三菱自動車工業<7211>は27日に臨時取締役会を開き、親会社である独ダイムラークライスラー出身のロルフ・エクロート副社長(59、乗用車事業COO)が6月25日末に社長に昇格するトップ人事を内定した。園部孝社長(61)は会長に就任する。エクロート氏の社長就任は、昨年1月に三菱自動車に送りこまれた時点からの既定路線。
三菱自動車は、2000年夏に発覚した“リコール隠し”で、国内販売が極度の不振となっており、再建に手間取っている。ダイムラーは経営権を完全に掌握することで、再建を加速させる。
●ヒット車不在で重い足取り
三菱自動車は、エクロート氏を迎えた昨年初めに、2001年度から3カ年の経営計画「ターンアラウンド計画」を策定、日産自動車<7201>同様のV字型回復を狙ってきた。初年度の2002年3月期の連結最終損益は、目標どおり収支トントンになる見込みとなった。「これを機に2年目以降の計画推進を加速するためにも交代を決めた」(園部社長)という。
2781億円の連結最終赤字を計上した前期に比べると大幅な改善となるものの、円安という強力な追い風があったことによる。国内販売では新型軽自動車くらいしかヒット商品がなく、再建の足取りは重い。
ダイムラー自体も、米国クライスラー部門の赤字により2001年12月期は、1998年のクライスラーとの合併以来、初の赤字に転落している。ドイツ国内の株主からは、そもそもクライスラーとの合併は誤りだったのではという、批判も噴出している。
このため、傘下の三菱自動車の再建を急がなければならないという事情もある。ダイムラーのユルゲン・シュレンプ社長は、今回のトップ交代に合わせて27日に来日、三菱自動車の首脳陣に再建に向けて綿密な指示を飛ばした。
●ダイムラーの狙いは環境技術
今後の三菱自動車の再建は、ダイムラーとの商用車(トラック・バス)部門の提携強化が大きなカギとなる。ダイムラーは、世界トップの大型トラックメーカーでもあるが、欧州での環境規制強化への対応に膨大な投資が必要となる。ダイムラーは、三菱自動車のディーゼルエンジンなど「環境対応技術に最大の関心」(三菱自動車幹部)を寄せている。傘下に収めたのもそのためだが、商用車部門の協業が進めば、三菱自動車にとっても事業拡大という恩恵に浴することができる。商用車部門は、現在社内カンパニーの位置付けとなっているものの、今後はダイムラーとの提携を活発に行うため、分離・独立させることも検討されよう。
エクロート氏の社長就任により、自動車メーカー11社のうち、日産、マツダ<7261>を含む3社が外国人社長となり、経営不振企業の再建が外資主導で行われる自動車業界を象徴することにもなる。27日、都内で記者会見したエクロート氏は「(業績回復への)実行を株主や取引先に約束する。結果で当社を判断していただきたい」と、述べた。
○URL
・三菱自工、進まぬ再建計画、早まるダイムラー出身の社長昇格
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200106/14/20010614111016_52.shtml
[池原照雄 2002/03/27 17:15]