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(回答先: 国民の税負担増は不可避 政府税調が税制見直し案を答申〔朝日新聞〕 投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2002 年 6 月 14 日 21:27:02)
2002年06月15日(土)付
国民の税負担増を明記 政府税調答申
「広く薄く」を徹底
政府税制調査会(首相の諮問機関、石弘光会長)は14日、中長期的な税制見直し案
「あるべき税制の構築に向けた基本方針」を小泉首相に答申した。財政再建の必要性
を前面に打ち出し、国民の税負担増が不可避と明記。「広く薄い負担」や「不公平感
の是正」を理念として、所得税の課税最低限引き下げ、赤字法人への課税などを課題
に挙げ、将来の消費税率引き上げ方針も明確にした。
基本方針は国と地方の債務残高が約700兆円に積み上がり、少子高齢化で社会保障
費も膨らむなか、財政再建のための負担増が避けられないと強調。
景気低迷で当面は「課題になり得ない」としつつも、増税への理解を求めた。
個別税目のうち所得税では、増えすぎた控除を簡素化し、人的な控除を(1)基礎控
除(2)配偶者控除(3)扶養控除の三つに集約化することを基本に、課税最低限を
引き下げる方針を明確にした。
とくに配偶者関係の控除は、男女平等社会の面からも廃止・縮小を提言。高校・大学
生の世代の子どもに対する控除の割り増し措置(特定扶養控除)も廃止を含めた見直
しを求めた。
消費税は、現行の税率5%になって初めて「税率を上げる必要がある」と明示した。
将来、欧州諸国並みの10%以上の税率にする場合には、食料品などの税率軽減も検
討する。当面、国民の不信感の解消のため、納めるべき税が中小の事業業者の手元に
残る「益税」の解消などをめざす。
企業課税では、地方税の法人事業税に外形標準課税を早急に導入し、赤字法人にも税
負担を求めるよう提言。導入による法人課税の実効税率引き下げ効果にも言及してい
る。一方、経済界に根強い国税の法人税率引き下げは「すでに先進国並みの水準」と
退けた。
政府がデフレ対策に掲げる研究開発向け減税などについては競争力強化の意義を認め
つつ、「財政悪化を招かないよう具体的な増税策と一体化すべきだ」と財政規律の重
視を鮮明にしている。
政府は基本方針のうち、所得税の各種控除の見直しや、外形標準課税の導入など一部
を03年度の税制改正で実現させる考えだ。税調は7月から地方公聴会を開くが、与
党内からもすでに強い反対の声が出始め、年末に向けた03年度税制改正作業は難航
しそうだ。
抵抗必至、実現どこまで
消費税の益税解消、与野党とも反発
政府税制調査会が14日答申した税制見直しの基本方針に沿って、03年度の税制改
革作業が秋口から本格化する。小泉首相はすでに、方針を先取りして、赤字企業にも
税負担を求める外形標準課税の導入など、5項目の検討を政府税調に指示した。政治
的に積み上げられた各種の優遇制度を縮小できるか、増税路線が受け入れられるか、
政権が基本方針をどこまで実行できるか、真価が早速問われる。
意気込む首相
小泉首相が検討を指示した5点は、外形標準課税のほかに、配偶者特別控除などの簡
素・集約化▽研究開発減税・投資減税の集中化▽消費税の免税点制度等の見直し▽相
続税の最高税率の下げ・控除の見直しと生前贈与の円滑化。研究開発などの減税と相
続・贈与税の見直しは、首相が13日与党に示した02年度内の先行減税の柱でもあ
る。
税制改正は通常、予算編成期の年末近くに作業が集中する。6月に首相が主要テーマ
を指示するのは異例で「首相の意気込みの表れ」(財務省幹部)ともいえる。
