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(回答先: 「匿名希望」氏へのレス:お金の使い方を知らない日本人への対処策 投稿者 あっしら 日時 2002 年 8 月 13 日 19:30:07)
貴殿の詳述された考え方は首肯できることが殆どです。ここまで突き詰めて行かれた真摯な姿勢と明晰な頭脳に敬意を表します。
特に賛同できるのは、日本経済に関する大枠での現状認識です。様々な問題を抱える日本経済ですが、最も根本的なところでは実は世界最強であるという点。日本は十分に高まった労働価値を背景とし、豊富な財をあまねく供給するだけの力を持っています。その力をフルに発揮すれば、国民の何割かは実は、遊んでいてもメシが食えるというくらいのところが実情でしょう(用役については労働生産性を極端に高めることは難しいので、話はそう単純ではありませんが)。
潜在能力としてはそれだけの力を持ちつつ、現実にそうはなっていないところに問題の核心があります。これが貴殿の言われる余剰通貨の還流様態の問題であり、構造的デフレの問題であるわけです。マルクスは資本主義体制下における恐慌到来の必然性を説きました。これを度重なるケインズ政策により延命してきたのが先進工業諸国、なかんずく日本の過去の歩みだったと言えます。そしてもはやにっちもさっちも行かない地点に辿りつきました。
「供給量を増やすのではなく、給与水準を上げよ、これは投資みたいなものである」という考え方も良く分かります。しかし、マクロ経済の視点からは正しくとも、個々の経済主体にそれを強制することはできないところが自由経済の悩ましいところです。企業経営者にとっては、労働価値が高まることも労働生産性が高まる事も等価でしかありません。政府がいじることのできるパラメーターは限られています。
貴殿の仰った「国民が死ぬまで安心していられるシステム」を作り上げるのが、我々の究極の目的と心得ています。北欧流の高福祉・高負担型の経済に近い物ですが、当然日本流に若干アレンジすることになります。日本では、雑多民族の寄せ集めである米国型のような価値観を国民に持たせる事は不可能です。平たく言えば、金持ちが犠牲になり貧乏人の生活を底上げする、それゆえに高額所得者は社会から尊敬される、そういう社会で良いと思います。
さらに言えば、我々も実は金銭的に恵まれた一生を送る必要はないのです。金が欲しいなら、投資銀行にでも就職するか、あこぎな弁護士にでもなれば良い話です(どんなに低くても今の5倍の年収になります)。本当は、お国のために微力ながらも役に立てたという充足感だけで十分なのです。ただ90年代後半以降、これだけバッシングが続くと本当にやる気が萎えます。「一体、誰のためにこれだけ苦労してると思ってるんだ!」と喚きたくもなります。泣き言を言っても詮無いことですが、我々の拠って立つべき共同体としての国家が溶融してゆく姿は見るに耐えません。
榊原論文に代表されるような一気呵成の問題解消のためのウルトラCも一応の選択肢としては残しつつ、今後改革路線を邁進して行かなければなりません。経済の面では今後かなりの長期にわたって良い事などひとつもありません。苦しい事ばかりです。しかし、これが我々の祖国です。ここ以外に我々の大半の生きる場所はありません。
90年代の失政に対する批判は甘んじて受けます。しかしノーベル経済学賞受賞者がLTCMでロシアの破綻を見抜けなかったように、大蔵官僚もバブル崩壊の影響がここまで甚大になるとは想像できなかったのです。申し訳ありませんでした。
これからも数々の刺激的な論文をご発表下さい。楽しみにしています。