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「小泉減税、実は実質増税のまやかし」−。景気の先行き不透明感から1兆円超の減税が焦点となるなか、経済界から「景気回復に効果なし」との声が出始めている。今回は減税分を後の増税でカバーする税収中立のオマケ付きで、政府は来年度予算編成で公共投資も3%カットする方針。法人税減税は設備投資による景気浮揚どころか、借金返済や蓄えに回りそう。「数字上も減税分は公共投資の削減で相殺され、増税だけが重くのしかかる」(外資系エコノミスト)というのだ。
減税案は、平成15年度予算編成の本格化とともに浮上してきた。
小泉純一郎首相が議長を務める経済財政諮問会議の民間議員が、法人税を中心に「1兆円程度の減税」を主張した。
国の台所事情を第1に考える財務省がこれをつぶしにかかり、経財諮問会議が8月2日にまとめた「予算の全体像」からは突如、「1兆円減税」などの項目が消えた。
財務省が7月末に発表した13年度一般会計の決算は、景気低迷で法人税などの税収が減り、4年ぶりに歳入が歳出を下回る歳入欠陥(不足)に見舞われた。
「財務省にすれば、こんな財政事情で減税だけ具体的な額を示し、おおっぴらに認めるわけにはいかないというわけだ」(金融アナリスト)
ところが、その後、「小泉政権は財務省の言いなり」と批判が噴出。小泉首相もたまらず、「1兆円超の減税」を経財諮問会議で明言した。
規模は「3兆、5兆の減税は無理」(竹中平蔵経済財政担当相)な財政事情で、法人課税の軽減を中心に1−2兆円で落ち着きそうな気配だ。
その減税も実は、「4、5年で税収中立にする」(塩川正十郎財務相)という条件付き。
減税を先行実施するが、4、5年間で増税もやり、減税と増税の額を差し引きチャラにする。
減税の中身についても、民間側は国と地方を合わせた法人課税の実効税率を、現行の約41%から5%程度引き下げたままにする「恒久減税」を主張している。
これに対し、与党などは、研究開発投資や設備投資に対する「期間限定の減税」の実施を求めている。秋以降、経財諮問会議などを舞台に、減税項目をめぐる攻防は火花を散らすことになる。
では、かりに1−2兆円の減税が実施されたとして、どれほどの効果が期待できるのか。
第一生命経済研究所の川崎真一郎主任研究員は「法人税減税で追加的な需要が出るかどうかは不透明。企業もかつては減税分を設備投資に回すなどしていたが、設備投資が抑制気味に推移しているいまは、減税で浮いた金は借金返済に回したほうがいいと考えるのではないか」と指摘する。
法人課税の軽減で恩恵を受ける企業サイドでさえ、景気に対する効果については懐疑的だ。
「減税のような景気刺激策は必要だが、過去の例をみると、減税分は将来のために蓄えたり、借金返済にあてるケースが多い。減税分の金がうまく回るかどうか疑問」(東京商工会議所幹部)
景気を上向かせるにはフン詰まり状態になっている金が循環していくことが必要になる。
法人減税で浮いた金が、新しい機械を買うなど設備投資に向かえば、経済効果も期待できる。借金返済に使われたり、蓄えられたりしたら何も生み出さない。
にもかかわらず減税が景気対策としてクローズアップされるのは、「とりあえず減税を口にすれば、時の政権が経済対策に真面目に取り組んでいるように見えるから」(野党政策担当者)。
実際は「人気取りや無策ぶりを隠すため、ほかに打つ手がなくて駆け込み寺的にやるケースが多い」(同)という。
小渕政権時代の11年には、景気対策として所得税と住民税の大幅な定率減税を実施し、恒久的に続く。所得税は20%(上限25万円)、住民税は15%(同4万円)減税されたが、個人消費は低迷したまま。
それどころか、こうした大減税があったことすら忘れ去られている状態で、「効果がなく、3兆円の税収減を招くこんな減税はやめてしまえ」の声も出始めている。
当時は、景気対策から減税に加えて積極財政のピーク時でもあった。
当時の宮沢喜一蔵相は景気重視の11年度予算を、「ハマの大魔神(元横浜ベイスターズの佐々木主浩投手)を1回から投入するようなもの」と例えて自信を示した。
だが、大魔神は米大リーグに移り、日本経済も米国経済次第という、ふがいない状態にある。
そうでなくとも期待薄の減税。今回は増税のほか、来年度の公共投資3%カットもセットになっている。
増税では、配偶者特別控除の廃止や法人への外形標準課税導入が浮上。配偶者特別控除の廃止は「1200万人に影響し、5000億円の所得税増税をしたのと同じことになる」(税調関係者)。
外形標準課税は「赤字企業でも人を雇っているだけで課税され、銀行から金を借りればその利子にも課税される。導入されれば、法人事業税は3000億円の増税になる」(財界関係者)という。
公共投資の3%カットも、「1兆円減税の経済効果が出たとしても、それを相殺してゼロにする可能性がある」(外資系エコノミスト)というのが専門家の見立てだ。
そうなった場合、あとから実施される増税だけが重くのしかかり、「小泉減税、実は実質増税」(同)の言葉が現実味を帯びることになる。
ひいては、給与カットやリストラにあえぐサラリーマンがまた、泣きをみることになる。