★阿修羅♪ 現在地 HOME > 掲示板
 ★阿修羅♪
次へ 前へ
レス2:数学モデルについて 投稿者 あっしら 日時 2002 年 9 月 21 日 20:27:00:

(回答先: Re: デフレ、不況、構造改革 〜頭の整理 投稿者 たにん 日時 2002 年 9 月 21 日 00:22:35)

■ モデルについて

遊びだと明示されていますので、こちらも軽く受け止めます。

数学モデルのなかで取り扱いを慎重にしなければならないのは、

● 国内企業の売上&利益にとって、「財の購入量全体Aの増減」と「総給与Bの増減」が単純に減算できる関係ではなく、「総給与Bの増減」が「財の購入量全体Aの増減」を大きく規定する関係にあること。

 現状であれば財政支出規模と年金支給額規模は変動しない定数扱いでもいいでしょうから無視して、全階層平均でも構いませんから、消費性向とその変動を加味する必要があります。その変動にデフレ予測と失業率変動を持ち込んだ方がいいと思われます。

雑ぱくに言えば、「財の購入量全体Aの増減」は、「消費性向を加味した総給与Bの増減」とし、「総給与Bの増減」はそのまま絶対値で使うという数式です。

● 「国内産業のシェアCの変化率c」は日本企業の海外生産分を考慮する必要

日本企業の海外生産を考慮する必要があります。
日本企業の海外生産であれば、「計画経済」のようなものですから、円高や生産性比較(どうあがいても日本企業の海外生産のほうが生産性が高い)とは関係ないかたちで国内に入ってきます。
マクロであればそれも同じように扱っても良いでしょうが、国内企業の売上&利益の考察であれば、海外生産分の輸入販売も国内企業の大きな利益源ですから、別に考える必要があります。


● 固定資本はインフレ(デフレ)率の影響を受けにくい

生産設備は、過去に購入した価額を年々償却していくと考えたほうがよいと思います。

給与はインフレ率で変動すると考えてもいいでしょうが、固定費はインフレ率で変動しないと考えたほうが短期モデルでは有効性が高いと考えます。

固定資本に関しては、借入比率や実質金利(インフレ率が考慮されているので名目金利を持ち込めばいい)を考慮する必要もあります。


● 固定費以外に販売管理費といった変動費を考慮する必要

広告宣伝費や販促費など販売管理費の増減も考慮する必要があります。
これは、その支払いを通じて、「消費性向を加味した総給与Bの増減」に影響を与えます。

● 給与・固定費・変動費のウエイト付けが必要

給与や変動費はインフレ率と連動して動くということで、ご提示のモデルであればウエイトはことさら不要だと思いますが、固定費はインフレ率と連動しにくいもので、デフレの影響を大きく受けますから、そのウエイト付けが必要になります。


■ 数学モデルからの考察

>X'-X=A*Y*(1-C)(a+y+a*y)-(B+D)*y
>さらに、デフレで価格が下がるが、財の消費量自体は変化しないならa=0
>よってXの見かけの変化率xは
>x=(X'-X)/X=yつまり、インフレ率yと利益の変化率は完全に一致し、インフレ補正し
>た利益率の変動は、無いということです。

前提条件を認め、全部の費用がインフレ率に連動して変動するのならば、そう言えます。


>何が言いたいかと言えば、本来、デフレ自体は企業の収益構造に影響を与えないこと
>を示したかったわけで、財の購入量全体の変動aまたは外部からの財のシェアの増大c
>が0であった、そして給与や固定費がyで変化したという仮定に問題があったという
>ことでしょう。

給与の下方硬直性はともかく、固定資本の性格に照らせば、「デフレ自体は企業の収益構造に影響を与えない」とは言えません。

>実際に90年代に生じたのは、cの増大、つまり価格競争力のある海外製品のシェア
>急拡大であって多くの財の売上量自体は横這いです。そして給与も固定費もデフレに
>応じて下がらなかった。
>これがデフレに連動して生じた<不況>の第0近似での分析でしょう。

固定費がデフレに応じて下がらないのは、10年といった期間で償却するものですからそうなります。
給与はAの決定要因でもありますから、給与が下がらなかったことがデフレ不況の要因ではありません。消費性向が下降しているのなら、それがデフレ不況の要因だとは言えます。
cについては、日本企業海外生産分と外国企業を峻別する必要があります。

>ここから結論できる国内産業保護の対処法は、
>A) 保護貿易(関税策)
>1、関税によって、海外製品のシェア拡大c>0を防ぎ、かつ税収のアップを図る(自
>由貿易の放棄)
>2、規制を無くし、在庫率を圧縮し、固定費や賃金の変動を、インフレ(デフレ)率
>に近付ける。
>3、低所得層減税(関税の利益を、年金や低所得層に還元し、需要を支えるa>=0)と
>  低生産性産業の企業への補助金
>などです。

