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小泉純一郎首相の指示で、来年4月のペイオフ(預金の保護額を元本1000万円とその利息に制限する措置)の全面解禁が見送られることになった。小泉首相は「予定通り!」と強弁し、あくまでも見送りを否定しているが、その中身が“姑息(こそく)なまやかし”なのは誰の目に明らかだ。しかも、小泉首相が姑息な手段を選んだことで、金融システムは安定するどころか、むしろ新たな金融不安に発展する恐れも出てきたのだ。
「ペイオフは予定通り実施します」。小泉首相は30日、柳沢伯夫金融担当相を官邸に呼んだ後、記者団に繰り返し絶叫した。だが、31日付の全国紙各紙は一斉に、「全面解禁見送り」と報じたのだから、そのメンツは丸つぶれだ。
首相の指示を受けて金融庁が検討を開始した内容をみれば、「見送り」であることは明白。来年4月以降はペイオフの対象となるはずだった当座預金の全額保護を継続するほか、新たに全額保護の対象となる決済専用で無利息の新型普通預金を創設するというのだ。
来年4月の全面解禁を巡っては、与野党内から延期を求める声が噴出。これに対し、小泉首相−柳沢担当相コンビは国会答弁などで、「ペイオフ解禁こそ構造改革」「延期はあり得ない」と答弁し続けてきた。
「見送り」を認めてしまえば、公約違反との批判を招き、わずかながら上昇に転じた支持率も再び急降下しかねない。
小泉首相としては何としても「予定通り」と強弁できる“逃げ道”が欲しかったわけだ。
「永田町では『ペイオフ解禁で破綻(はたん)する15金融機関リスト』なるものが出回っており、首相官邸でも、全面解禁に対する危機感が高まっていた。
一方、金融庁、日銀の内部でも金融システム不安を心配する声が高まっていた。官邸、金融当局とも実は全面解禁の延期は避けられないと判断していたわけだ。
しかし、延期を完全否定していた手前もあって、春先から、ああでもない、こうでもないと逃げ道を探してきた」(金融当局筋)
その結果が、普通預金は予定通りペイオフを解禁するが、全面保護の対象となる新型普通預金の創設という「何とも回りくどいやり方」(同)となったわけだ。
「わざわざ莫大(ばくだい)なシステム開発投資などを行い、新たに新型普通預金開発しろということか。普通預金の全額保護を続けた方が、ずっとスムーズだ」(大手銀幹部)。金融界では、全面解禁見送りを歓迎する声よりも、戸惑いの声の方が多い。
しかも、「新型預金の登場は新たな資金移動を招き、金融システムが混乱するだけ」との厳しい批判も出ている。
今春にまず定期性預金のペイオフが解禁されたが、その後も来春までは普通預金の全額保護が続くことから、定期預金から普通預金への資金大シフトが発生している。
5月末現在、国内銀行の定期性預金は1年前に比べ40兆円も激減したのに、普通預金などの要求払い預金の残高は63兆円も激増した。
「定期から普通へのシフトは“一時的な避難”に過ぎず、いつまた逃げ出すかわからない。ちょっとしたうわさで流出が始まれば、たちまち資金繰りに行き詰まり、破綻に追い込まれる。安心して長期の融資に回すこともできず、“貸し渋り”の要因にもなっている」(大手地銀幹部)
銀行業界では、普通預金への資金シフトが大問題となっている。新型預金の誕生は結局、新たな資金シフトを招くだけで、金融システムの抜本的な安定につながるどころか、新たな混乱要因となりかねないのだ。
外資系証券金融アナリストは厳しく批判する。
「昨年4月に解禁する予定だったペイオフを1年延期した上に、定期性預金と普通預金で解禁時期に格差をつけるという“泥縄的な対応”が混乱を呼んだ。日本政府はまた同じ誤りを繰り返そうとしている」
「ペイオフ全面解禁は金融機関の再編・淘汰(とうた)を進め、金融システムを安定化させる上でも不可欠。今回の見送りが外国人投資家の失望を招き、日本株や円の“日本売り”に発展する懸念もある」