金融庁は六日、金融機関の大口取引について本人確認を義務づける
「金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法案」(仮称)をまとめた。
確認に応じない顧客との取引を金融機関が拒める規定を盛り込み、
金融機関や顧客向けの罰則も整備した。対象は二百万円超の取引とする予定。
第一目的であるテロ資金の根絶だけでなく、資産隠しなどの不正な動きをけん制
する効果も見込む。
法人は3億円以下 資産隠しなどけん制
両替商や郵便局も
■対象
銀行、信用金庫・信用組合、保険会社、証券会社に加えて農林系金融機関、
商工組合中央金庫、短資会社、労働金庫、両替商、貸金業者や郵便局での取引
も含む。実際は現金の振込や株式・投資信託、債券などの金融商品の換金が
中心になる。
現在の業界の自主ルールで本人確認が必要な取引は三千万円以上。ただ、法案
には上限を直接定めず、今後政令で規定する。金融庁は二百万円超とする方針。
これに対し、業界には事務の負担が大きいとして上限を引き上げるべきだとの声も
くすぶっている。
法人は代表者ら対象
■罰則
金融庁の命令に違反した者には二年以下の懲役または罰金三百万円以下の罰則を
与える。資料の提出に応じなかったり、立ち入り検査を拒んだ場合は一年以下の懲役
または三百万円以下の罰金。一方、顧客が事実を隠ぺいする目的で本人確認に正しく
応じないなら五十万円以下の罰金となる。
法人の場合は代表者や従業員らが対象になり、金融庁の命令違反なら三億円以下の
罰金刑を科される。
確認記録 7年間保存
■事務手続き
「運転免許証などの公的書類の提示」によって顧客の氏名、住所、生年月日を確認する。
健康保険証やパスポート、障害者手帳なども有効になる見通しだ。
金融機関は本人確認をした取引から七年間は政省令で定める方式に基づき、関連記録
を保存しなければならない。確認に応じない顧客には預金払い出しに応じないなどの
措置をとれる。
外為法改正案
努力規定から確認を「義務」に
■海外との取引
財務省は金融庁の法案と足並みをそろえて外為法改正案をまとめた。為替取引について
現在は本人確認を努力規定としているのを義務化する内容。対象や七年間の記録の保存
など大枠は同じだ。外国との資本取引や貿易に関して、必要に応じて外相や政府機関と
協力する点も盛り込んだ。
金融庁と財務省は各法案を国会で一括審議するよう求めている。今国会中の成立を目指す。
金融庁が是正命令も
■行政の権限
金融庁は本人確認の事務に問題があった時など法令に違反したと認めた場合、是正命令
を出す。金融機関の業務に関する報告や資料の提出を求めることができ、帳簿を調べるため
の立ち入り検査の権限も持つ。
農林系金融機関などについては、その監督官庁yと金融庁が連携して調査する。