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(回答先: それなら、「ピョンヤン宣言」を反故にするしかありません 投稿者 あっしら 日時 2002 年 11 月 16 日 00:57:12)
あっしら氏の論の補足意見になるが、国家間の約束違反と拉致被害者5人の問題について私見を述べてみる。
相手が平気で約束を破るような非道な国だから、こちらだって相手に不義を行なってもどうということないと言う論理は、道徳の世界の話であり、食うか食われるかの政治力学とはほとんど関係ない。相手が約束を反故にすることと、こちらが別の件で反故にすることとは相互に独立した問題だと思う。
国家間の約束、あるいは約束違反の問題に対しては、きちんとした認識が必要だ。どういうことかといえば、国家間の約束を破るのは、破ることによってそれなりの大きな価値が生まれる場合である。でなければ、相手を怒らせるだけに終わり、意味がない。北朝鮮が対米合意に反して核開発をしたことは、約束を踏みにじっても、核を保有することによって相手に対抗しうる力を持つ、あるいは脅威を与えうるという大きな価値があるからである。
ところが、5人の拉致被害者の問題ではどうか。約束を反故にしても5人をこのまま日本に永住させることに、どれほどの価値があるのだろうか。北朝鮮にとっては、5人の個人のことなどはどうなってもよいのだ。つまり、北に戻ってこなくても別に困らないのだ。日本政府が5人を北へ戻さなければ、約束違反を攻撃材料にできてかえって都合がよいかもしれない。現に起こっていることはそれだ。困るのはむしろ家族が離ればなれになった5人と、北に残っている家族である。日本政府が5人を人質にとったわけではなく、交渉の武器にならない。冷酷無比な北朝鮮当局が、残された子供が気の毒だから親のいる日本側へ渡そうなんて思うわけはない。武器として使えるのはあくまで国交樹立と経済援助だろう。
政府はなぜ約束を破って5人の日本永住を決めたのか。恐らく、日本の親族の私的感情と、世論の北朝鮮憎しの大合唱に押されたのだろう。ナショナリズムの危うさだ。そこには国民世論に逆らってはまずいという小泉政権の無責任な保身が見て取れる。何にせよ、こうした動きは政治ではない。外交上の取引とは思えない。5人を一時的にでも帰国させよという日本の要求に北朝鮮が応じたので、これ幸いと抱き込んでもう離すまいとする。やり方がみみっちく、子供じみている。
過去、金正日の息子が日本へ不法入国した際、超法規的に急いで北へ帰して千載一遇の機会を放棄した。当時すでに横田めぐみさんの両親たちが拉致問題の解決を訴え続けていたのである。メディアも政府の処置を容認した。今度は武器にも使えない5人を頑なに留め置く。やることが逆である。