日本銀行が1日発表した3月の企業短期経済観測調査(短観)は、米国の景気回復や在庫調整の進展を背景に、指標となる大企業・製造業の景況感が00年12月以来5期ぶりに横ばいとなり、景気の悪化に下げ止まり感が出てきた。日銀や政府が3月の景気認識を上方修正したのに比べると、足元の景況感は厳しく、景気回復のテンポは緩やかになりそうだ。
企業の景況感を示す業況判断DI(業況が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた指数)は、大企業・製造業で昨年12月の前回調査と同じマイナス38となった。業種別では、前回落ち込みが激しかった電気機械が半導体市況の好転でマイナス59と6期ぶりに改善。在庫調整が進んでいる化学や繊維など素材関連業種も改善した。
過去の景気循環をみると、大企業・製造業の業況判断DIの底入れは景気の谷のタイミングと重なることが多い。今回の調査期間(2月22日〜3月22日)は政府の空売り規制などで株価が回復した時期と重なり、その影響が出た面もあるが、景気回復に転じる兆しが見えてきたともいえる。
大企業・非製造業も前回と横ばいのマイナス22。業種別では建設や小売りは中小企業を中心に倒産が多発し、大幅に悪化している。一方、中小企業・製造業はマイナス51と前回より2ポイント悪化し、5期連続の悪化となった。
6月にかけての先行き判断は大企業・製造業でマイナス27と大幅な改善を見込む半面、非製造業では雇用・所得環境の悪化が響いてマイナス21と1ポイントの改善にとどまり、不安感が根強い。
02年度の大企業・製造業の売上高見通しは前年度比0.6%増、経常利益見通しも同36.8%増と、下期からの景気回復とコスト削減の効果などからともにプラスを見込む。
しかし、設備投資計画は設備の過剰感が依然として根強く、大企業で前年度比マイナス8.4%と2年連続のマイナス。中小企業でもマイナス24.8%と落ち込みがより厳しい。(10:15)