高いハードル
ただ、実現に向けたハードルは高い。特に外形標準課税の導入と益税解消を目指す消
費税の免税点制度の見直しは、与野党や中小企業からの強い抵抗が予想される。
外形標準課税を導入する場合、所得に応じて税を課す地方税の法人事業税を軽くし、
その分、会社の資本規模などに応じて赤字法人にも税負担を求めることになる。
与党は02年度税制改正大綱で、外形標準課税について「景気などを勘案しつつ03
年度の導入をはかる」と決めた。しかし、自民党税調の幹部は「景気が冷え込んだ現
在の導入が適当か」と早くも導入に後ろ向きだ。与党議員や中小企業から「強い大企
業の負担を、赤字の中小企業などにつけかえるものだ」として、反対が強まっている。
消費税の益税解消は、将来の税率アップに向けた条件整備の側面があるとともに、国
民の不信感を解消するための第一歩でもある。益税のもとになる免税点の引き下げと
簡易課税制度の廃止について日本商工会議所は「中小零細の免税業者は、仕入れにか
かる消費税分の転嫁が困難になっている」などとして、維持・存続を強く求めている。
政治的な圧力
税制の決定権を握ってきた自民党税調は、税制改革論議に距離を置いてきた。基本方
針や首相の指示にも「政府側が何か決めても、取り上げるかどうか分からない。反対
の結論になることもある」(幹部)と冷淡だ。
減税についても与党側は、減税規模の拡大や前倒しを求めており、「減税だけのいい
とこ取り」(財務省)を狙う圧力がかかり続ける。
03年春には統一地方選が控え、ある政府税調委員は「基本方針が政治的にゆがめら
れないか、祈るような気持ちだ」と不安を隠さない。
数年内に、さらに難題が待ち受けている。地方交付税、国からの補助金、地方への税
源移譲の改革をどう実現させるのか、今後1年以内に工程表をまとめる。04年には
年金制度改革が控え、基礎年金の国庫負担を引き上げる財源として消費税の税率上げ
が焦点になる見通しだ。地球温暖化対策で環境税の議論も本格化する。
03年度の税制改正の結果は、中期的な税制改革の方向性を占うことになる。
◇
税制・財政をめぐる日程
02年?冬 03年度税制改正・予算編成作業
年内 国から地方への補助金対象事業の見直しに結論
03年1月 研究開発などの減税を前倒しで適用
03年度 税制改革の具体化を開始
同 特定財源見直しの具体化を開始
同 特殊法人改革を具体化
03年6月 地方への税源移譲、地方交付税、補助金の改革工程表
04年中 年金制度改革
05?07年 地球温暖化対策で政策対応
06年度 税制改革を完了
同 数兆円規模の補助金削減や交付税縮小を完了
同 財政の基礎的収支の赤字を現状の半分程度に
10年? 基礎的収支を黒字化
財界、法人税の引き下げを強く要望
日本経団連の奥田碩会長は税制改革の基本方針について、「経済の活力回復を最大の
目標にすべきで、短期の税収中立にこだわらず先行減税を果断に実施すべきだ」と指
摘。経済同友会の小林陽太郎代表幹事は「財政再建が不可避である以上、全体として
税負担が増えるのはある程度やむをえない」とする。
ただ、法人税の実効税率(現行40・87%)は、「欧米の法人税率はすでに30%
台半ばだ。引き下げは企業活動の活性化と株価への反映を通じて、結果として税収全
般に好影響を与える」(小林氏)と引き下げを求め、奥田氏も「国際競争条件整備の
ため、35%程度への引き下げが必要」と求める。
また、法人事業税への外形標準課税の導入については、日本商工会議所の山口信夫会
頭は「極めて遺憾。長引く不況で赤字を余儀なくされている中小企業に負担できない
重税を課すものだ」と強く反対。奥田氏らも「まず導入ありきの議論は容認できない。
中小企業への影響を十分配慮すべきだ」などと慎重に検討することを求めている。
