【ワシントン逸見義行】
エネルギー販売最大手、エンロンの倒産事件で、同社の会計監査を担当していた世界5大会計事務所のひとつ、アーサー・アンダーセン(本社・イリノイ州)の信用が大きく落ち、契約解除に踏み切る企業が目立ち始めた。アンダーセンの経営危機が深刻化するのは必至で、市場では「他の会計事務所との合併で生き残りの道を探るしかない」との厳しい見方が広がり始めている。
米航空業界3位のデルタ航空は7日、約50年間続いてきたアンダーセンとの契約を解除し、会計監査事務所を変更すると発表した。税金など会計監査以外のサービスについての契約は継続するとしているが、今回の契約解除は、アンダーセンの信用低下に拍車をかけそうだ。
会計監査については大手医薬品メーカーのメルクも1日、大手住宅金融会社のフレディ・マックも6日、アンダーセンとの契約を打ち切ると発表しており、アンダーセン離れが急速に進んでいる。
業界筋によると、今年に入って34社がアンダーセンとの会計監査契約を解除した。昨年6月時点でアンダーセンの顧客のうち、手数料収入が多かった上位5企業のうち4社がすでに会計監査契約打ち切りを決めた。アンダーセンは「世界で1万社以上の顧客があり、その大多数は契約を維持している」と説明し信用の維持に懸命だ。
アンダーセンは、エンロンの不正経理疑惑に荷担したうえ、証拠隠滅工作をした疑惑が指摘されており、米司法省が捜査を進めている。