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(回答先: デフレ、不況、構造改革 >あっしらさん 投稿者 たにん 日時 2002 年 9 月 21 日 00:20:03)
#ちょっと頭の整理のために、以下を考えてみました。(供給量の変動と価格変動を独立化したtoyモデルだから所詮遊びですが)
まず、今回のデフレ過程で、検討すべき不況(企業収益悪化)の原因として以下があります
1財の購入量全体Aの増減の効果(デフレ予測による買い控や失業率変動による需要変動)a
2総給与Bの増減:それがb変動したとする
3円高や海外企業の生産性向上による外国製品によるシェアの侵食による国内産業のシェアCの変化率c
4その他、固定費Dの増減 d
5価格Yの変動:インフレ率y デフレなのでy<0
国内企業の利益X’は
元々 X=A*(1-C)*Y-B-Dなので
X'=A*Y*(1-C*(1+c))(1+a)*(1+y)-B*(1+b)-D*(1+d)
よってXの変化
X'-X=A*Y*{(1-C*(1+c))(1+a)*(1+y)-1-C*(1+c)}-B*b-D*d
=A*Y*{(1-C-C*c))(a+y+a*y)-C*c}-B*b-D*d
簡単のため、給与、固定費はインフレ率yと等しいとすると
X'-X=A*Y*{(1-C-C*c)(a+y+a*y)-C*c}-(B+D)*y
また仮にあっしらさんがこれまで主張しているように海外製品のシェア変化が無視しうる(c=0)とする
X'-X=A*Y*(1-C)(a+y+a*y)-(B+D)*y
さらに、デフレで価格が下がるが、財の消費量自体は変化しないならa=0
よってXの見かけの変化率xは
x=(X'-X)/X=y<0
つまり、インフレ率yと利益の変化率は完全に一致し、インフレ補正した利益率の変動は、無いということです。
何が言いたいかと言えば、本来、デフレ自体は企業の収益構造に影響を与えない
ことを示したかったわけで、財の購入量全体の変動aまたは外部からの財のシェアの増大cが
0であった、そして給与や固定費がyで変化したという仮定に問題があったということでしょう。
実際に90年代に生じたのは、cの増大、つまり価格競争力のある海外製品のシェア急拡大であって
多くの財の売上量自体は横這いです。そして給与も固定費もデフレに応じて下がらなかった。
これがデフレに連動して生じた<不況>の第0近似での分析でしょう。
逆に言えば、インフレ連動して、給与や固定費用が、あまり変わらずy>0で、しかも
インフレ期待でa>0、海外製品の一時的な価格上昇で、c<0が仮に実現できれば
インフレの影響を除いた企業の利益率は、その間増加しますね(リフレ策の意味)。
ここから結論できる国内産業保護の対処法は、
A) 保護貿易(関税策)
1、関税によって、海外製品のシェア拡大c>0を防ぎ、かつ税収のアップを図る(自由貿易の放棄)
2、規制を無くし、在庫率を圧縮し、固定費や賃金の変動を、インフレ(デフレ)率に近付ける。
3、低所得層減税(関税の利益を、年金や低所得層に還元し、需要を支えるa>=0)と
低生産性産業の企業への補助金
などです。
しかし、これでは海外からの報復関税を招き、しかも低生産性産業維持のための政策コストは非常に高い。
現時点では自由貿易で利益を受けている、我が国には一番損であり、そして世界全体の利益も減少する。
B)自由貿易(構造改革策)
上の2、3は同じですが、最も経済合理的な方法は、海外との価格競争力の低い(つまりcが大きい)企業を淘汰し、
その資源を、競争力が高い(または競合が起こりにくく、成長余地のある)企業に振り向けることです。
(移民によって、その産業において競争力の高い国家に、競争力の低い産業の
被雇用者を移動できれば、構造的失業によるミスマッチも防げてベストか)
これによって、日本は勿論、世界全体の利益が短期間で最大化します。
しかし現実には移民への障壁は高く、非採算企業に勤める国民は、自分の仕事を国内で続けたいし、
黒字企業からの所得移転による社会福祉による現在の利益(公共事業)を失いたく無い
というエゴによって遅延される。
C)黒字企業の負担強化(あっしら策)
関税策に概念として近いですが、海外の製品に賦課するのではなく、黒字企業と、その従業員など
インフレ率に比べて所得が増大している者に対して課税し、それを減税や失業手当て等で、赤字企業従業員等へと補填する。
(デフレの場合、課税最低限や累進税率が変わらないと、実質的に減税になるので、課税最低限を下げ、
累進構造も強化する必要がある。見かけ上増税であるが、実は、失業や赤字企業からの収入減少でトータルで同じ。
インフレ時の、所得税減税と全く同じ効果)
この方法は、Bで述べたような、構造改革(淘汰、不良債券処理)を加速する効果は無いことですか。
#ただ外部環境や政策などによって、a,c,yなど、各種マクロなパラメタが依存して変化するし、
今一つ定量的な関係がわかりませんね。実証的な良い教科書があったら、少し時間を見つけて勉強してみますか。
>供給力>供給のギャップ縮小や供給力を他の分野に振り替えるためには、供給>需要のギャップをまず縮小しなければなりません。
「デフレ不況」のなかでかつ財政出動ができない経済状況で、供給(供給力)を破壊しても、需要の減少につながるため供給>需要のギャップを埋められないどころか、それまでそこそこ経営が維持できていた企業まで苦境に追い込むことになります。
今は財の供給量Aが過剰(在庫も過剰)であるので、生産性が低い(固定費Dと人件費Bの割合が大きい)企業が消えた分の供給を
生産性の高い少数の企業の増産で補えば、在庫減少効果もあるし、価格も高く設定でき、残った企業の利益率は増加しませんか?
そうでないことを示す定量的な計算結果があれば教えていただけると幸いです。