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Re: 日本経済を破滅に導く官製欺瞞情報
投稿者   日時 2002 年 11 月 10 日 05:33:37:

(回答先: 債権買い取り、客観的な選別指針策定がポイント 投稿者 日時 2002 年 11 月 10 日 00:09:20)

☆オモシロイ。問題は880兆円程度の国内供給力に対して国外(主に中国)の供給力もデカイから、いくら金を刷ってばらまいても、そっちにかなり吸い取られるってことかな。だから単にバラまくより、まず国債の焚き火に使って、失業対策や新規需要開発のためのIT投資や、技術開発投資の公共事業に使うのが良いカモ。


『ジャパン ポスト』平成14年11月1日号掲載

日本済済再生政策提言フォーラム
                    会長 大阪学院大学教授 丹羽 春喜
丹羽経済塾 塾長 丹羽 春喜

         日本経済を破滅に導く官製欺瞞情報
        −−−許しがたい政策当局の悪知恵−−−


経済の鉄則を無視する不可解な政策姿勢

 10月に入って、株式市場の低落は、ますます惨たんたるものとなった。日経平均株価は8000円の大台をさえ割り込みかねない状態である。実体経済に関しても、不況の激化を示す重要指標の危険な兆候の続出は、まさに枚挙に暇がないほどである。政府財政の破綻状況も、税収の激減によっていやがうえにも深刻化しつつある。

大規模な総需要拡大政策断行で力強い経済回復を!

 このような危機的な現状であるにもかかわらず、わが政府は、いぜんとして、本格的な経済・財政の回復・再建策を実施しようとはしていない。言うまでもなく、この「本格的な」回復・再建策とは、大規模なケインズ的総需要拡大政策の断行ということにほかならない。総需要の拡大なくして不況からの経済回復はありえない。現在のわが国には、巨大なデフレ・ギャップの存在という形で生産能力に膨大な余裕があり、インフレ・ギャップ発生の危険が皆無なのであるから、総需要を大幅に増やしさえすれば、たちどころに急速で力強い経済回復が達成されうるのである。これは、疑う余地のない鉄則である。そして、経済が回復しさえすれば、政府財政も再建されうる。そして、いわゆる不良債権・不良資産も、たちどころに優良債権・優良資産に一変しうる。この鉄則を無視しているかのごときわが政府当局の政策姿勢はまことに不可解である。

内閣府の『経済財政白書』がデフレ・ギャップ(GDPギャップ)の発生を否認

 このような不可解かつ不合理なわが政府当局の政策姿勢の頑なで理不尽な確信犯ぶりは、それを、旧経済企画庁が出してきた毎年の『経済白書』、および、それを昨年から引き継いだ内閣府の『経済財政白書』において、明瞭に読み取ることができる。すなわち、この『経済白書』および『経済財政白書』のシリーズでは、まぎらわしくミス・リーディングな数値を故意に算定して示すといったトリック的な策略を弄して、わが国経済における巨大なデフレ・ギャップ(GDPギャップ)の発生・累増という疑う余地のない重大事態を、否認・秘匿し続けてきたのである。デフレ・ギャップの発生が否認されてしまっているのであるから、総需要の不足ということも基本的には否定されているのであり、したがって、総需要拡大政策が本格的に策定・実施されるといったことも、ありえないことになってしまっているわけである。

わが国の潜在GDPは年率880兆円程度である

 言うまでもなく、「デフレ・ギャップ」とは、経済が完全雇用・完全操業であれば達成しうるはずの潜在的GDPという「天井」の水準から見て、現実のGDPがどれだけ下回っているかということを言う。私が本欄で幾度も精密な計測結果をグラフなどを用いて示してきたように、近年のわが国の場合、もしもマクロ的に完全雇用・完全操業の状態であれば、GDPの水準は控えめに見積もっても年率880兆円程度(90年価格評価の実質値)に達しているはずである。これが潜在GDPの水準であるが、現実のGDP実際値の水準は480兆円程度にすぎず(同じく90年価格評価の実質値)、潜在GDPという「天井」の6割の水準にさえ達していない。つまり、40%以上ものデフレ・ギャップが発生し居座っているのが現状なのである。

