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高速インターネット接続サービスのADSL(非対称デジタル加入者線)事業をめぐり、ソフトバンク(SB)の孫正義社長が業界団体や競合他社に噛みついている。同業界は今秋、各社が最大毎秒8メガビットのサービスから12メガビットに速度を向上させて肩を並べる「第2次ADSL戦争」に突入。SBはこの新サービスの通信方式で不当に“鬼っ子”扱いを受けているというのだ。背景には、存亡の危機に直面した「孫帝国」のお家の事情があるとの見方がある。
「技術革新により、日本のブロードバンド環境を改善しようとしているのに、足を引っ張られ、大変憤慨している」
SBグループの『ヤフーBB』が20日に行った記者説明会。孫氏は机をたたき、声を荒らげながら、こう主張した。
SBは12日、各社に先駆け12メガビットサービスを開始したのだが、ライバル社『イー・アクセス』がこの機先を制するように「SBの新サービスが他社の通信に障害を与える可能性がある」と指摘。先制が一転、この新サービスの先行きに暗雲が立ち込める大ピンチに陥っているのだ。
孫氏のいらだちは、SBだけが競合他社と違う通信方式を採用していることに端を発する。
イー社やNTT東西など大多数の大手事業者は、日本の特殊な通信事情に合っているとされる「アネックスC」という通信方式を採用。一方、SBは米国や韓国で普及する「アネックスA」方式を採用し、パーツ類の海外調達で月2000円台という価格破壊を実現。昨年夏以来の国内ADSL普及加速に火をつけた。
電話線という既存インフラを使用したADSLは、NTT交換局からの距離や近隣通信の周波数干渉など環境次第で転送速度に影響が出やすいため、業界団体の情報通信委員会(TTC)が、各社の通信が干渉し合わないように『標準』の通信方式を定めている。
12メガビットサービス開始にあたり、各社はそれぞれの方式を技術改良。イー社はSBが採用した「アネックスA.ex」という新技術を「他社ユーザーのメール送信などに障害を与える可能性がある」(イー・アクセス広報)と総務省やTTCに指摘したのだ。
SBは「国際標準でTTC標準でもあるAの規格内の技術」(広報)と反論するが、新技術はTTCで審議中。『標準外』のまま見切り発車した格好になってしまった。
総務省によると、TTC標準に法的拘束力はない。だが、「NTTの約款改定次第では事実上規制対象となる可能性がある」(SB広報)というから、標準か否かは重大問題だ。約款改定は早ければ今秋。改定されれば、SBのサービスエリア拡大が制限されることにもなりかねない。
ADSL加入者は、本格普及が始まって約1年で361万人(7月末、総務省調べ)に急増。マルチメディア総研の林大樹研究員は「12メガビットでの顧客獲得競争は、新規加入者増も期待でき、シェア変動の可能性がある」と予測する。
加入者数78万人で業界2位のシェアをもつSBの新技術が水泡に帰せば、まさに格好の「草刈り場」となるのだ。
しかも、標準か否かを議論するTTC内の委員会は、イー社の小幡至弘CTO(最高技術責任者)が委員長。ほかの委員も大多数が競合他社の役員という「四面楚歌」とあっては、孫氏のいらだちも募るばかり。
折しも16日には、SBが大株主のナスダックジャパンが営業停止を発表。ナスダックジャパン関係者は「もはやSBグループで期待できるビジネスはADSL事業だけ。孫氏もこちらの取締役会にほとんど顔を出さなかったぐらい、全精力を傾けている」という。
怒髪天をつく孫氏は、ADSLに関する標準の廃止などを求める意見書を「動議」としてTTCに提出したほか、「営業妨害だ」と、イー社や小幡氏に対する訴訟の準備も明らかにした。
かつては隆盛を誇った「孫帝国」だが、最近の株価急落で、経営不安説も浮上。あおぞら銀行の大株主でもあることから、金融庁関係者も「動向に注目している」という。業界関係者の間でささやかれる“窮ソン猫を噛む”の揶揄もいよいよシャレにならないか。
ZAKZAK 2002/08/26