4大銀行グループなど大手行の内部監査には民間から専門家を起用した通年グループを組織するほか、今後も地域金融機関を中心に合併を促進する――金融庁があす12日夜に特別検査結果とともに発表する予定の「強固な金融システム構築に向けた施策」と題した“金融システム安定化策”全容が明らかになった。新しく発生した不良債権処理については「3年以内にオフバランス化につながる措置を」としたうえで、「具体的な処理は原則1年以内に5割、2年以内に8割を目標にして処置を講ずる」など厳しい内容を各金融機関に要請している。また、中小企業に主眼を置いた「金融検査マニュアル・中小企業融資編」を新たに作成。中小企業への融資基準などを細分、厳格化する内容を盛り込んだ。バブル崩壊後、中小企業へのいわゆる「貸し渋り」が問題になっているが、今回のマニュアルはこの傾向をさらに強める危険性も孕んでいるといえ、大きな論議を呼ぶことになりそうだ。
新施策は今月8日、小泉首相が金融庁に対し「ペイオフ実施もあり、金融システム安定に向けて不良債権処理をさらに急ぐよう切れ目なく手を打ってほしい」と指示したことを受けて作成されたもの。
●「不良債権は3年以内にオフバランス化を」と期限を設定
まず「不良債権処理の促進」では、主要行の破綻懸念先以下の新規発生分債権について「3年以内でのオフバランス化」と期限を設定。これをベースに具体的な処理については「1年以内に5割、2年以内に8割をメド」とするなど、これまでになく突っ込んだ指示を各行に要請している。これらの目標を実現するために「信託を含むRCC(整理回収機構)の機能を積極的に活用する」とまとめている。
●「大手主要行には民間登用で専担検査グループを常駐させる」〜厳しく
4大グループをメインとする主要行については、「グループ別に検査部門を再編成し、各部門が1年を通じて同一グループ内の金融機関を継続的、専担的に検査」とする実質上の“常駐検査体制”確立を打ち出した。一向に減らない不良債権額に国が業を煮やした格好となったが、さらに「内部監査体制などについて重点的に検証するため、民間の専門家を登用した専門班がグループを横断的に検査する」ことも盛り込んだ。金融機関の内部監査を第3者である民間から起用して、銀行の透明性を少しでも向上させよう―が大きな狙いだ。
●「地銀は今後さらに再編・合併が求められる」〜まだある不安?
大きなヤマ場は越えたと言われる金融機関の合併や再編についても言及している。「主として地域金融機関を念頭において、合併促進を中心とした施策を早急に検討する」ことを打ち出している。これは再編が、大手グループの次に来るのは地銀や地域信金などに移行してきたことを意味すると同時に、まだまだこれからも金融機関には不安があることを伝えている。そのために「収益性の改善によって経営基盤を一層強化するとともに、中小企業金融の円滑化を図る」ことを最大のテーマに置いている。
●「中小企業向け融資を厳格化」〜新検査マニュアル作成へ
最後に「経営実態に応じた検査の運用確保」と題して、中小企業に主眼を置いた“金融検査マニュアル・中小企業融資編”を新たに作成する。マニュアルの解説と具体的な適用事例が含まれ、中小・零細企業などの債務者区分の判断や運用例などが網羅されている。その内容も具体的で「実態的な財務内容」、「赤字で返済能力が無いと認められる場合」、「代表者などの個人資産を加味するケース」、「経営者個人の信用力や経営資質」、「業種の特性」、「返済条件を変更している場合」・・・などと一層の細分化と厳格化に及んでいる。言い換えると、中小企業といえどもこれまでの大企業並みに融資や返済の条件を厳しく設けることで、不良債権の処理を進め、新らたに発生するのを防ごうとする目的がある。
(東山恵 市川徹)