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5日の参院本会議で、証券決済システム改革法が成立し、国債整理基金による金利スワップ取引が2003年1月から開始可能となった。財務省では内部スタッフの研修など体制整備に取り掛かる方針。金利スワップ取引では、取引相手の選定や内容の開示の有無などが市場に大きな影響を与えると見られるが、市場には、財務省がどういった場面で実施するのかなどについての考え方が明確でなく、取引の見通しは不透明との声も聞かれている。
金利スワップは、固定金利と金利市場の実勢により変わる変動金利を交換する取引。財務省はこの取引を活用すれば、金利変動で将来の国の国債利払い負担が増加するリスクなどに対応し、より適切な債務管理ができるとしている。
新法のねらいについて、市場関係者は、政府が長期国債の発行を増やさずに低金利で資金調達できる利点がある、と指摘する。「当局は、長期金利の急上昇などで市場が混乱しないよう、日頃から最大の配慮をしているはずで、長期国債の発行を増やすことはできるだけ避けたいはず。金利スワップ取引で、長期の固定金利を払い、短期の変動金利を受けることで、当局は長期国債を発行せずとも目的を果たすことが可能」との見方が市場には多く、当局も同様の考え方を3月の国債市場懇談会で明らかにしている。
ただ、市場には、どの場面で金利スワップを実施するのか、当局の考え方が明確でない、との声が多い。ある外資系証券のスワップ・ディーラーは「実際の取引に関しては、先行きはかなり不透明だといわざるを得ない」と話す。
法案成立前の4日の参議院・財政金融委員会で、尾辻副財務大臣は金利スワップ取引について、「ただちに、積極的にやるというつもりはない。まさかに備えるもの」と説明。これに対して、質問者の民主党・大塚耕平議員が、「すぐに使う必要がないのに、まさかの時に備えてというのは説得力がない。なぜこの時期に法改正が必要なのか」と繰り返し問う場面があった。
市場関係者からも、「金利が急上昇している時がその“まさかの時”であるのなら、スワップ金利を払いたくても、市場で受ける相手は見つからないだろう。マーケットを動かしたくないという考えが当局にはあると思うが、取引する額や取引内容が公開されれば市場が動くことは必至だ」(同じ外資系証券)との指摘も出ている。
実際に、今年3月に当局が金利スワップ取引を検討していることが明らかになった直後、「市場は、財務省が長期固定金利を払う取引をするだろうと見て、一時的に払い方向に動いた」(邦銀)という。
また、J.P.モルガン証券・マーケットストラテジストの横山明彦氏によると、当局がスワップ取引をしない米国市場に比べて、欧州のスワップ・スプレッド(スワップ金利の対国債利回り格差)が拡大しにくいのは、公的部門によるスワップ取引が影響しているため、との見方もあるという。同氏は「欧州当局はある程度取引の内容を開示しており、市場の期待感からスワップ金利の低下圧力が強くなるとみられている」と指摘、日本でも当局の動きが金利形成に大きな影響を及ぼすと予想する。
財務省の関係筋は、金利スワップ取引はあくまでも「当局と市場のギャップを埋めるための補完的な位置付け」と説明しており、市場では、長期金利が急上昇するような非常事態にそなえる「有事対応」ではないか、と解釈する見方もでている。
「“まさかの時”とは、98年から99年にかけて長期金利が急上昇した”資金運用部ショック”のようなことを避ける、という意味なのではないか。同じようなことが再び起りそうだと予想される時に、事前に打てる手段として金利スワップ取引も確保しておきたいとの認識だろう」と横山氏は推測する。
新法に関連して、市場では、当局の金利スワップ取引相手となる金融機関の選定も市場の大きな関心事で、「国債落札シェアの高い証券会社を取引相手として認定するのではないか」との思惑も浮上している。
スワップ市場では、「財務省の金利スワップ取引については、材料としてはいったん下火になっている。今後の展開についても、不透明感が強いことから、当面材料とはなりにくい。ただ、市場関係者の関心は高く、今後も注目されてゆくだろう」(外資系証券)との声がでている。