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(回答先: 「匿名希望」氏へのレス:微温主義の反撃 投稿者 あっしら 日時 2002 年 8 月 30 日 22:19:16)
貴殿の言われる「利潤なき経済社会」と言うのは何となくイメージすることはできますが、誤解の余地なく明確に把握し議論するためには、例えば次のような点をクリアに伝えるべきかも知れません。
1.利潤の定義(通常は総収入−総支出。貴殿は違う意味で使っておられる。経常黒字との関連も指摘しておられるが、経常黒字は「通常の意味での」利潤とは直接結び付かない。例えば利潤を生まない輸出もありうる。)
2.利潤が得られなくなる理由(今、ないし通常なら得られている、という含意。今と何が変わるのか。)
">マクロとして利潤が得られないという経済条件のなかで、経済主体の経済的活動=財の生産と交換を活発に行いながら国民生活の充実を図っていけるようにするかが、私のグランド・デザインのテーマです。
そして、そのような経済条件でも、官僚統制に依存するのではなく、市場=交換と競争を通じてそれらを実現する方法を構築すべきだと考えています。
"
お説は今後少しづつ開陳されてゆくのでしょうから、それを楽しみにするとして、ひとつだけ決定的に私と異なると感じたのは上記の点です。貴殿は新たな経済社会になった後も、官僚統制(visible hand)は必要ないとされる。即ち、invisible handだけで経済運営は可能と考えておられる。これはとても楽観的な見方だと感じました。
貴殿の問題提起される、「余剰通貨」が実体経済に還流して行かずそれが故にデフレ問題を起しているという指摘は大変重要です。この問題を全面的に官僚統制で乗り越えようとすると計画経済になります。そしてそれがうまく行かない事は歴史的に証明されています。私の考えでは、見える手と見えざる手の双方を相互補完的に機能させることが重要だと見ています。従って、政府の仕事としては、見えざる手が十分に機能するための環境整備(供給側の再構築の後押しや諸規制や法制面の見直し)、見える手の刷新(効率性を重視した公共部門の改革と新たな公共サービス・プログラムの提供)を併せて打ち出すことが重要と考えます。
別のところで貴殿と続けている減税是非論争もここにまとめてレスします。2兆円の法人税減税(個人の可処分所得を増大させる目的に限定)が10兆円の消費増にどう結びつくのか、という根本的な疑問はさておき、概括的批判のみを提示します。90年代半ばの所得税減税の結果明らかになったことは、それが恒久的な措置でない限り(即ち、後から穴埋めの増税を行う事が予定されている時)、全く有効ではないということでした。そして、税率は下げても税収は景気が良くなれば増えるから問題ない、などと根拠のない無責任な財政運営などできないことは明らかです(ゆえに、恒久化措置などおいそれと出せません)。ラッファーの進言に基づいてこれを行い失敗したのが初期のレーガン政権でした。
私の主張するところを平易簡潔な言い方でまとめると、次のようなことです。
戦後の復興期と成長期を経た日本経済は成熟を迎え、転換期にさしかかりました。バブルの生成と崩壊はこの問題をさらに深刻化、先鋭化させました。あらゆる政策にも関わらず日本経済を建て直す事はできず、ケインズは死に、マネタリズムは有効性を失い、減税も持続的な刺激となりえないことが明らかになりました。この上は過ちを繰り返して国家財政をさらに悪化させる方向ではなく、国家一丸となって再び活力のある仕組み作りに邁進すべきです。産業基盤がまだ磐石なうちに改革方向へ向かって漕ぎ出せば、万一デフレ・スパイラルが進行した場合でも徳政令的な手(政府紙幣など)が打てます(産業基盤さえ確保できていれば、ハイパーインフレにはなりません)。その一方で既に成熟化した日本経済で持続的成長を確保するに十分な個人消費の成長は望みがたく、国民経済全体における支出構造を変換させる必要があります。そのためには政府部門支出比率の増大(実際の提供サービスは必ずしも官営である必要はない)と増税が不可欠で、国民が老後死ぬまで不安を感じないシステムを政府が明示しなければなりません。