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正念場の欧州銀行上半期決算点検(3)収益悪化、ドイツの銀行。
合理化加速追い付かず
「そんなことがドイツで犯罪になるはずがない」――。八月一日、第二四半期(四―六月)決算発表に臨んだドイツ銀行のヨゼフ・アッカーマン頭取は記者たちの執ような質問を強い口調で遮った。数日前に独有力紙が、背任容疑で同氏が起訴される可能性があると報じていた。
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実際、背任といわれるほどの問題ではない、というのが大方の見方で、その後、報道は立ち消えになった。「改革を進める同氏への一種の圧力」(ドイツ銀行に詳しいアナリスト)という見方まで出ていた。持ち合い株の売却や旧来型企業の支援取りやめなど“ドイツ株式会社”との決別をはかる外国人頭取アッカーマン氏への反発だというのだ。
うがった見方だと否定しきれないほど、徹底した合理化を進めている。とくにドイツ国内の支店網の合理化など、小口金融部門の引き締めは強い。会見でアッカーマン氏はわざわざ「ドイツ国内での銀行業務は力の源泉だ」と強調したが、本店をロンドンに移し、投資銀行に衣替えしてしまうのではないか、という根強いうわさがささやかれているからだ。
一年前に比べて従業員を四千八百五十人削減、非金利費用は二〇%減った。もっとも収益体質はまだまだぜい弱。四半期ベースでみると昨年後半の赤字からは脱却したものの、純利益は一―三月期比で減少した。
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世界的な株安による運用収益の低下に加え、費用計上した貸倒引当金の増加が響いた。四―六月期の不良債権処理損は五億八千八百万ユーロと一―三月期の二・二倍。建設大手ホルツマンやメディア大手キルヒ・グループの破たんに象徴されるドイツ企業の経営悪化が背景にある。
処理損の急増は他行も同じ。独民間銀行二位のヒポ・フェラインス銀行(HVB)グループは三六%増の七億千七百万ユーロ、コメルツ銀行は二一%増の三億八百万ユーロ。保険大手アリアンツの銀行部門であるドレスナー銀行は七億二千九百万ユーロと二・三倍になった。四―六月期の最終損益は軒並み一―三月期より悪化したが、中でもドレスナーは十億ユーロを超える赤字となった。
ドイツ銀行が合理化による収益立て直しで、グローバル総合金融路線を堅持しようとしているのに対し、コメルツ、HVBグループは縮小均衡路線を余儀なくされつつある。二百近い支店の閉鎖、三千四百人を削減する合理化策を進めているコメルツは、アジアからの撤退を決定。欧州でも主要国以外は閉鎖する方向だ。
事実上、ドイツ国内を中心とする小口金融中心の銀行をめざすとなると、独自で生き残れるかどうか危ぶまれる。株価も低水準のままで、「大陸での事業拡大を狙う英米の金融機関の買収ターゲットになる」(米系証券アナリスト)という声も上がっている。HVBグループに対する買収観測も絶えない。
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ドイツ景気の低迷に加え、世界的な株安が広がっていることで、年後半は一段と収益環境が厳しさを増す見通し。収益低下に合理化が追い付かず、赤字を計上するケースも予想される。
ドレスナーを買収したアリアンツは株安に加え、欧州での歴史的洪水被害など好調だった保険部門にも影が差し始めている。ドレスナーの赤字体質からの脱却ができないようだと、一部部門の売却などに動く公算が大きい。
一段の収益悪化がいや応なく独銀行界の再々編を迫り、欧州の金融勢力図を塗り替えるきっかけになる可能性が大きい。
(チューリヒ=磯山友幸)
【表】ドイツ主要銀行の業績
(最終損益、百万ユーロ、▲は赤字)
2001/2Q 2001/3Q 2001/4Q 2002/1Q 2002/2Q
ドイツ銀行 834 ▲5 ▲1,044 597 204
HVBグループ 131 68 271 272 185
コメルツ銀行 126 ▲191 ▲9 72 2
ドレスナー銀行 449 95 ▲517 1,527 ▲1,015
(注)HVBはヒポ・フェラインス銀行、ドレスナーはアリアンツの銀行部門。1Qは第1四半期