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“自国破壊勢力”と“無能利権勢力”の綱引きから生まれたと思われる「総合デフレ対策」が発表された。
「総合デフレ対策は、(1)金融・産業の再生(2)経済活性化に向けた構造改革の加速策(3)セーフティーネットの拡充−−の3本柱」だという。
● 金融問題
「不良債権処理加速化」→公的資金注入国有化→外資に超破格値売却というスケジュールを先延ばししたものである。
しかし、スケジュールを先延ばししたからといって、それによって生じる経済変動が先延ばしされるわけではない。逆に、時間的猶予が与えられることで、当初竹中案で起きるであろう経済変動が政策的支えもないまま加速する可能性が高い。
銀行は、「竹中プロジェクト」が何をめざしたものであるか理解しており、自分の銀行は国有化されることにはなりたくないと考えている。
当初案がそのまま実施されていれば、複数のメガバンクが国有化されることは避けられなかったであろう。
ところが、自己資本算定基準の変更が先延ばしされ、資産査定の厳格化のみが早期に実施されることになった。(税効果会計の見直しは「算入上限について速やかに検討する」として実施時期を明記していない)
このような条件変更で銀行経営者が考えるのは、猶予期間内に国有化と経営者責任を免れる財務状況を何とか実現したいというものであろう。
日本経済全体がどうなるかはまったくの考慮外になり、生き残りを賭けた銀行の財務状況改善が追求されることになる。
増資により自己資本の拡充は難しい状況だから、財務状況を改善するためには、資産側の見直しをするしかない。
不良債権そのものは、政府との協議を通じて、OKが出たものは実質簿価でRCCに売り渡すことになる。しかし、政府も、「デフレ不況」が極端に悪化し失業者も大量に増加する不良債権処理はできないと考えるから、それだけでは、自己資本比率規制をクリアすることができない。
保有株式のある部分は日銀が買い取ってくれるにしても、それも購入価格を下回ったものであり、株価は「デフレ不況」の継続により今後も下落する可能性が高い。
日銀の銀行保有株式買い取りは、株価下落の加速を抑止し銀行の財務が急速に悪化することには貢献しても、財務状況を改善するわけではない。
このような状況であれば、銀行が財務状況を改善する手段は限られる。
まずはリスク性のある資産を増加させないことであり、次はリスク性のある資産を減少させることである。
すなわち、“貸し渋り”であり、“貸し剥がし”である。
それも、上場大手企業には政府の許可がなければ手を付けられないし、自分も道連れになる可能性もあるから、対象は中小企業になる。そして、対象となった中小企業の経営状況が良いか悪いかは関係のない話になる。とにかく、自己資本比率を上昇させるためには、リスクがある資産をリスクゼロの資産に代えなければならないのである。
“貸し剥がし”した資金をリスクゼロの国債に置き換えることによって自己資本比率の上昇を達成することができる。
銀行のこのような行動が日本経済にどのような影響を与えるかについては、これまで何度も書いているので、「デフレ不況」のさらなる悪化であるとのみまとめる。
“無能利権勢力”が勝ち取った譲歩は、銀行がなんとか生き延びるための猶予期間と「不良債権の無税償却」・「優先株の普通株転換を「経営の大幅な悪化」があるときのみ」・「経営陣の責任問題は「責任の明確化を厳しく求める」程度」なのである。
● 産業再生問題
産業再生については、融資機能を持ち再建可能な企業の再生を後押しする「産業再生機構」を預金保険機構の下に創設し、「産業再生・雇用対策戦略本部」を設け、産業再編や企業の早期再生について「基本指針」を策定するとしている。
これは、「デフレ不況」すなわちデフレを解消しない限り、産業の再生はあり得ないという基本認識がされていない対策である。
バブル崩壊を直接の契機として過剰債務の履行が不能になっている企業や債務履行が経営を圧迫している企業は、その重石が取り除かれることで“楽”になることは確かである。
しかし、楽になったからといって再生の道を歩み始められるわけではない。
債務の履行が困難になっているのは、売上・利益というフローの状態が悪化しているからである。債務の履行が必要なくなれば、ぎりぎり採算がとれる売上の確保だけでいいわけだが、名目GDP及び実質GDPが縮小している経済状況なのだから、その実現は困難である。
さらに問題なのは、重石がとれた企業が“楽”になって生き残ることで“競争力”を回復し、これまで何とか健全に経営してきた企業を圧迫するようになることである。
これまで利払いだけはなんとか継続するという姿勢で1億円で販売していたものを、9千5百万円で販売できるようになる。
これは、50社の過剰債務企業を楽にすることで、他の150社の経営をおかしくしてしまう政策である。
名目GDPの拡大なくして、産業の再生はないのである。
● セーフティ・ネット
現状でも、完全失業者が360万人いる。政府は、2年近くも連続して完全失業者を減らすどころか、増加させてきているのである。
そのような状況で新たに失業者を増加させれば、失業給付か生活扶助でしか救済することはできないことを意味する。
そのような状況が及ぼす社会不安や価値観混迷はともかく、社会保険負担の増加や財政支出の増大が避けられなくなる。
社会保険負担の増加は、可処分所得の減少だから「デフレ不況」をさらに悪化させる。赤字財政支出の増大は、財政危機を深化させ、大型増税を近くに引き寄せる。大型増税も、可処分所得の減少であり、「デフレ不況」をさらに悪化させるものである。
デフレを解消する方策を抜きにしてどのような政策を採ろうとも、「デフレ不況」をさらに悪化させることになるのである。