重い説明責任、展望示せ
編集委員・小此木潔
小泉首相の指示で政府税制調査会がまとめた税制改革の基本方針は、増税路線が鮮明
だ。
幅広い国民に負担増の「痛み」を求める以上、政府は歳出の厳しい見直しと、重い説
明責任を問われる。
基本方針は、税負担が増えるサラリーマンや企業の間で、反発を招くことになるだろ
う。
しかし、年間30兆円を超す税収不足に陥っている財政構造や、414兆円もの国債
残高を考えるとき、行政サービスの対価として個人や企業が「広く」税を負担する方
向や、中長期的な増税コースは避けられない。
「痛みを伴う改革」の必要を繰り返し説いてきた首相は、この改革の必要を、ていね
いに説明しなくてはならない。
奥村洋彦・学習院大学教授は「経済や財政はどう改善するのか。失業・倒産や不良債
権が増える心配はないか。副作用も含めた改革の全体像が見えて、将来への不安解消
につながると思えば、たとえ負担増の政策でも、国民はわかってくれる」と指摘する。
負担増について国民の理解が得られなかった例に、細川政権の国民福祉税構想がある。
深夜の記者会見で「税率7%」の根拠を質問された細川氏は「腰だめの数字」と答え、
官僚主導ぶりをさらけだした。
今回はどうか。経済財政諮問会議と政府税調に対する小泉首相の指示をみれば、税制
改革の目標を「経済活性化」や「すべての人が参画し、負担し合う公正な社会」に置
いていることがわかる。
だが、残念ながら政府税調の方針は、財政再建や税収増の必要を訴えるのに精いっぱ
いで、改革による経済社会の未来像を描き出すことに成功していない。
もともと首相が「改革」を叫ぶわりには理念が明確でなく、それを補完するはずの諮
問会議が、自民党や財務省の抵抗にもあって、十分に機能していないことが、こうし
た限界を露呈させているようにみえる。
この点は、今後、諮問会議の論議などを通じて是正してほしい。たとえば、環境税の
導入で循環型社会づくりやエネルギー革命を進め、経済発展の起爆剤にする、という
ぐらいの大胆な展望も示してもらいたい。
改革が日本経済に及ぼす影響について、医療費の窓口負担増や歳出削減もあわせて考
えると、性急な財政再建路線で景気失速の引き金を引いたとされる97年の「橋本改
革」との類似も気になるところだ。
せっかく「底入れ」した景気を再び失速させないよう、慎重に具体案をつくる必要が
ある。
政府税調答申(要旨)
政府税制調査会が14日、小泉純一郎首相に答申した「あるべき税制の構築に向けた
基本方針」の要旨は次のとおり。
【はじめに】
現在の税制の基本的理念、骨格は、1950年からのシャウプ税制に大きく依存。少
子・高齢化やグローバル化の予想以上の進行など、加速しつつある経済社会の構造変
化に税制が十分に対応しきれていない。
今回、21世紀前半をも視野に入れた、あるべき税制の全体像についての基本的な方
針を示す。結果として負担増の方向になる見直しもある。実施は段階を追って慎重に
進め、徹底した歳出削減、行政改革で国民の理解を得ることが不可欠。社会保障、公
共事業、地方財政などあらゆる分野で大胆に歳出削減し、社会保障制度の議論を深め
る必要がある。
【第一 基本的考え方】
一 経済社会の活性化に向けたあるべき税制の構築
少子・高齢化、ライフスタイルの多様化、グローバル化、情報化、経済のストック化、
地球温暖化等の環境問題への意識の高まりなど、経済社会の構造は大きく変化。世界
規模での企業競争はますます激化。
的確に対応できなければ、わが国は活力を喪失し、長期的に低迷の道を歩みかねない。
持続的な経済社会の活性化には、構造改革が急務。
二 あるべき税制の構築に向けた視点
「公平・中立・簡素」の原則を基本とし、以下の4点が重要。
