「(当初案の発表後にその評価をめぐって)外部の方々からいろいろと声が入った。それらをすべて受けとめて…」
「外部からの要請通り…」
ダイエーの高木邦夫社長は、記者会見の席上、こうした物言いで“外部”という表現を連発した。
高木社長の言うところの“外部”とは、金融庁のことを指すとみて間違いないだろう。そうした意味において、ダイエーの再建計画−いわゆる「新3カ年計画」−が策定されるにあたって、金融庁が果たした役割は極めて大きい、といえるだろう。
2月27日の午後4時半過ぎ、ダイエーは都内のホテルに記者団を集め、UFJ、富士、三井住友各銀行の主要取引3銀行からのトータルで5200億円にのぼる金融支援を柱とする経営再建計画の発表を行った。
そもそも1月18日に発表された新3カ年計画の「骨子」−再建計画の“当初案”−では、主要取引3銀行からの金融支援額については4200億円という金額が設定されていた。
ところが、わずか1カ月ちょっとの間に、その金融支援額は1000億円も上積みされてしまったのである。
「主要取引銀行団としては、そもそも『骨子』を策定した段階で、金融支援額は最終的に約400億円程度上振れするだろうと想定していた。その点については、ダイエー−つまり高木社長も同様の認識を持っていた、といえるでしょう」(主要取引銀行幹部)
ところが、その金融支援額は最終的に1000億円も増額されてしまったのである。果たして、その背景には何があったのだろうか。
「言うまでもなく、金融庁からの強いプレッシャーですよ」(前述の主要取引銀行幹部)
去る2月21日、金融庁幹部が主要取引銀行のダイエー担当責任者に対して緊急召集をかけ、金融支援額の増額を強く迫ったのである。
「金融庁と主要取引銀行が、ダイエー問題に関して接触を持ったのは、何も21日だけではありません。主要取引銀行のダイエー担当のある幹部は、ほぼ毎日のように金融庁に出向き、ダイエーの経営再建策の策定作業の状況を逐一報告し、指示をあおいでいたのです」(別の主要取引銀行幹部)
こうしたコメントからも明らかなように、金融庁は主要取引銀行を通じてダイエーを完全な管理下に置いていた、と言っていいだろう。
「特に金融庁がこだわったのは、“大台乗せ”−つまり5000億円を超える形での支援−という点なのです」(前述の主要取引銀行幹部)
最終的に、主要取引銀行による金融支援策は金融庁の意向通りに決着をみることとなる。
「そもそも高木社長自身としては、こうした金融庁主導の金融支援決定については強い不満を持っていたことは間違いありません」(ダイエー幹部)
事実、昨日の記者会見でも高木社長は、「1700億円もの債権放棄を受けることについては、われわれにとっては取りたくない選択だった。まさに苦渋の決断だ」と発言している。
「こと“金融支援策”という点では、高木社長−つまりダイエーは、完全に当事者能力を失っている。高木社長がいくら『当事者は、銀行とダイエー』と言ってみたところで、本件に関する実質的な当事者は銀行と金融庁なのです」(主要取引銀行役員)
そうした点で、ダイエーが再建できるか否かについて責任は極めて重要だ、といえよう。