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(回答先: メディア的世間知を超えて米国政権の狙いを推察しましょう 投稿者 あっしら 日時 2002 年 9 月 16 日 14:39:44)
詳細なレスを有難うございました。
まず、貴殿の論旨を下記の通りまとめます(事実誤認があればご指摘下さい)
1.アラブ諸国(なかんずくサウジアラビア)は、米国のイラク攻撃を容認する。
2.今後の構図はイスラム防衛派VS.米国である(それがひいてはアラブVS.米国に繋がってゆく)
3.サウド王家は米国のアラブ世界介入そのものよりも自国内反米勢力の台頭を恐れている
4.イラクの大量破壊兵器開発疑惑は表向きの理由に過ぎない(フセインの首にも実質的価値はない)
5.イラク国内をまとめられるのはバース党のみである(よって親米政権は最初から不安定の運命)
6.グアンタモナの暴虐や米国内ムスリムの非法拘束は敬虔なムスリムの怒りに火を付けた
7.上記4,5,6から見て取れるように、米英の狙いは親米アラブ諸国政権と反政府勢力の代理戦争の惹起である
8.今のところ強力な反政府組織はアラブ世界で抑え込まれているが、フセイン打倒により顕在化する
9.米英の狙いには、イスラム過激派同士の内戦の惹起と弱体化も含まれる
10.米英の最終目的は中東全域が西洋と同じような安定した近代法国家に生まれ変わる事である
11.それは敬虔なイスラム教徒には許しがたいことである。
12.仮に米英にそこまでの意図がないとしても、結果的に泥沼化(アラブ諸国内の内乱状態)は進む。
米国の中東政策の根幹には石油問題とイスラエル・パレスチナ問題へのコミットがあり、その2点から見た言わば自国の国益を満たす形での安定を如何に確保するかが常に眼目になっていると言えます。その意味では、親米政権の樹立は好ましいし、アラブ諸国が近代法国家に生まれ変われば、こんな嬉しいことはないでしょう(しかし同時に、アラブの西洋化が短期間に進むのは極めて困難だという現実も過去のいきさつから米国には良く分かっています)。
さて、今の我々の議論は、これまでのこうした中東政策の流れと、911に端を発するテロとの戦いがどう結びつくのか(或いは結び付かないのか)、又はさらに問題を絞って米国は(ベトナムのように)この戦争にどんどん深入りして行って国家財政を揺るがすような話になるのかならないのか、ということです。
まず、上記に掲げられたような泥沼化を本当に米国政権が望んでいるのかは疑問です。そこまで中東が不安定化すると、石油問題は相当深刻な様相を呈してきます。これは米国の国益に合致するものではありません。次に騒乱が長期化し、911やテロとの繋がりが薄れるにつれてメディアや国民の間から米国の軍事的なコミットに対して当然疑問が呈されるようになります。国民の支持なくして戦争遂行が不可能なのは世の習いです。さらに、こうした混乱状態を人工的に作り上げる事が、上記10の最終目標に近づくための最善策だとは、素人考えでも納得が行きません。むしろ目標は遠のくとすら言えます。
では米国の真意は何か。国連査察が拒否されていることは間違いなくその一要因です。イラクが主張するようにABC兵器の開発と本当に無縁なら査察を受け入れれば良いのです(太平洋戦争突入前の日本が感じたように米国の強引さには腹が立つでしょうが、国土を焦土と化されるよりはマシでしょう。そうしないのはそれだけの理由があると見るべきです)。911以降、米国が感じている心理上のオブセッションはやはり無視し得ません。また、パレスチナ問題も大きな鍵を握っていると思います。米国はできるだけ短期間にイラク掃討を目に見える成果と共に終え、親米政権の樹立を目指すでしょう。おっしゃる通りバース党をどう押さえ込み、イラク国内を安定させるかは難しい課題です。しかし、パレスチナが強力なシンパを失うことは明らかで、イスラエル側が不利にならない形でのパレスチナ和平に近づきます。
それでは、肝心の「テロへの完全勝利」はもたらされるのか。これについては、米政権もはっきりとした戦略はなく、その都度有力な情報が得られない限りは受身にならざるを得ないというのが実情だと思います。イスラム過激派、イスラム原理主義者、テロリスト、敬虔なイスラム教徒、どこからが敵なのか線引きは極めて困難です。さりとて、真面目にイスラム教を信じている者は皆敵だ、という暴論が通るはずもなく、そんなことは米政権も考えてはいません。戦線を無制限に拡大することができないのが最初から明らかである以上、どこかで手を打つのが当然です。それが当面は、フセイン政権の打倒ということです。テロとの戦いそのものは何年にも何十年にもわたる覚悟でしょう(常に交戦中ということでなく)。
貴殿の危惧される泥沼化は起こり得るのか。各国での反政府闘争の激化は見られるかも知れません。どの程度深刻な問題になるか、事前には分かりません。イランのホメイニ革命のようなことになったら、それは米英の思う壺なのではなく、やはり失敗と認識されるべきでしょう。あの時イランに深入りしなかったように、当該国に米国が介入してゆくようなことはないでしょう。
以上をまとめた見解として、上記1―12に対する私の意見は次の通りです。
1.そうですね。
2.イスラム防衛派からの米国への攻撃形態はテロしかなく、911が再発すれば、アルカイーダ掃討と同じような手続きが踏まれるでしょう。アラブVS.米国には繋がらない。
3.そういう面はあるでしょう。
4.米国に敵意を持つ政権が核開発の完成真近なら、今の米国の心理状態からして決して看過できないのは当然です。
5.そうなのかも知れません。親米政権を安定させるのは骨の折れる仕事でしょう。
6.これはそう言えると思いますが、米国がそれを意図してやったかは疑問が残ります。
7.米英は中東の大混乱、不安定化を望んでいません。最後に収拾する力もないしやる気もないでしょう。
8.イスラム過激派の勢力図に暗いので、どの程度の規模になるか見当がつきません。
9.判断しかねます。
10.そうでしょうが、半分以上諦めていると思います。
11.その通りでしょう。
12.現政権が力強く押さえ込んでしまう可能性もあると思います。