1 自由な経済活動を妨げない税制(効率的な資源配分と政策の集中)
経済社会の活力が発揮されるよう、個人や企業の自由な選択を妨げず、経済活動に中
立でゆがみのないことが基本。租税特別措置など政策誘導的な税制上の措置の整理・
合理化を進める。
2 課税の適正化・簡素化(税制への信頼、社会への参画)
税負担のゆがみや不公平感を生じさせている諸措置を放置すれば、国民の信頼、社会
参画への意欲を失わせ、社会の活力を低下させる。分かりやすい簡素な税制を構築。
3
安定的な歳入構造の構築(持続可能な財政の確立と将来不安の払拭〈ふっしょく〉)
わが国の財政は、多額の長期債務残高を抱え(02年度末の国・地方の長期債務残高
見込み約693兆円、対GDP比約140%)、今後も年金・医療給付が増大。
約81兆円の国の歳出に対して、税収は約47兆円(02年度予算ベース)で、租税
負担率は主要国中で最低水準。財源調達機能は十分に果たせていない。21世紀初頭
のできるだけ早い時期にプライマリーバランスの均衡化を達成することが求められる。
歳出面の改革とともに、租税負担水準引き上げは不可避。減税の際は財政悪化を招か
ないよう、具体的な増税と一体として措置。
4 地方分権と地方税の充実確保
市町村合併推進や地方歳出に対する国の関与の廃止・縮減などによる地方行財政効率
化を前提に、地域のニーズに応じた行政サービスを実施できるよう自主財源を中心と
した歳入基盤を確立。
三 あるべき税制が目指す方向(略)
【第二 個別税目の改革】
一 個人所得課税
1 個人所得課税の現状と課題(基幹税としての機能の回復)
個人所得課税(所得税、個人住民税)は、税負担水準が極めて低く(「狭く薄い」)、
基幹税としての財源調達や所得再分配などの機能を喪失しかねない。こうした「空洞
化」を是正し、根強い「不公平感」にも対処する必要。税負担増の場合は段階的に実
施。
2 今後の改革方向
(1)基本的考え方(広く公平に負担を分かち合う)
(1)諸控除
個人所得課税の「空洞化」では、非納税者の割合や、課税最低限の高さが指摘できる。
諸控除見直しは、「広く公平に負担を分かち合う」理念の下、次の3点が重要。
イ 婚姻、育児、老齢等に応じた控除は、社会保障等の「インフラ」整備等も踏まえ、
できる限り簡素化・集約化。
ロ ライフスタイルの変化など、個々人の自由な選択に介入しない中立的な税制。
ハ 高齢化の進展で、公的年金等控除などによる課税ベースの縮小が加速。ベース拡
大の方向で諸控除を見直す。
(2)税率構造
最低・最高税率ともに主要国に比して低い。本来果たすべき財源調達機能や所得再分
配機能の発揮の観点から考えれば、これ以上の税率の引き下げは適当ではない。
(3)恒久的な減税
99年度に実施されたいわゆる「恒久的な減税」のうち、定率減税(約3・5兆円)
は、経済情勢を見極めつつ廃止していく必要。
(2)諸控除の見直し
(1)家族に関する控除
イ 人的控除の簡素化・集約化
(イ) (略)
(ロ)基本的に家族に関する控除を基礎控除、配偶者控除、扶養控除に簡素化・集約
化すべきだ。
a 特定扶養控除、老人扶養控除等の様々な割り増し・加算措置、勤労学生控除や寡
婦(夫)控除等の特別な人的控除は、廃止を含め、制度をできるかぎ
り簡素化。
b 配偶者特別控除は基本的に制度を廃止。
ロ 人的控除の基本構造の更なる見直し
(略)
(2)高齢者に関する控除
控除を見直し、高齢者と現役世代との公平確保。公的年金等収入を課税対象とする。
能力に応じた負担は高齢者間の公平にも資する。
老年者控除は、真に配慮すべき高齢者に対する控除としての位置づけを明確に。公的
年金等控除は社会保険料控除がある以上、本来不要。定額控除の
