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再掲:あらわれた世界新秩序〜「帝国」の思想をめぐる対談 投稿者 小耳 日時 2002 年 10 月 05 日 20:12:23:

 ここ、二〜三日、9/26 PM10:00 NHK教育TV で放映された番組をビデオで繰りかえし見ていましたが、この本は重い内容を持っています。彼は否定的に書いていますが、最終的に受ける印象では,暗に肯定しています。CFRの機関誌「フォーリンアフェイアーズ」が裏表紙に最高の賛辞を送っていることからして、新世界秩序=ワンワールド主義者の教本となるべく仕組まれた本なんでしょう。

 
9/26 PM10:00 NHK教育TV
あらわれた世界新秩序〜「帝国」の思想をめぐる対談
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「Empire」 Michael Hardt & Antonio Negri
「帝 国」 アントニオ・ネグリ著 2000年ハーバード大学出版

=====WORLD ORDER ”世界秩序”======

「帝国」の概念は、古代ローマまでさかのぼる-----
ヨーロッパの伝統(European tradition)から生まれた概念である。
ただ一人の指揮者によるグローバルなコンサートにも擬せられる。
「帝国」の秩序維持(guarantee of justice for all)のため----
外の野蛮人(barbarians)や、内なる反逆者(the rebellious)に対して
「正しい戦争」(”just wars”)を行う権限が与えられる。

アントニオ・ネグリ氏
「悪を名指ししようとする風潮の中で、あらゆる危険な要因が見落とされています。国際法も外交による調整もほとんど機能していません。今日の状況を、私は「帝国」と呼んでいます。グローバルな権力が新しい秩序を構築しようとしているのです。反テロリズム法は、戦争と同様に新しい秩序を作り出す役割を果たしています。」

「帝国」の政治形態
         ▲
    /  G7はじめ先進国   \
     /    多 国 籍 企 業 な ど    \
    /非先進国、メディア、宗教組織、NGO\
    --------------------------------------
   | マルチチュード(多数者・無秩序者) |
    --------------------------------------
 *マルチチュード=秩序にはまらない人々がが三分の二を占める。
  ローマクラブはユースレス・イーター(無駄飯食い)と表現しました。

 イタリアで実験された「帝国の秩序」がその悲惨さを際だたせます。1968年反政府デモ(左右両派に反対した初めての市民運動)を利用して、1969年に始まった政府の手で左翼を弾圧させる極右翼の市民をも巻き込んだ無差別テロ:「緊張の戦略」が、左翼の報復を生み、とうとう追いつめられた極左組織「赤い旅団」が政府要人のモロ元首相を暗殺までになりました。1978年反テロ特別措置法を制定、後に「鉛の時代」と呼ばれるテロと弾圧の陰惨な時代の幕開けとなったのです。反テロ特別措置法ではテロリストはもちろんのこと、そのテロリストの支援者も取り締まることが出来た。テロリストを密告すれば罪を減じる規定も盛り込まれていた。「民主的秩序保護法」のもとで予防拘禁、逮捕された者は一万人にのぼった。ネグリ氏も反テロ特別措置法を適用された一人だった。赤い旅団との関係を疑われて1979年逮捕。後にフランスに亡命したが、イタリアが依然として反テロ特別措置法の管理下にあることを証明しようとして帰国、再び逮捕、投獄。いまは仮釈放中の身である。

アントニオ・ネグリ氏
「“反テロ特措法”は砂漠を作り出しました。政治活動から一世代を欠落させたのです。今日のイタリアの状況はその結果です。政治指導者を失い、戦後の代表民主主義が終わりを迎えました。代償はあまりにも大きなものでした。70年代の“反テロ特措法”は、古い秩序を維持するためのものでした。しかし同時多発テロ以降に制定された“反テロ法”は、恐怖の蔓延した秩序を、新たに作り出す法律です。控えめに言っても、法律としての適正を欠いていると言わざるを得ません。憲法の枠を超えて作られた恐怖を利用した妖怪のような法律なのです。」


対談者 
東京外国語大学大学委員教授 西谷 修
大阪大学大学講師      酒井 隆史(訳者の一人)


【対談のまとめ】
 世界の1/3は三角ピラミッド型「帝国」組織に組み入れられ、残りの2/3はマルチチュードという新しい概念により仕分けされるとしています。「帝国」の出現とともに「帝国の衰退」が同時進行しているらしい。帝国の崩壊現象が、イラク攻撃に反対した英国での40万人デモ、またパレスチナでアラファト議長を殺害しようと試みているイスラエル軍の前にフランスの農民同盟のジョゼ・ポぺ氏や個人や少数のグループが人間の楯となって防いでいる姿にみることができます。マルチチュードたる人々は9.11事件によって、「暴力の前に人は平等である」ということに気が付いた。これが「帝国の衰退」始まりなのです。

 “メディア”とは、「帝国」の組織や諸々の機能は様々に分散しているわけですが、それらをつなぐ接着剤の役割を負うことになるそうです。またあらゆる階級・レベル・経済・軍隊・国民を繋ぐ“接着剤”であり、従来の“メディア”が持つ意味での「権力をチェックし規制をかけていく役割」を放棄しつつある。メディアが放つスペクタル(見せ物)、9.11もスペクタルの一種なんですが、権力から身を放していたメディアが、権力組織者としての役割を果たしていく事になろう。同意を獲得して現実を作り上げていく。
ブッシュ大統領が議会でちょっと漏らした言葉なんですが、「ドグマ主義」と呼ばれる絶対的正義と真実に対する追求の弱さ「真実なんて知りたくない」という絶対的「シニシズム(冷笑主義)」が相まって、「うまく騙して欲しい、自分たちの秩序を守って欲しい」という仮想現実を作り出されていく。これがメディアの役割になってくるのです。

 この「帝国」では「交渉の抹消」が唱われ、代表する声を持たない人々がどんどん増えていく。そして新しいセキュリティシステムが作り出され、銃口が向けられることになる・・・
 今後、グローバル経済が発展していくときに、第三世界や発展途上国に対しては、世界銀行やIMF、WTOという国際機関が非常に大きい権力を持ち、従来の国民国家は無力化され、この流れ(ピラミッド階級化)を規制できない。つまりグローバル・エコノミーに入っていける層は選ばれた1/3だけであり、2/3ははじき出されるわけです。堕ちていくということです。「帝国」が、2/3のマルチチュード達へ用意された道のりとして「底辺の競争」の中で喘ぐことになる。下へ下へと向かって競争していく。このためには、安全保障体制のなかで抑え込まなければならない。危険要因を取り除かなければならないと考えているわけです。
 

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