>しかし、これでは海外からの報復関税を招き、しかも低生産性産業維持のための政策
>コストは非常に高い。
>現時点では自由貿易で利益を受けている、我が国には一番損であり、そして世界全体
>の利益も減少する。

現状の日本経済は、関税引き上げなどの保護貿易を行う必要はありません。
外国企業が日本市場を席巻しているわけではなく、日本企業が海外生産を増大させている影響のほうが圧倒的に大きいのです。
日本企業が海外生産を抑制すれば済むことです。


>B)自由貿易(構造改革策)
>上の2、3は同じですが、最も経済合理的な方法は、海外との価格競争力の低い(つ
>まりcが大きい)企業を淘汰し、その資源を、競争力が高い(または競合が起こりに
>くく、成長余地のある)企業に振り向けることです。
>(移民によって、その産業において競争力の高い国家に、競争力の低い産業の被雇用
>者を移動できれば、構造的失業によるミスマッチも防げてベストか)
>これによって、日本は勿論、世界全体の利益が短期間で最大化します。
>しかし現実には移民への障壁は高く、非採算企業に勤める国民は、自分の仕事を国内
>で続けたいし、黒字企業からの所得移転による社会福祉による現在の利益(公共事
>業)を失いたく無いというエゴによって遅延される。 

「デフレ不況」要因の認識が異なっているので仕方ありませんが、これまでも主張しているように、「デフレ不況」のままでは、おっしゃられるような資源配分も行われません。
資本化するための通貨が足りないわけでも、その資本の活動のために従事する人が足りないわけでも、その資本活動に必要な財の輸入や国内供給も不足しているわけではありません。

たにんさんが言われる「海外との価格競争力の低い(つまりcが大きい)企業」も、給与の支払いなどで需要を生み出しています。

言われていることは、通貨不足・労働力不足・外貨不足といったマクロ経済状況のときに当てはまるものです。


>C)黒字企業の負担強化(あっしら策)
>関税策に概念として近いですが、海外の製品に賦課するのではなく、黒字企業と、そ
>の従業員などインフレ率に比べて所得が増大している者に対して課税し、それを減税
>や失業手当て等で、赤字企業従業員等へと補填する。
>(デフレの場合、課税最低限や累進税率が変わらないと、実質的に減税になるので、
>課税最低限を下げ、累進構造も強化する必要がある。見かけ上増税であるが、実は、
>失業や赤字企業からの収入減少でトータルで同じ。
>インフレ時の、所得税減税と全く同じ効果)
>この方法は、Bで述べたような、構造改革(淘汰、不良債券処理)を加速する効果は
>無いことですか。

黒字企業には、給与の増加を求めているのであって、課税強化を求めているわけではありません。
また、増税を「失業手当て等で、赤字企業従業員等へと補填する」というアイデアも提示したこともありません。

緩やかなデフレは、賃金の切り下げが行われないとしても、“減税効果”は小さいものです。
インフレは“増税効果”を発揮しますから、政府にとってはありがたいものです。

「構造改革(淘汰、不良債券処理)」は、「デフレ不況」を脱してから、市場原理で行えばいいという考えを持っています。

>>供給力>供給のギャップ縮小や供給力を他の分野に振り替えるためには、供給>需
>>要のギャップをまず縮小しなければなりません。
>>「デフレ不況」のなかでかつ財政出動ができない経済状況で、供給(供給力)を破
>>壊しても、需要の減少につながるため供給>需要のギャップを埋められないどころ
>>か、それまでそこそこ経営が維持できていた企業まで苦境に追い込むことになります。

>今は財の供給量Aが過剰(在庫も過剰)であるので、生産性が低い(固定費Dと人件
>費Bの割合が大きい)企業が消えた分の供給を生産性の高い少数の企業の増産で補え
>ば、在庫減少効果もあるし、価格も高く設定でき、残った企業の利益率は増加しませ
>んか?
>そうでないことを示す定量的な計算結果があれば教えていただけると幸いです。

まず、同一業種の競争的淘汰は基本的に終わったと考えるべきです。
問題は、特定業種全般の生産性の低下にあります。(銀行・商業・ゼネコン・不動産など)
特定業種全般の生産性が低いのであれば、その業種のある企業が破綻したとしても、他の企業が少々楽になるだけで、追加的な供給活動が可能になるわけではありません。

そして、生産性の低い企業の供給が消えることで、需要も消えます。
その60%ほどが雇用保険給付で短期間補われるとしても、失業者が増加する社会状況では、全体の消費性向はますます下がっていきます。

さらに、供給の削減は若年者の雇用状況をさらに深刻なものにし、その分の需要は親が補うことになり、そのような状況がいつまで続くかわからないという見通しは、親の需要はぐっと抑え込まれることになります。


「定量的な計算結果」は、国民経済モデルで相当複雑な処理をしないと算出できないと思われます。


 次へ  前へ



フォローアップ:



 

 

 

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。