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(回答先: 構造改革、黒字企業への課税強化、労働分配率の向上など>あっしらさん 投稿者 たにん 日時 2002 年 9 月 08 日 17:27:29)
たにんさん、こんにちわ。
>我々の政策的な一致点は累進課税的な手法で、富裕層から低所得層へマネーを移し需
>要を支える必要があるという点。
政府はこれと逆行する所得税制変更を企図していますから、累進課税強化は重要な一致点だと考えています。
法人税減税を景気回復として打ち出した政府へのイヤミとして打ち出した「詐欺的法人税減税」(人件費増加減税)はともかく、所得税制の変更で3兆円ほどの需要増加をはかるべきだと考えています。
たにんさんの指摘についてですが....
>1、バブル発生と崩壊による資産の富裕層への集中と、数百兆にも及ぶ膨大な景気刺
>激策によって、将来的な増税への恐怖と非採算企業が温存されていることが、デフレ
>(海外の製品の競争力の飛躍的向上、国内の製品と企業に対する購買及び投資魅力の
>低下、将来の増税に対する保険としての預金への執着)を生み出している
「非採算企業」が多数発生したのは「デフレ不況」が根源的な原因であり、その“温存”がデフレ圧力になっていることは事実ですが、それを破綻させていっても、供給の減少=需要の減少ですから「デフレ不況」は解消できません。
(失業保険などで補われるのですぐに供給の減少額と同額の需要減少とはなりませんが、心理的な要素を加えれば、それに近い需要減少になり、中期的にはより縮小した需要規模となります)
1996年と変わらない名目GDP規模で、かつ、名目・実質とも縮小傾向にある経済状況で、「非採算企業」と断じることが誤りであり、最低限、名目・実質GDPがともに、当年度>=前年度となる経済状況でどこが「非採算企業」かを判断する必要があります。
「海外の製品の競争力の飛躍的向上」は幻想です。日本が輸入している製品は、ほぼ日本企業の海外生産であり、海外企業が競争力を高めているのは日本以外の市場であり、しかも、日本企業の下支えに依存しています。
預金は、多数派の国民にとって、「将来の増税に対する保険としての預金への執着」というより、老後及び失業という招来不安に対する防衛措置だと考えています。
>2、黒字企業のみへの課税や労働分配率の上昇(これは実質的には既存産業保護の公
>共投資というこれまでの政策に等しい)は、国内産業のさらなる衰退と空洞化を招
>き、さらなるデフレの悪化(海外の製品による市場の占有)を招き、経常収支の反転
>後には、膨大な国債残高のため長期的なインフレと国富の喪失(アルゼンチン化)が
>発生する。
黒字企業の増税は短期的な政策としては掲げていませんが、論理的には、その方法しか継続的な“余剰通貨”の吸い上げはできないと考えています。
労働分配率の上昇が、どういう論理で公共投資となるのかはわかりませんが、高度成長期及び80年代までは、優良企業が給与水準を上げ、その波及効果で全企業の給与水準が上がり、優良企業が生産する自動車や家電製品の需要が増加していったというのが、“経済史”です。
労働分配率の上昇が国内産業のさらなる衰退と空洞化を招くという主張は、「人件費の上昇=コストの上昇=国際競争力の低下」という論理に基づくものと推察しますが、人件費によるコストの上昇は物価の上昇を実現しますから外国為替レートを円安傾向に動かすことは別としても、3%ほどの人件費増加を生産性の上昇で吸収できない技術力レベルではないと思っていますし、それができないというのであれば、たにんさん自身が主張されている「恐れる必要がない高失業率社会」も達成できないことになります。
このまま「デフレ不況」が続くほうが、「国内産業のさらなる衰退と空洞化を招き、さらなるデフレの悪化(海外の製品による市場の占有)を招き、経常収支の反転後には、膨大な国債残高のため長期的なインフレ」になります。
>3、外形標準課税、抜本的な公的部門の縮小によって、非採算企業の淘汰整理を加速
>し、残った企業の利益率を改善し、資源を新規産業創生に向ける。これは同時にプラ