割り増しと老年者控除との関係を整理するなど大幅な縮減を検討。
(3)給与・退職金に関する控除
イ 給与所得控除は縮減を図る方向で検討するが、事業経営者の所得捕捉が十分に行
われていない、との不公平感が根強いことも念頭に置く。
ロ 退職金に対する課税は、就労や退職金支給の実態を踏まえ、税負担の公平・中立
を確保。
(4)政策的措置としての控除
生損保控除や住宅ローン控除など特定の政策目的の控除は厳しく妥当性を吟味し廃止
を含め見直す。
(3)個人住民税のあり方
(1)基本的考え方
受益と負担の対応関係が明確に認識でき、税源の偏在性が少なく、税収の安定性を備
えていることなどを踏まえ、地方税の基幹税として充実確保を図る。
(2)所得割り
所得税より低い水準で設定。
(3)均等割り
人口段階区分に応じた税率の格差縮小を含め、水準の見直しを図る。
二 法人課税
1 法人税
(1)法人税の現状と課題(財源調達機能と経済社会の活性化)
法人税収の国税収入に占める割合は20%台前半まで低下。全法人の約7割が欠損法
人。財源調達機能の確保、経済社会の活性化の視点で改革。
(2)今後の改革の方向
(1)基本的考え方(ゆがみの少ない中立的な税制の構築と政策税制の重点化)
国際的に整合性がとれ、企業活動に対しゆがみの少ない中立的な税制を基本とすべき
だ。法人税率はすでに先進国並み水準。これ以上の税率引き下げは
不適当。
今後の法人税率の水準は、租税負担全体の水準や税体系全体のあり方、先進国との税
率のバランスを踏まえ検討。法人事業税に外形標準課税を導入すると、法人所得課税
の実効税率は下がる。
(2)政策税制の集中・重点化(明確な国家戦略を前提とした重点的な措置)
新産業や技術革新の創出等を目指し、政策税制を研究開発分野等に重点化。
(3)経済社会の新しい動きへの対応
イ 同族会社の留保金課税、パートナーシップ等の多様な事業体に対する課税を見直
す。
ロ 公益法人等の収益事業課税、軽減税率はNPO法人など新たな法人に対する課税
も含め、幅広く見直す。
ハ 寄付金税制も、NPO法人等の円滑な活動に資するよう見直す。
2 法人事業税(外形標準課税の導入)
外形標準課税導入は税負担の公平性の確保、地方分権を支える基幹税の安定化、経済
の活性化・経済構造改革の促進などに重要な意義。早急に導入すべきだ。
三 消費税
1 消費税の現状と課題(安定的な基幹税目とするために)
基幹的税目の一つとして定着してきた一方、不信感が依然根強い。信頼感の向上と、
税率水準の見直しが大きな課題。所得に対する逆進性問題は、税制全体、歳出面を含
めた財政全体で判断。
2 今後の改革の方向
(1)基本的考え方(国民の信頼性の向上を図り消費税の役割を高める必要性)
消費税は、世代間の公平の確保、経済社会の活力の発揮、安定的な歳入構造の確保の
ため極めて重要。社会保障支出の増大などから今後、税率を引き上げ役割を高めてい
く必要。制度の信頼性、透明性を向上させる。
(2)信頼性、透明性の向上に向けた改革(中小事業者に対する特例措置の抜本的な
改革等)
(1)中小事業者に対する特例措置
イ 事業者免税点制度
免税点の水準(課税売上高が3千万円以下)は制度創設以来据え置かれ、6割強が免
税事業者。消費税相当額が国庫に入っていないとの疑念が国民不信の大きな背景にあ
り、免税点制度を大幅に縮小すべきだ。
ロ 簡易課税制度
納税額の損得を計算した上で適用している実態が多数指摘され、廃止を含め抜本的見
直し。
(2)申告納付制度
運用益問題の解消に資する観点で、納付の回数を増やす方向で検討。
(3)総額表示方式
消費税を含めた価格の総額を表示(総額表示方式)は具体化を図る。
(4)インボイス制度
仕入れ税額控除で税額を明記した請求書等の保存を求める「インボイス方式」は、将
