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外為市場では、ドル/円が下げ止まらない状況のなか、ドルの116円割れも目前となった。円高進行は輸出企業の収益にとって打撃となるが、円の先安感が強かった今年1─3月期を中心に取引された長期先物予約取引が、輸入企業の財務担当者の頭を悩ませている。外為関係者によると、この取引は“フラット為替”と呼ばれるもので、一定期間中に一定水準でドルを購入する長期先物予約。この円高局面で、取引解消の打診を受ける邦銀もあるという。経常収支でも明らかなように、輸入の前年同月比マイナスが続くなか、“需要の先食い”が行われたとの声もあり、一段のドル安局面でも、輸入筋からの積極的なドルの押し目買いは期待しにくい状況だという。
外為市場では、6月中の通貨当局によるドル買い/円売り介入にもかかわらず、ドル/円の下落基調が継続している。本来、輸入企業にとって円高進行は、企業収益へプラスに働きかける要因となるが、今年上旬に“フラット為替”を手がけた輸入企業においては、足元での円高進行は悩ましい動きとなっているもよう。
関係者によると、“フラット為替”とは、3年や5年、長ければ10年にもわたる一定期間、一定水準でドルを買うことができる先物予約を指すが、クーポン・スワップを使用したものや、通貨オプションを組み込み、レバレッジ効果を付加したものもあるという。
ドル/円がディスカウント体系になっていることから、スポット水準よりも安くドルを買うことができ、ドルの先高観が強い場面では、こうした取り組みが出やすいとされている。外銀は、長期にわたる国内企業への与信が難しいことから、専ら邦銀を中心に輸入企業に売りこまれた取引とされるが、輸入企業にとっては、為替のコストが確定するため、将来的な収益計画が立てやすくなるメリットがあるという。
こうした取引が目立って観測されたのは、円の先安感が強まった1─3月期が中心だというが、4月以降130円を割り込んだ局面でも多く観測され、現在に至っても、取引意欲を示す輸入企業があるという。
「わが社は取り組んでいないが、128円付近などで“フラット為替”を取り組んだ輸入企業もあることから、ドルの一段安の局面でも、積極的な実需筋からの押し目買いも出にくいのではないか」──。
あるメーカーの財務担当者が指摘するように、輸入企業のなかには、現在のスポットでのドル/円の水準よりもかなり円安水準で、長期ドル買い予約に取り組んだ企業もある。
15日朝方に5月経常収支が発表されたが、輸入が前年同月比でマイナス4.6%となり、8カ月連続で黒字幅が拡大する結果となった。輸入の前年同月比マイナスが10カ月連続となるなか、市場関係者の間からは、“需要の先食い”との声が聞かれている。
実際、市場では、「4月以降のドル安/円高の流れのなか、125円付近、120円付近と下がる過程で既にドルを買った輸入企業も多く、ここに来て大口でのドル買い意欲は後退している」(外銀)という。
ある邦銀の関係者は、「電力会社など、コンスタントにドル買いニーズが発生する企業などが長期間一定の価格でドルを買う先物予約を行うのが普通だ。ロット的には小ロットでの取り組みが多く、それほどマーケットインパクトがあるという取引ではない」としながらも、「通貨オプションを組み込みレバレッジ効果を狙った取引のなかには、ある一定水準以上円高に振れた場合には、実需として想定していた金額の2倍分ドルを買わなければならないような仕組みもあり、一段の円高進行でオーバーヘッジに陥る輸入企業も出てくるはずだ」と指摘する。
ドル/円がジリジリと下げるなか、「なかには、手数料を払ってでも“フラット為替”を解消したいという輸入企業も出てきている」(別の関係者)というように、一段の円安シナリオを警戒していた輸入企業のなかにも、相場観を修正する動きも見られ始めている。
市場では、「将来のキャッシュフロー全てを予想し、為替予約を行っている輸入企業はほとんどなく、これからもドル/円が下がれば、未ヘッジ分をヘッジしてくるはずだ」(国内金融機関)との声もある。
しかし、「通常よりもオーバーヘッジになってしまっている輸入企業もあるとみられ、そうした企業は身動きが取れないのではないか」(上位都銀)ともみられている。
「過去に、ドルの10年先物予約で巨額の為替差損を出した航空会社もあったが、それに近いスキームだ」(邦銀)との指摘もあるなか、一段の円高進行で頭を悩ませるのは、輸出企業だけではないようだ。