>イマリーバランスを改善し、少子高齢化に向けての際限の無い将来的な負担増への不
>安を払拭する。
公的部門の高級幹部の給与や退職金にメスを入れることは必要ですが、赤字企業への外形標準課税や非採算企業の淘汰整理加速は、供給=需要の減少を招き、せいぜいが、より低レベルでの「デフレ不況」を継続するだけです。(「デフレ不況」を加速するでしょう)
「資源を新規産業創生」については、通貨という資源も労働力という資源も、余っているのです。ですから、より高い利益率が見込める産業があるのなら、今でも、投資=新規産業創生が行われているはずです。
プライマリーバランスを改善しようとしても、「デフレ不況」においては、歳入が年々減少していきますから、年々歳出を縮小するハメに陥ることになり、既に700兆円にも達している政府債務の負担はますます過重なものとなります。
ですから、将来への不安はいっそう高まります。
>新規産業への優遇と科学技術投資で、産業構造の改革を加速する。
>これは輸出競争力を高めるためではなく、これ以上の国内産業の衰退と、外国製品に
>よる市場占有を防ぐためである。
「新規産業への優遇」は、創業費や設備投資の償却を短縮できるようにして行えばいいと思っています。
科学技術投資については、前回も書きましたが、それが産業的な実りをもたらすようにするためにも、「デフレ不況」を解消しなければなりません。投資収益が見込めない状況では、投資意欲自体が削がれるものです。
>4 そうした施策を行ったとしても、かってのような強い経済は最早困難であるとい
>うことを受け入れねばならない。
これはその通りだと思っています。
>あっしらさんは
>1、デフレの原因は、橋本増税などの構造改革的な政策にある。
本格的な「デフレ・スパイラル」に突き落とした要因として、橋本増税などの構造改革的な政策を指弾していますが、デフレの原因は、それとは主張していません。
(デフレの原因については、根源的には“余剰通貨”の拡大であり、それが及ぼす経済変動については延々と書いていますので、そちらのほうをご参照ください)
2、黒字企業に課税OR労働分配率を上昇させれば、そのほとんどが国内製品購入や企業投資へ回され、デフレが解消し、景気が回復する。
デフレは解消できると考えていますが、かってのように景気が回復するとは考えていません。(これも、「利潤なき経済社会」を予測しているのですから、ご理解いただけると思いますが...)
3、構造改革的政策は、今の世界環境では有害無益
不良債権早期処理や民営化・規制緩和を軸としたレーガノミックス的「構造改革」については、有害無益だと考えています。
>良くわからないのは、
>黒字企業のみの課税OR労働分配率を上昇させると、国内製品や企業にその大部分が
>回って海外に流れて行かないし、それだけで、デフレが解消すると信じておられる理
>由です。
輸入財にまったく流れないとは思っていませんが、それとて、利益は日本企業の懐に入るものです。
生活必需財の購入に困っている勤労者は少ないでしょうから、増加した可処分所得は、これまで買い控えしていた利便財や住宅関連を中心としたものになるはずです。
(増加した可処分所得の70%から80%が消費に回るためにも、「低中所得者減税」の恒久化と年金政策の再確立が求められます)
>またその経済効果はどう考えても10兆レベルではないかとも思えますし、これまで
>の膨大な景気刺激策が生み出した現状を見ると、私にはその反対が生じるとしか思え
>ません。
10兆円レベルは厖大な金額です。
10兆円の家計消費支出は、GDPに占める家計消費支出が270兆円ですから、3.7%に相当します。
この間のデフレ率は1〜1.5%ですから、その波及効果は大です。
90年代の膨大な景気刺激策は、建設業(鉄鋼・セメント業・輸送業なども)と地価の下支えを意図したものであり、GDPの拡大にはそれほど貢献しなかったものです。
(90年代の膨大な景気刺激策は、債務企業にカネを回し、それが債務履行を通じて銀行に回るという構図ですから、財政支出を通じた銀行救済策とも言えるものです)