推移している。企業の体力は身をそがれたままの状態にある。経済の発展期に政治が国民に年金、健保など福祉を手厚くし過ぎたしわ寄せが企業に重くのしかかっているのである。
経済の回復にとって、その不均衡の是正は避けることのできない最大の課題であることは明らかだろう。その采配(さいはい)を振るべきは政治であり、焦点は税制にある。端的に言えばかねて諸外国に比べて高過ぎると言われてきた法人税を下げ、消費税を引き上げるということである。「骨太の改革」とは何か、もう一度よく考える必要があるのではないか。