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来年四月一日のペイオフ解禁が「風前の灯(ともしび)」になっている。金融審議会は五日の総会で「ゼロ金利普通預金」導入による決済用預金の保護策の報告書を正式にまとめたが、一方で、導入が間に合いそうにない銀行に配慮、ペイオフ実施を数カ月間延期する検討を開始した。政府自ら「延期」を口に出したことで、株の急落で高まる「全面延期論」が一気に加速する気配だ。(経済部・池尾伸一)
■迷走 政策その場しのぎ
この日の金融審総会は金融行政への反論や苦言が飛び交い、異例な「突き上げ大会」の様相を呈した。
「今日はここに来るのが気が重かった。本当は了承したくない」。三菱総研の浜矩子主席研究員はあからさまにペイオフ延期への「反対」をぶち上げた。原早苗・埼玉大非常勤講師は「なぜ、いま決済用預金の話が出てくるのか、消費者には全く分からない」と、難しさに憤慨。金融庁の前身である金融再生委委員を務めた片田哲也・コマツ相談役も「なぜ、もっと早く決めておかなかったのか」と同庁の手際の悪さを非難した。
「大荒れ」の原因は最近の金融行政が一貫性を欠いたまま「その場しのぎに終始している」(審議会メンバー)ためだ。
金融機関に競争原理を導入するため来年四月一日からペイオフ解禁すると繰り返してきた同庁だが、中小金融機関や与党からの延期論が高まると「新型預金」を発表し「新たな逃げ場」を用意。銀行から「新型」のシステム開発は困難との意見が強まると「普通預金による代用」を表明。さらに、柳沢伯夫金融担当相が「どうしても譲れない」としてきた「四月一日」のデッドラインまで、あっさり譲ってしまったことで「迷走」は決定的になった。
いつまで延期するかについては、金融庁幹部は「せいぜい一、二カ月」と言う。銀行はシステム準備のためには、ATMを止めてテストすることが必要だが、このテストを「五月の連休にやってもらう」ことを念頭に置いているためだ。
■自民 『無期延期』一色に
だが、自民党の意見は全く違う。一時、日経平均が八千円台もつけた株安で「こんな時にペイオフを解禁するなんて正気ではない」(有力議員)と、党内は「無期延期」一色に染まりつつある。
政府の金融行政が迷走を余儀なくされているのは、金融不安の根本にある不良債権問題による銀行財務の悪化という現実から、目をそらしているのが根本原因だ。金融庁は「金融システムは健全」と繰り返すが、日経平均が九〇〇〇円なら、大手銀行の自己資本比率は8−9%と、国際基準の8%割れ寸前。「八〇〇〇円台が続くか、大企業が一つでもつぶれれば、もうアウト」(日銀幹部)という状態だ。
■焦点 公的資金の投入は
深刻な株安を受け、ペイオフ延期とともに政府の経済財政諮問会議の民間議員や経済界、自民党からは銀行への公的資金投入論が高まっている。
しかし、方法については全く異なる。経済財政諮問会議民間議員らは公的資金投入をテコに韓国のように銀行を合理化・再編させる金融の「大手術」を検討しているが、自民党は整理回収機構(RCC)への公的資金導入による銀行からの不良債権買い取りなど「銀行救済」色の強い内容。一方、金融庁はこの水準でも「公的資金不要」を主張し続けている。
最近の株安にはペイオフ論議をめぐる政府内の議論の迷走ぶりも「嫌気されている」との見方が株式市場では支配的。
金融不安を「危機」にまで悪化させないためには、政府はペイオフ問題と金融不安問題で、早急に根本的な方針を打ち出す必要に迫られている。