来複数税率が採用される場合に採用を検討。
(3)税率構造等
消費税の税率構造は、制度の簡素化、経済活動に対する中立性確保の観点から極力単
一税率が望ましい。仮に将来、欧州諸国並みの2けた税率となった場合は、所得に対
する逆進性緩和のため、食料品等への軽減税率の採用が検討課題だが、範囲は極力限
定。非課税範囲拡大やゼロ税率は適当でない。
(4)地方消費税
今後、福祉・教育等幅広い行政需要を賄う税として、充実確保を図る。
四 資産課税等
1 相続税・贈与税
(1)改革の基本的考え方(経済社会の構造変化への対応と負担の適正化)
高齢化の進展で相続による資産移転時期がより後半にシフト。早い時期に次世代に移
転すれば、経済社会の活性化に資する。生前贈与の円滑化を検討。
(2)相続税の改革の方向性
(1)課税ベース
基礎控除は「広く薄く」の観点から引き下げ方向で検討。死亡保険金・死亡退職金の
非課税措置は廃止・縮減の方向。
(2)税率構造
最高税率は引き下げが適当。累進構造は、現行程度を維持。税率の刻み数は、ある程
度滑らかなことが望ましい。
(3)贈与税の改革の方向性
(1)相続税・贈与税の一体化
相続税・贈与税を一体化する方向で検討。累積課税化は納税者番号制度の導入などが
必要不可欠。それまでは暫定的な措置の導入を検討。
(2)第三者に対する贈与の取り扱い
最終的に相続関係のない第三者への贈与の課税は、所得課税へ移行も。
2 固定資産税
(1)固定資産税の現状と課題
安定的確保が重要。
(2)今後の改革の方向性
地価公示価格の7割をめどとした評価水準は、維持することが適当。
3 土地税制・住宅税制のあり方
土地税制は、バブル期以前の水準まで戻っている。地価の推移、土地の譲渡益の課税
ベースが大きく浸食されている現状も踏まえる。少子高齢化で住宅需要が減少してい
かざるを得ない。住宅ローン控除等従来の軽減措置のあり方を検討。
4 金融税制のあり方
金融商品間の中立性や金融分野以外の所得との公平性の確保、制度の簡素化等、現行
制度の見直しを検討。「二元的所得税」や金融税制の「一元化」
は、総合課税との関係、資産性所得と勤労性所得に対する課税のバランス等について
検討を要する。
五 その他
1 酒税、たばこ税
適切な税負担水準の確保に努める必要がある。
(1)酒税
酒類区分(10種類)の簡素化、酒類間の税負担格差縮小の方向。「同種・同等のも
のには同様の負担」の考え方で早急に負担の均衡を図る。
(2)たばこ税
税率引き上げの是非を検討。
2 特定財源等とエネルギー関係諸税等
特定財源等は財源確保に有効だが、資源の適正な配分をゆがめ財政の硬直化を招くお
それ。道路特定財源等は一般財源化を含め見直し。エネルギー関
係諸税等の税負担水準引き下げは適当ではない。
3 環境問題への対応
汚染者負担の原則に立って幅広く検討。既存のエネルギー関係諸税等との関係も検討。
4 国際課税
課税権を十分に確保するため、制度の見直しを。多様な事業体や外国法人の支店に対
する課税のあり方を見直し、外国子会社合算税制や外国税額控除
制度の適正化も検討。
5 課税自主権の尊重
課税自主権を活用し、地方自ら財源確保を図ることは、地方分権の観点から望ましい。
六 納税者の信頼確保に向けた基盤整備
1 納税者番号制度
導入に向け、早急に検討を開始。
2 源泉徴収・年末調整
今後とも基本的に存置させるべきだが、給与所得者が自ら確定申告を行うことは、意
識を高める観点から重要。電子申告をはじめ申告手続き簡便化の環境
整備など税務執行面にも配慮しつつ、拡充を検討。
3 公示制度
高額納税者が社会的に評価されることの重要性を踏まえつつ、今日的視点から検討が
必要。
4 その他
(略)