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日本ハム<2282>子会社の牛肉偽装疑惑は、雪印食品の場合とは重みが異なる。雪印の場合も、食中毒事件の影響で疲弊していた親会社の雪印乳業<2262>に「解体」の引導を渡してしまった、という点では確かに重大な事件だったが、食肉、ハム、ソーセージを主力とする企業にしてみれば、日本ハムは断トツのガリバー企業である。連結売上高でみれば、雪印食品が約1000億円だったのに対し、日本ハムは1兆円に迫る業界トップ。社会的な認知度と影響力が違う。
●前身は徳島ハム
日本ハムは今回の事件による影響で、三つの大きな問題点が浮かび上がっている。まず、同社が同族企業という点で雪印の場合と決定的に異なる。日本ハムは会長の大社義規氏が創業した徳島ハムが前身だが、義規氏は6年前の1996年、当時81歳の高齢を理由に社長の座を子息の啓二専務にバトンタッチした。
ただし、義規氏には実子がいないため、81年に啓二氏(実弟で現副会長の大社照史氏の次男)と養子縁組している。それはともかく、新社長に就任した啓二氏は当時40歳。つまり、創業家として、この先しばらく君臨し続けることを社内外にアピールしたことになる。
ところが、今回の事件で親会社の監督責任とともに、経営トップとしての自覚と統治能力が改めて問われている。啓二社長は「全容解明を指揮した上で再発防止に努めるのが自分の責務」と、辞任する意志のないことを重ねて表明。9日の記者会見では偽装工作に関与していたとみられる副社長と専務が辞意を漏らしたものの、自身はどこか人ごとのような答弁をしているからだ。それが消費者のみならず、農水省の心証も悪くしている。
●長期化する?商品撤去
国後島のディーゼル発電施設をめぐる不正入札事件で揺れる三井物産<8031>の清水慎次郎社長同様、部下に責任を負わせ、自身は減俸処分などで逃げ切るつもりなのかも知れないが、さらに偽装工作の全容が判明すれば、経営トップの責任は不可避。
同族経営の良さは、オーナーの下で一致団結することが多く、サラリーマン経営の会社に比べて派閥も少ないことだが、この図式が崩れれば、保身に走る役員や幹部が醜い社内抗争に走る可能性は大きい。日本ハムは典型的なオーナー経営のため、トップが辞任に追い込まれた場合、社内は相当な混乱が予想される。
二つ目は言うまでもなく、業績への深刻な影響である。すでに、同社株は連日のストップ安。繰り返される牛肉偽装事件、しかも、業界トップ企業の責任を考えれば、日本ハムの業績に与える影響は計り知れない。
事実、ライバルのプリマハム<2281>の筆頭株主である伊藤忠商事<8001>傘下のファミリーマート<8028>が先頭を切って日本ハム製品を撤去したのに続き、現時点ではダイエー<8263>などの一部のスーパーを除き、イトーヨーカ堂<8264>、セブン―イレブン・ジャパン<8183>などほとんどのスーパー、コンビニ、百貨店などでも相次いで撤去を決めている。こうした制裁は、長期化することが予想され、今後、ボディーブローのように同社の業績に効いてくるだろう。
●ファイターズは何処に
そして、三つ目は、球団経営の存続問題だ。日本ハムファイターズは、ホームグランドをこれまでの東京ドームから札幌ドームへ移転することを表明しているが、啓二氏は社長就任時、「球団経営はそんなに楽ではない。決してニコニコしていられる状態ではない」と語っていたが、折からのプロ野球人気の地盤沈下に加え、今回の偽装事件によるイメージダウン。お荷物球団であるファイターズを、今後の動向によっては身売りせざるを得ないことも想定される。
球団ばかりではなく、日本ハム本体も何らかの形で外部支援を受けることはあり得る。その場合、伊藤忠が雪印に接近したように、資金力の厚さから総合商社がアプローチしてくる可能性がある。
とくに、日本ハムの場合、筆頭株主は三菱商事<8058>である。相手の弱みにつけ込み、「ここが千載一隅のチャンス」とばかり、出資比率の引き上げや、取り引き拡大、人材派遣などをもくろむだろうことは容易に想像できる。トップの引責辞任のタイミングを含めて、当分、激震に見舞われそうである。
(吉野 経)