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TOPIXを構成する大企業への厳しい態度は今後の株価の低落傾向をさらに強める可能性は高い。いずれにしてもメガバンクは査定能力を街金から教わるべきか。
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/colCh.cfm?i=t_kimura15
(KFi〔KPMGフィナンシャル〕代表 木村 剛氏)
最終更新日時: 2002/10/08
金融庁では、日本経済の再生に向け、「平成16年度には不良債権問題を終結させる」との小泉総理の指示を受けて、『金融分野緊急対応戦略プロジェクトチーム』を発足させることになった。同プロジェクトチームは、民間の専門家と当局とで構成し、不良債権処理に関する包括的なシナリオについて早急に幅広く検討することとなる。
このプロジェクトチームにおける議論を踏まえ、金融庁では、十月中に不良債権問題を終結させるための方策を取りまとめる予定。10月3日、図らずも私自身が、メンバーに指名される運びとなった。
検査・マニュアルに責任転嫁しやりたい放題
その事実が意味することの重みは、翌日思い知らされることとなる。というのも、私がメンバーに指名されたその日、あるメガバンク(武士の情で名は秘す)の某支店が、中小企業の貸し剥がしを実施する際、「今度、木村というのが、金融庁のプロジェクトチームに入って、あんたのところの貸金を回収しろと言っている」と脅しつけたため、その中小企業の社長が弊社に抗議してきたからだ。
「やはり、そうだったか……」
私は深い失望を禁じ得なかった。様々な人々から銀行が貸し剥がしをする際、金融庁検査や検査マニュアルなどの責任にして、やりたい放題のむごいことをしていると、間接的には聞いていたが、それは事実であった。
銀行は、自らが生き残りさえすれば、何でもありだということで、嘘八百を並べ立て、他人のせいにしながら、貸し剥がしを行っているのである。
こういうことをしているから、日本経済は良くならないのだ。こういうビジネスをしているから、銀行は世の中の人から恨まれるのである。
私は即断即決した。こうした惨状にある中小企業の人々をサポートするため、出来る限りのことをしようと――。そこで、弊社のホームページで、次の文章を掲げたのである。
メールでとどいたある中小企業の苦境
「このところ、金融庁の対応、金融検査マニュアルの内容あるいは金融分野緊急対応戦略プロジェクトチームの発足を理由に、健全な事業を営む融資先に対する資金供給の拒否や資金回収を行なうなどの不適切な取扱いを行なう銀行もあるようです。万が一、貸し渋り、貸し剥し、金利引上げ、無理な要求、それに類する不当な扱いをされた方は、そのような行為をした担当者名、所属する金融機関名と部署・支店、その内容をE-mail(obanan@kpmg.or.jp)にてお知らせください。弊社は、木村代表を介して、金融庁のしかるべきところに責任をもって報告いたします。」
果たして掲載した翌日、早速いくつかメールが届けられた。そのうちの一つが、中小企業をめぐる金融の現状を見事に表現しているので、多少長くなるが全文を紹介したい。
「はじめまして。神奈川県で中小企業を営む者です。この度、貴社代表の木村さんが上記プロジェクトチームの一員として選定されましたことを受けまして、中小企業を営む者として、率直な意見を述べさせて頂きます。」
「私は基本的に木村さんの方策には賛成です。銀行の抱える不良債権問題は、そもそも日本に多く存在する中小企業の問題ではなく、一部の大手企業の問題です。」
「殆どの中小企業は、その担保に会社の定期預金などと個人の土地(現金換算七〇%程度)、保有株式、債券などを提供しています。返済も滞りなく行なっているにも関わらず、先月から再び中小企業や個人事業主に対して貸し剥がしが加速していることが見受けられます。」
