「金融庁は徹底的に“外資”との対決姿勢を強めていく方針のようだ。金融庁としては場合によっては、日本の株式マーケットから全面的に“外資”を駆逐してもかまわない、とまで考えている、と見ていいだろう。近々、この両者が全面戦争に突入するのは間違いない」
大手証券会社首脳がこう断言してみせる。
2月に入って、東京・兜町では以下に紹介するような奇妙な“ウワサ”が流布している。
その“ウワサ”とは、「兜町から、金融庁の検査官が一斉に姿を消した」というものだ。
事実、1月下旬に複数の中小証券会社で検査が着手されたものの、検査の終了を待たずに、全検査官が撤収してしまったのである。
「それ以外でも、2月5日に検査着手を予告されていた外資系証券会社についても、今に至るも検査官が姿を見せていないというのです。大量の証券検査官が一斉に姿を消してしまったことで、マーケットでは様々な憶測を呼んでいるのです」(大手証券会社幹部)
果たして“消えた証券検査官”は、どこに消えてしまったのだろうか。
「一説には、大手証券会社に対して緊急に検査を実施する必要が生じたため、そちらの方に検査官が一斉にシフトしたのではないか、と言われているのです。もしそうだとしたら、3大証券クラスが経営危機に陥っている可能性が高い、と兜町ではささやかれているのです」(前述の大手証券会社幹部)
そして、こうした“ウワサ”はかなり根強くマーケットに流布しているのが実情だ。しかし、こうした“見方”は全くの事実誤認だったのである。
「実は、マスコミ的には全く報道されていませんが金融庁は東証−つまり東京証券取引所に検査官を送り込んでいるのです。東証に対して立ち入り検査を実施すること自体、決して異常なことではありませんが、あまりポピュラーなことでもありません」(金融庁幹部)
果たして、金融庁の狙いはどこにあるのだろうか。
「証券検査官が一斉にチェックしているのは、“場帳(ばちょう)”と称される売買一覧表です。この場帳をチェックすれば、各証券会社の売買動向がすべてモニターできるのです。そして金融庁の狙いとするところは、“カラ売り”の動向をすべてチェックし、違法取引をあぶり出すことにあるのです」(金融庁幹部)
そして金融庁が最大のターゲットとして捉えているのが外資系証券会社なのである。
「これまで違法な“カラ売り”を繰り返し、意図的な株価引き上げ工作を行ってきたのはすべて“外資”に区分される投機筋だった。こうした動きを完全に封じ込めるためにも、東証への検査は必要不可欠だったのです」(金融庁幹部)
金融庁はここ3カ月間で3件のカラ売り規制違反を摘発してきたが、そのすべてが外資系証券会社だった。
2001年12月21日…ゴールドマン・サックス証券、2002年2月1日…モルガン・スタンレー証券、同年2月6日…バークレイズ・キャピタル証券
「こうして警告を発していたにもかかわらず、“外資”の連中は違法な“カラ売り”をやめようとしない。そこで断固たる対応をとることになったのです。そうしなければ3月末−年度末へ向けて連中のいいようにされてしまうことは明白だ」(金融庁幹部)
金融庁の威信をかけたこの“全面戦争”の行方には、要注目だろう。
2002/2/20