現実のGDP実際値の水準は480兆円程度である

 ところが、このことを隠蔽・秘匿するために旧経済企画庁が行なってきたことは、低迷を続けている近年のGDP実際値それ自体の「でこぼこをならした」平均的な傾向値を算定し、そのような「平均的な傾向値」からの年々のGDP実際値の偏差を「GDPギャップ」(すなわちデフレ・ギャップ)だと称して『経済白書』などに示すというやり方であった。同白書では、このGDPの「平均的な傾向値」を、経済学の「生産関数」理論とそれに基づく計量経済学的な推計手法で求めるといったことを、やってみせている。しかし、そんな手のこんだことをやるまでもなく、たとえばフリー・ハンドの手描きで傾向線を引いてその値を求めても、結果はほとんど同じであったはずである。いずれにせよ、完全雇用・完全操業レベルの潜在GDPという「天井」からみてGDP実際値がどれだけ下方へ離れているのかを測るのではなく、ただ単に、近年におけるGDP実際値それ自体の「平均的な傾向値」からの年々の偏差を見るだけなのであるから、それは、いずれも、ごく僅かの幅のものでしかなかった。

「デフレ・ギャップ」は880兆円−480兆円=400兆円である

 かくて、毎年の『経済白書』では、平成不況が続いてきたにもかかわらず、90年代のわが国の経済において、デフレ・ギャップ(GDPギャップ)の発生がきわめて僅かであるとして、あたかも、労働力と資本設備との総合で、常に96〜97%以上、時には100%をさらに数%も上回ることさえあるかのような、きわめて高い操業率(これだと景気過熱の超好況だ!)が維持されてきたとするミス・リーディングな数値が、示されてきたのである。まことに悪質な数字的トリックであった。

『経済白書』では、平成不況は存在せず

ところが、経済企画庁を吸収して新に発足した内閣府が昨年12月に出した『経済財政白書』(平成13年版)では、デフレ・ギャップ(GDPギャツプ)算定方法における、一見重要な変更に思われることが行なわれた。すなわち、それまでの、「平均的な傾向値」からのGDP実際値の偏差を測るのではなく、「潜在GDP」の水準から見て、実際のGDP水準がどれだけ離れているかを計測するものと改められたのである。
 そして、この「潜在GDP」は、企業が、過不足なく、資本設備を稼動させ、労働力を雇用したとした場合にもたらされうるGDP水準であると、定義されたのである。しかしながら、このような計測方法の変更がなされたはずであるのに、この『経済財政白書』に示されたデフレ・ギャップの算定値は、付図1のごとく、従来の平成12年版までの『経済白書』に掲げられていた算定結果と、ほとんど同じであった。

付図1


「潜在GDP」の水準を低くしてデフレ・ギャップを小さく見せる『経済財政白書』

 なぜ、そのようなことになったのであろうか。その理由は、「過不足なく稼動させ、雇用した」との想定での資本設備の稼動率と労動力の投入量の数字が、本来的には現状よりもずっと高い「潜在的な水準」として見積もられるべきであったのに、実は、不況下の現状とほとんど変わらないほどに低く見積もられたからであった。

 まず、資本設備の稼動率であるが、この平成13年版『経済財政白書』の記述によると、日銀の推計による周知の「景気動向指数」が、景気過熱でもなく不況でもない正常な景気状態であるということを示した時点をとり、そのようなときの企業の資本設備稼動率を、「潜在GDP」算定のために想定するべき資本設備稼動率だとしたようである。しかしながら、この「景気動向指数」なるものは、かつて1950年代、60年代の「高度成長時代」においては、実質GDPの年成長率が10%を割って8%程度になっただけで「不況」という意味合いの信号を発していた。

 ところが、今では、ゼロ成長を脱して実質GDPがわずかに1%程度のプラスの成長率になったというだけで、「好況」という信号を発信している。首尾一貫していないこと、まことにはなはだしいものがあり、経済活動の真の絶対的水準を示すインディケーターとしては、不適切きわまるのである。もちろん、そのような僅かに年率1%程度といったGDP成長率に対応する企業資本設備の稼動率は、きわめて低いものであろう。
 当然、このようなきわめて低い稼動率を仮定して推計された「潜在GDP」の水準も、はなはだしく低く算定されたわけである。


