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(回答先: 小泉内閣に友人として、あえて苦言!パート17 糸山英太郎 投稿者 jimmy 日時 2002 年 8 月 28 日 12:52:27)
「新紙幣」が「新円」につながる可能性を否定はしないが、森永氏と糸山氏が、共通してデフレ解消策として説明している「新円切り替え」「預金封鎖」「財産税」の3点セットが、本当にデフレ解消策なのかを検証してみたい。
(お二人の違いは、基本的には、金融資産課税が3%か5%の違いとまとめることができる)
[森永氏]
「もし、この施策を発表したら何が起こるだろうか。まず現預金の価値が下がるから、モノに換えようという動きがでて、消費が増え、物価も上がってデフレから脱却できる。第2に、不動産価格が上昇するので、銀行の不良債権が大幅に解消する。第3に、個人金融資産のうち、少なくとも1000兆円が課税対象となるから、30兆円程度の財政収入が政府に転がり込む。まさに、一石三鳥の施策となるのだ。・・・」
[糸山氏]
「・ 第一に、現預金の価値が下がるからモノに換えようという動きが出て消費が増え物価も上がってデフレから脱却できる。
・ 第二に、不動産価格が上昇するので銀行の不良債権が大幅に解消する。
・ 第三に、個人金融資産のうち少なくとも1000兆円が課税対象となるから50兆円程度の財政収入が政府に転がり込む。」
● 3点セットの政策実施で物価は上昇に向かうか
残念ながらNoである。
通貨的資産(ストック)の価値減少見通しが、追加課税されない消費や投資に向かわせることは確かだが、それは一時的な動きでしかない。
これまでも書いてきたことだが、余剰通貨になっている通貨を政府がはぎ取って消費や投資を通じて資本化しても、余剰通貨をはぎ取り終わったときにその経済効果は終わる。
3点セットは、それを政策的インセンティブで自主的に行わせようとするものだが、「新円切り替え」までの効果しかなく、切り替え以降は、“特需”の反動で大幅な需要減少に陥る。
一時的に物価が上がるとしても、反動で再び下がり、保有資産価値が減少するのだから、「逆資産効果」でさらに物価は下がることになる。
● 不動産価格は上昇するか
残念ながらNoである。
まとまった金融資産を保有している人が、それを頭金や全額として充当して不動産を購入することは十分考えられることである。
しかし、それは、財産税で課税させる金額との見合いで有利だと判断した自分自身か家族の住居用もしくは事業用の不動産に限られるであろう。
もちろん、愚かな人は、お二人と同じように考えて、投機目的で不動産を購入する人もいるかも知れないが、それは無惨にも裏切られることになる。
フロー(GOP)的拡大の支えがない資産価格の上昇は長続きしない。
とりわけ、財産税のような単発施策で上昇した不動産価格は、すぐに下落に転じることになる。
(その後金融資産が3%か5%か価値劣化することを考えれば、そうなってしまうことは素人でもわかることである)
だから、3点セットの実施で不良債権問題が解消されることもない。
● 税収の増加
これはYesである。
30兆円か50兆円かの税収が財産税で得られる。
しかし、1年分の赤字国債発行か、1年分の税収に匹敵するものでしかない。
その一方で、家計が失ったと考える価額が30兆円か50兆円となる。
金融資産が、家計から政府に移っただけであり、公的債務の減少には貢献するが、「デフレ不況」を解消するわけではない。
政府が、30兆円か50兆円を借金ではないかたちで手に入れることで「デフレ不況」から脱却できるのなら、60年返済で借金した30兆円か50兆円によっても、「デフレ不況」から脱却できるはずである。
もちろん、有効な政策を進める原資として財産税を課税することには条件付きで賛同する。
「デフレ不況」の解消に必要なのは、継続的なものであるフロー(GDP)の拡大であり、ストック(金融資産)の移転ではないのである。
“経済通”を自認している森永氏や糸山氏が、経済論理を知らないのだから、日本の「デフレ不況」はだらだらと続いていくことになるだろう。
他に気づいたことを他に1、2上げると、
★ 課税逃れの資金移動
政策実施以降に一般物価や不動産価格が上昇するという見方をお二人はしているが、「不動産と株式、社債、外資預金、外債は非課税」であれば、財や不動産に通貨が向けられずに、外貨預金や外債に向けられることも十分すぎるほど考えられることである。
★ 国債サイクルの維持
3点セットのようなドラスティックな政策を採りながらも、30兆円や50兆円の税収しか得られないのであれば、財政危機を解消することはできない。
現状が700兆円で、今後も2、30兆円増加していく公的債務の問題を解消できないなかで、今後も課税されることがあるのではないかという預貯金に対する不安だけが残り、預貯金離れが起きる。
国債費2年分ほどの税収増加を実現することで、預貯金に依拠している「国債サイクル」が破綻することにもなりかねない。