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アメリカひとり勝ちはまだ続く?(MSNマネー) 投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2002 年 8 月 12 日 12:07:54:

このところ続いていたドルの下落にもようやく歯止めの兆し。このまま本格的なドル安が回避されれば低迷している米市場も回復し、アメリカのひとり勝ちがこの先も続く?

■ ドル底打ち、金価格下落 行き過ぎた「リスク回避」局面は終了

ドル下落に歯止めの兆しが見られます。ドル相場は対円、対ユーロともに7月16日にそれぞれ115円台・1.01台後半の安値をつけてから、8月6日(火)までに121円・0.96台とともに約5%の戻りを見せています。6日現在の水準は、6月終わりのワールドコム・ショック直前とほぼ同じです。
金も反落が続いています。金は年初の280ドルから5月終わりの328ドルまで17%上昇した後、305ドル程度にまで下落しています。「最も安全な資産にとりあえず逃避する」という動きは沈静化しています。

■ しかし株価の反発はまだ弱い

ワールドコム・ショック当時の株価水準を見てみると、NYダウ平均が9,200ドル、ナスダック指数が1,450程度となっていましたので、6日現在の8,274ドル、1,259と比べると、ずっと高いところにいたのが分かります。まだここから10%以上の上昇がないと当時の水準には戻らないのです。つまり、現在の状況は「ドル安には歯止めがかかり順調に値を戻しているが、株式市場の戻りはまだまだ弱いものに止まっている」というところです。
新聞等のメディアでは、当初この「ドルは戻っているが株はまだまだ」という現象について「リスクを取れなくなった米国投資家が海外の資産(欧州株や日本株)を売り、自国(米国)に資金を戻しているため」という解説がなされていました。いわゆる「リパトリエーション」が起こっているためと説明されてきました。今では「利下げ期待が出てきたことにより景気の底割れが回避される見通しになってきたため」というように論調が変わってきています。

■ ドルと株式市場の関係についてもう一度おさらいする

ここで整理するために、この3月以来のドル安の原因を思い出してみましょう。いまだにメディアでは「ドル安の原因は米国の双子の赤字が再拡大する兆しがあるため」等とされていますが、これはまったくのデタラメです。なぜなら、米国の双子の赤字の片割れである「経常赤字」はITバブル崩壊までの10年間ずっと拡大し続け、足下で逆に減少に転じているというのが現実だからです。確かにもう一方の「財政赤字」は増えています。90年代後半の好景気により大幅に税収が増えたため、米国政府は1997年頃から2001中頃まで財政黒字となっていましたが、景気減速によりこれが一気に悪化し、現在は赤字に戻っています。
しかし「経常赤字」については90年代後半のITバブル時代一貫して増え続けていたのです。そして、それにもかかわらずドルが上昇していたということに注目しなければなりません。ドルが上昇し続けた原因は、一言で言えば、経常赤字という負の側面よりも米国が世界の中で圧倒的に生産性が高いというプラス面を重視し、米国への投資を世界中から集めることに成功していたからです。とくに欧州から米国への投資の規模は莫大でした。欧州からの投資は主に米国の社債や株式に当てられ、米国の繁栄と株式市場の上昇に大きく貢献したのです。米国国内でも海外からの投資が国内の好循環を産み、株式市場はさらに拡大しました。
しかし、市場には「過剰投資」を止める強力なメカニズムはありません。皆が収益を求めて投資を続けた結果、米国はITセクターを中心に大幅な「過剰設備」を抱える国になりました。そして、それに投資家が気づいた時「過剰」というバブルは崩壊したのです。ドル相場もITバブル崩壊で頭打ちとなりました。ITバブル崩壊で「米国ひとり勝ち」が続くかどうかが怪しくなったためです。つまり今後本格的にドル安局面となるのかどうかは、一言で言えば「米国のひとり勝ち」状態が続くかどうかということにかかっているのです。

■ 「米国ひとり勝ち」が続く条件とは?

筆者は、この米国ひとり勝ちはそう簡単に終わらないと考えています。欧州や日本に、米国ほどの革新的な側面があるとは思えないからです。今後「ソフトウェア」の技術革新がキー・ポイントになることを考えると、英語を母国語としていることの有用性も計り知れません。現実的に考えて、「モノ」ではなく「言語」であるプログラムの世界で、世界の中でマイノリティであるドイツ語や日本語がリーダーになれるとはとても思えないのです。日本人として生まれプログラマーを目指すとなると、プログラム言語と数学について学ぶのと同じ程度の労力を英語を学ぶことにかけなければなりません。これは明らかに米国にとってのアドバンテージとなります。
このことからだけではもちろんありませんが、色々考えてみても普通に考えれば米国のひとり勝ち状態は簡単に終わるとは思えません。仮に今後数年のうちにもし終わるとすれば、世界経済全体が本格的におかしくなり、現在のドルの水準では米国が経済運営できなくなるという場合だけだと思います。具体的には、更なる株安による逆資産効果から米国の貯蓄率が上昇・消費が減退、個人の膨大な債務が大問題になり不良債権により金融システムが麻痺、本格的なデフレになるといったシナリオでしょうか。つまり、日本の「失われた10年」がまったく同じように米国で再現された場合です。この場合、ドルは80年代のプラザ合意のように大幅に調整されなければならなくなるでしょう。
しかしこれさえ回避できれば...本格的なドル安も株安も同時に回避され、株価は景気循環と共に順調に上昇すると考えています。最近のドルの底打ちは、こうした大きなリスクが回避できるという期待に基づくものだと思います。

提供:株式会社FP総研

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