現状の「需要不足に起因する失業」は、0.3〜1.0%前後とする『経済財政白書』

次に、労働力の投入量についてであるが、「景況が不況であることによって生じている失業者」すなわち「需要不足に起因する失業者」(これを同白書では「循環的失業」と呼んでいる)が就業しえた場合を仮定し、それを現実の就業者数に加算した総人数を想定して、それによる総労働時間数を見積もり、それを「潜在GDP」の算定に用いている。この場合、このような「景況が不況であることによって生じている失業者数」(すなわち「需要不足に起因する失業者数」)は、総失業者数から、摩擦的要因などによる「構造的失業者数」を差し引いて算定されたことになっている。そして、この「構造的失業者数」とは、企業などが求人していながら、労働需給のミス・マッチにより人手が見つからず、「欠員」となってしまっている数なのである。

     付図2


 ところが、まことに奇妙なことに、内閣府の「経済財政白書」での計算では、付図2に示されているように、労働人ロの5%にもおよぶ近年のわが国における失業(実際は、もっと多いであろう)の大部分が、この摩擦的要因などによる「構造的失業」であるにすぎず、「需要不足に起因する失業」は、0.3〜1.0%前後といった、きわめて僅かなものでしかないとされているのである。もちろん、これは、どう考えても、おかしい(同白書に示されている算式は不適切)。

労働人ロの5%にもおよぶ失業はミス・マッチから生じる失業とする『経済財政白書』

 周知のごとく、摩擦要因などによる労働需給のミス・マッチから生じる欠員や失業(すなわち構造的失業)は、すこし時間が経てば、順次に自ずと解決されていくものであるから、あまり問題視する必要はない。重大視するべきものは、あくまでも、「需要不足に起因する失業」である。しかし、付図2のごとく、過去10年間、それが、僅かに労働人ロの0.3〜1.0%でしかなかったものとすれば、エコノミストの常識では、それは、超完全雇用の状態であり、わが国の経済は景気過熱の超好況を続けてきたものと判定しなければならないことになってしまう。言うまでもなく、そのようなことは、「平成不況」の実情とは、まったく合わない。
 
    付図3


付図3が明らかにする「需要不足に起因する失業」の増大

 内閣府による付図2の計算の誤りは、同白書の同じ箇所に掲げられていた付図3のグラフを見ても明らかである。この付図3では、「平成不況」が長引き深刻化してきたことにつれて労働需給がタイトではなくなって「欠員率」が大幅に下がってきたことが示されている。そして、それにともなって、93年ごろより失業率が大幅に上昇したことも示されている。このような失業率の上昇は、明らかに「景況が不況であることによる失業」すなわち「需要不足に起因する失業」の増大によるものである。すなわち、同じ白書に掲げられたグラフでありながら、付図3は、付図2に示された算定が誤りであることの明確な証拠となっているのである。

 そもそも、有効求人倍率が周知のごとく0.5〜0.6といったきわめて低い値にまで下がっている状況でありながら、「需要不足に起因する失業率」が、付図2のごとく僅かに0.3〜1.0%でしかないなどといったことは、あるはずがない。このように、内閣府は、動員・投入可能な余裕労働力という意味を持っている失業者数(構造失業以外の)をきわめて低く見積もったのであるから、それを算入して計算された潜在GDPの水準が、低いままのものとなってしまったのも当然なのである。


稼動率・失業率を低く見せるトリックを使う『経済財政白書』
 
 以上のごとく、内閣府は、企業資本設備の稼動率についても、余裕労働力としての失業率についても、悪知恵を弄した不合理なトリック的計算をあえてして、わが国の「潜在GDP」を、無理やりに「実際値のでこぼこをならした平均的なGDP値」に近似したきわめて低い水準のものとして算定し、それに基づいて、わが国の経済における巨大なデフレ・ギャップの存在を否認・秘匿し、90年代から現在までのわが国が、付図1のごとく、あたかも、完全雇用・完全操業であり続けてきたかのごとく示したのである。


総需要拡大政策の大規模な実施を封止して日本経済を破綻させる『経済財政白書』

 このような、旧経済企画庁から現在の内閣府にまで受け継がれてきている頑なで奇怪なスタンスにミス・リードされて、わが国はケインズ主義的な総需要拡大政策の大規模な実施を封止されてしまっており、そのことによって、わが国の経済と財政は、今や決定的な破綻へと引きずり込まれつつあるのである。深憂・痛憤にたえないしだいである。                                 〈了〉


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