【ワシントン14日=天野真志】国際通貨基金(IMF)は14日、国際金融市場の見通しなどを分析した「2002年版・国際金融安定報告」を発表した。報告は、日本経済が、国際金融市場の安定にとって大きな不安要因になるとの見方を示したうえで、金融機関の不良債権処理や企業のリストラといった経済構造改革を日本がさらに急ぐ必要があることを訴えた。
まず報告は、国際金融市場が昨年、米同時テロの影響で一時的に混乱したものの、今年以降は、米国の景気回復などに伴い、安定的に推移していく可能性が高いことを指摘した。だが、日本経済については「デフレが長期化する中、巨額の不良債権が多くの金融機関の経営を一段と悪化させ、格付けの低下などを招いている」と分析したうえで、こうした日本の問題点が解消されなければ、日本が国際市場の懸念材料となってしまう危険性を強調した。
また、報告は、日本経済のぜい弱さを背景に、円相場が円安、円高のどちらの方向にも大きく振れるリスクがあるとの見解も示した。一層の金融緩和などで円安が一段と進む場合と、海外拠点を減らすなどのリストラを日本の金融機関が進めることで、海外から資金が引き揚げられ、円高が起きる場合の双方の可能性があることを指摘した。