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日本銀行が最後の賭けに出た。
18日の政策委員会通常会合で、「通貨の番人」にとって、禁じ手とされた株式の直接購入に踏み込んだ。日本経済の慢性病となった金融システム不安。今度こそ、その解決につなげられるかどうか――。
◇ ◇
「ここからだ。ムーブメント(運動)が起きるはずだ」。株式直接購入の発表で、ざわつく日銀本店。幹部の一人はつぶやいた。
株価が下落するたびに金融不安が叫ばれる。その根っこは、銀行が抱える持ち合い株にある。だから、日銀がそのリスクを買い取ってしまう。そうすれば、銀行は不良債権処理や収益力向上にもっと専念できるだろう。
やや乱暴ではあるが、幹部たちにはそうした思いがある。
伏線はあった。今年8月、日銀内にひそかに金融システムを立て直すための検討チームが設けられた。担当の三谷隆博理事ら4〜5人がメンバーとなり、勉強会を重ねて処方箋(せん)作りに取り組んだ。
77歳の速水優総裁からは「そんな悠長にやってると、おれの寿命がなくなるぞ」とはっぱがかかった。
昨年秋から公的資金投入を伴う抜本策を求め続けた速水氏だが、政府からは受け入れられず、焦りだけが募る。来年3月までの任期は残り少ない。
勉強会では「企業査定のルールを改め、3年後に導入予定の減損会計を前倒し実施する」「公的資金の再注入のため、新法を作る」などの策が練られた。その一つに「銀行の持ち合い解消に対する日銀の積極的関与」があった。
切迫感がにわかに高まったのは、9月の株価急落からだ。政府のデフレ対応策は、不良債権処理が最重要課題となった。速水総裁は周囲に語った。「今度こそ総理はやるつもりじゃないか」
ようやく政府が荒療治に踏み出すのでは、との期待だ。
政府の背中を押すため、日銀がカードを切る必要がある−−。様々な構想のなかから「持ち合い解消への関与」という日銀の自己責任で可能なカードが選ばれた。
しかし、株式の買い上げは、日銀の財務の健全性を損ない、通貨価値の低下につながりかねないとして再三否定してきた話だ。「中央銀行のすることか」。審議委員には異論もあったが、説き伏せた。
「リスクは分かっている。民間銀行と役所を道連れにして、清水の舞台から飛び降りた。世の中を動かすには、今しかなかった」と日銀幹部は語る。二の丸の堀を埋め、公的資金を使った不良債権処理という本丸に迫る、という戦術だ。
日銀はこれまで、金融緩和を重ねるたびに、不良債権処理の必要性を強調してきた。しかし、政府が音頭を取る処理はあくまで銀行の体力の範囲内で進められてきた。
日銀にとっては「政府に緩和策を先食いされただけに終わった」(幹部)との恨みがある。今回はどうか。
18日夕、東京都内にある外資系金融機関は、海外からの問い合わせに追われた。「株を買うって本当か。うそだろう」。驚嘆を集めるのは、誰が見ても異端の策だからだ。
もしも、日銀の独り相撲に終われば、中央銀行に、劣化した資産という傷跡だけが残る。