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Wed, 20 Feb 2002, 4:57pm JST
米経済コラム:日本経済は「巨大なエンロン」か
東京 2月18日(ブルームバーグ):ブッシュ米大統領は今回のアジア歴訪で、やっかいな問題に事欠くことはないが、1つ良いことは米エネルギー卸売会社エンロンをめぐる米国内でのごたごたから離れられることだろう。しかし実際には、エンロン沼から逃げ出したつもりが、日本経済という別の沼に足を踏み入れただけかもしれない。
日本経済と企業のエンロンとを比較するのは突飛に思えるかもしれないが、ハイ・フリークエンシー・エコノミクスのワインバーグ氏、フォーリン・エクスチェンジ・アナリティクスのギルモア氏の両エコノミストは先週、「エンロンのような性質を持った」日本経済には注目が必要とのリポートを発表した。
ワインバーグ氏は、日本の銀行は問題山積で、その多くは踏み込むことができない会計慣行によって隠されていると説明。多くの経営者、規制当局者、監査人、格付け機関関係者は過去数十年、目を背けることで安穏としてきた面もあると述べた。
透明性の欠如
米格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスは13日、日本の円建て国内債券の格付けを最大2段階引き下げの方向で見直すと発表した。この際、ムーディーズはエンロン破たんに言及したわけではないが、エコノミストは関連性を連想せずにはいられなかった。エンロン破たんをきっかけに米会計慣行やリスク評価のずさんさが注目されるようになり、破たんを見抜けなかった格付け機関が突如として日本の銀行の格下げに躍起になっている可能性があるとワインバーグ氏はみている。
多分、エンロンと日本の銀行の最大の類似点は「透明性」だ。銀行が不良債権絡みの損失規模を完全に公開していないのは間違いないとみる専門家もいる。9月上期決算での長期保有株の時価評価もしかりとみられる。9月末時点の日経平均9775円では、多くの銀行が破産状態にあることを発表せざるを得なかったはずだ。日経平均は依然上昇しておらず、株の含み損はカバーが不可能でないにしても、一層困難となろう。日本政府は銀行の3月期本決算救済のため、恐らく公的資金を注人するだろう。
世界の最も優秀なエコノミストたちでも日本経済の惨状度合いを測ることができないとすれば、ブッシュ大統領のような政治家なら一層難しいだろう。エンロン沼から抜け出し、別の沼にはまったとしても不思議ではない。
格付け機関への疑問
ギルモア氏は、日本の銀行がエンロンのような性質を持っているといわれるゆえんは、どの程度悪いのかという実体をだれもつかんでいないことだと語る。同氏は、株式持ち合いが金融システムのぜい弱さの一要因と指摘。日本は「すべてOKだ」とでもいわんばかりに振る舞い、事態は好転すると思っているが、エンロン幹部も破たん直前まで、「すべて順調だ。世界経済の回復を期待しよう」と社員に言っていたのではなかったか。
日本の不良債権問題は日々悪化しており、経済の足かせとなっている。公的部門のその障害が長期見通しにとって問題があることは、ほぼ民間部門にも当てはまる。格付け機関がなぜ、民間企業の格付けをもっと大幅に引き下げなかったのかが疑問になる。ギルモア氏は言う。「もちろん、日本の民間企業と公的債務の格付けに関する格付け機関の対応は、アーサー・アンダーセンによるエンロンの会計監査とはモラル面で同等ではない。だがもっと早く、より積極的に動くべきだった」。(ウィリアム・ペセック・ジュニア)
(ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
ニューヨーク William Pesek Jr.、東京 小針章子 Akiko Kobari、