「株価の低迷、内閣改造を睨み、金融行政が本格的に不良債権問題に取り組むと予想された時期から、私たちの身辺でも優良企業でありながら、銀行から融資の返済を求められており、この一年で、借金の半分以上返済されている方も多いです。残りも個人保有の土地を会社に売り、そのお金で返済するとか株を売って借金を返済している人も多いです。生命保険を解約されている方もおられます。」
「つまり返済能力に問題がない借金を不良債権として認定し、返済を迫っている実態が小口のレベルで起こっている現象です。一部の問題不良債権ばかり誇張して、行き過ぎた金融行政があるのではないでしょうか。」
「借りた金はなんとしても返すという事を愚直に実行しているのが中小企業の経営者です。中小企業の経営者は銀行からの借金返済要求に何とか応じて事業を存続させようと必死に努力しています。ここで銀行との縁を切るわけにはいかないというのが本音です。 日本の中小企業で現在生き残っているところは歴史も深く、技術力に長けた日本経済の宝だと思っています。その中小企業が一部の大手企業が抱える問題の為に真っ先に切られる運命にあります。」
「一方、大手ゼネコンに対しては債権放棄などという借金踏み倒しを認め、その分、中小企業の優良債権を奪い取っているのです。優良債権を不良債権として過度の回収を実施しているのです。」
「中小企業が借金繰上げ返済に応じる行動、借りた金は何とかして返すというごく当たり前の行動が、皮肉にも土地や株の売却を加速させている面があります。」
「ここ最近、大手過剰債務企業と一部の銀行の株価が急落しています。マーケットは早速不良債権の最終処理を織り込みに動いたわけですが危惧されるのは、優良な大手企業にもその思惑が波及し、取引している中小企業、下請けにもその波紋が広がることです。ある大手企業の仕事をメインとしている中小企業に対して、融資が打ち切られたり別の取引先から手形のサイトの短縮を要求されたり・・・・新規の仕入れが出来なければ、黒字倒産となります。」
「いよいよ本格的な信用収縮です。中小企業は黒字であるにも関わらず倒産が続出することになりかねません。既に兆候はあちこちに出ており、政府の緊急のメッセージが必要です。来週にも発表されるデフレ対策の骨子ですが、それを待たずに週明けにも企業経営者の不安を取り除くメッセージが必要かと考えます。
・ 不良債権処理加速により、優良企業、特に中小企業の資金繰りに支障をきたすことがあってはならない。
・ 政府系金融機関を通じ、優良な中小企業には潤沢な資金を準備する。
・ 貸付信用力調査の期間も大幅に短縮するため、人員を大幅に増やす。
・ 銀行から政府系金融機関への借り換えを容易にする方策及び貸付利率優遇を行なう。
・ 銀行の貸し剥がし対策のため、適正な担保評価が出来る第三者機関を設ける。など、できれば小泉総理の口から市場にメッセージを出して欲しいです。」
「木村さんをはじめ、プロジェクトチームの方には大いに期待しています。ようやく本格的な不良債権を処理出来る環境が整い、これまでの重しを早く取り除いて頂きたい。但し、その過程で上記のような余計な混乱をきたすことの無いように、充分にご配慮願いたいです。
大いに期待しています。」
つらい思い、プロジェクトチームに届けたい
貴重なご意見を寄せていただいたことに感謝したい。これだけの過分な期待に十分お応えできるかどうかは自信がないが、微力ながら、私はこのプロジェクトチームの作業に全力を傾ける所存である。
われわれが護るべきなのは、こうした辛い想いをしている中小企業なのか、それとも、貸し剥がしを続ける銀行経営者たちなのだろうか。答えは、誰の目にもはっきりとしているのではあるまいか。
読者の皆様にお願いする。
もし、同じような事例に直面していたり、知り合いがそういう境遇にあるのなら、Eメールでその内容を教えていただきたい(obanan@kpmg.or.jp)。いただいた事例をまとめた上で、プロジェクトチームの会合に提出することを、私は約束する。
今回のプロジェクトチームでの検討が、本当の意味で不良債権問題を解決することができるラストチャンスになるかもしれない。皆様からのインプットをいただきながら、出来る限り最善の解決策を得られるよう、努力したい。