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ジン・ネット高世仁氏の抗議(『動向』2001/3)・抄 投稿者 YM 日時 2002 年 9 月 29 日 00:18:36:

(回答先: 拉致関連文書アーカイブ・和田関連 投稿者 YM 日時 2002 年 9 月 29 日 00:13:05)

『動向』2001/3
和田春樹「日本人拉致疑惑を検証する」論文に重大な誤り
ジン・ネット代表
高世 仁


和田春樹日朝国交促進国民協会事務局長の雑誌「世界」(岩波書店刊)に寄稿した論文について、その中にも出てくるジャーナリストの高世仁ジン・ネット代表は和田氏に以下の抗議文を送りました。

私は、かつて日本電波ニュース社で報道部長を務め、現在は報道番組制作会社、ジン・ネットの代表をしている高世仁です。雑誌「世界」に載った和田さんの論文「『日本人拉致疑惑』を検証する」を読み、一言申し上げます。
安明進(韓国へ亡命した元北朝鮮工作員)証言の内容についての論点はたくさんありますが、私に直接関わるものに、横田めぐみさんの「えくぼ」の問題があります。私が安明進の本のゲラの段階で「えくぼ」の描写を発見して横田夫妻に知らせた経緯は、私の本に書いたのでご承知でしょう。「えくぼ」が印象的な特徴であったなら、後になってから証言に出てくるのはおかしいと和田さんは言います。しかし、記憶に強く刻まれていながら、それが最初に証言として出てないからといって、嘘だということにはならないでしょう。記憶は、さまざまな形で呼び起こされてくるものだからです。
安明進には十回近く取材していますが、えくぽの問題以外でも、「どうして先にそれを言わなかったのか」と、私自身、安明進に言ったこともありました。彼の答えは、「その質問をされていないから」、というものでした。記憶をたどっていく場合、まずは質問で方向づけられます。また、私の元工作員の亡命者を取材した経験では、余計なことを証言してトラブルに巻き込まれたくないという心理が働き、通常、聞かれてもいないことを自ら話すことはきわめてまれです。
ご両親はといえば、失踪直後にめぐみさんの特徴として挙げるのは、その日着ていた服や持ち物、身長、体重、髪型、顔の輪郭、体のアザなどであり、「えくぼ」を言い忘れることは不思議ではないでしょう。とくに父親の滋さんは「えくぼ」家系で、娘のめぐみさんに「えくぼ」があるのは当然すぎてかえって意識しなかったといいます。また、私の本に出した写真で分かるように、めぐみさんの「えくぼ」は、普段は隠れていて、大きく口の両端を頬のほうに引き寄せたときだけに現れるタイプの「えくぼ」です。母親の早紀江さんが、安明進の本で指摘されるまで思い出さなかったのは、そういう事情からであり、「えくぼ」自体が「見立たないもの」だからではありません。写真で分かるとおり、かなり深く大きく出る「えくぼ」です。
ご両親も気にとめないでいた「えくぼ」、警察もマスコミも知らないはずの「えくぼ」を安明進が知っていたということは、彼の証言の信悪性を高めるというのが自然な解釈ではないでしょうか。
「えくぼ」についてはもう一つ。化粧が濃いというのと「えくぼ」は、あまりに異なった印象を与えると和田さんは書いています。北朝鮮の人から見て、日本人の女性の化粧が濃いと感じられるのは、少しでも北朝鮮事情を知っていれば分かるはずです。そのことと「笑うと深く窪んだえくぼは、見る人に心優しい印象を与えていた」(『拉致工作員』一三五頁)ことが矛盾するということにはならないはずです。むしろ、この安明進の表現は、めぐみさんの「えくぼ」の特徴とよく合致します。和田さんの「想像力」のほうに問題があるように思えますが、いかがですか。
安明進の証言内容には、教官から聞いた部分と自分が見た部分とがあります。非常に若い日本人女性をニイガタから自ら連れてきたと教官が語り、安明進の目撃した女性の「えくぼ」を含む外見がめぐみさんと一致します。そして拉致年代、女性の年齢、身長その他はめぐみさんのそれらと矛盾しません。一方、石高健次論文に載った亡命者は、「双子」、「バドミントン」、「十三歳」、「中学生」など安明進の証言内容とは重複しない情報をもたらしています。彼は安明進とは別人であり、総合すれば、めぐみさんが北朝鮮に拉致されたということは、きわめて高い確度で推定しうるのではないでしょうか。
さて、和田さんが特に問題にしているのは、これらの証言が明らかになる過程です。そして論文の中でも、この部分には、非常にたくさんの事実誤認が見られます。しかも、単なるケアレスミスではなく、当然確認すべき重要な事柄を、しかも電話一本ですぐに問い合わせることができるのに確認せずに、恣意的に「推測」したうえでの誤りが多いのです。いわば「重過失」ともいうべき悪質な誤りです。なかには、考えたくないのですが、ひょっとしたら意図的に事実をねじまげようとしているのではないかと感じた個所さえありました。
(中略)

和田さんもやはり、このブレイクの経過に重大な疑惑を匂わせていますが、その記述から首をかしげざるをえない例を(たくさんありますが)ちょっと挙げてみましょう。二月号で和田さんは、佐藤勝巳さん(北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会会長、現代コリア研究所所長)の役回りに異様に力を入れて書いています。佐藤さんは初めから事情をすべて知っていたのに、わざと黒子の役に徹してブレイクする過程全体をコントロールしたという印象を与えています。一四八頁では、兵本建吉さんは横田滋さんに対して意図的に佐藤さんの関わりを隠したことになっています。明らかに陰謀があるかのような書き方です。
その前提となるのは、兵本さんにファックスで知らせた「知り合いの方とは、佐藤氏のことであろう」し、兵本さんは「石高情報も佐藤氏の発見も、現代コリアのホームページのことも知っていた」はずだという推測です。ところが、この「推測」がそもそも的外れなのです。私の取材では、兵本さんに「新潟日報」記事のコピーを送って知らせたのは佐藤さんではなく、関西在住のKさんでした。そして兵本さんは日銀のOBに接触し、横田滋さんの居場所をつきとめます。和田さんは、新聞記事には滋さんが「銀行員」としか載っていないので、兵本さんが日銀OBにコンタクトすることは不自然だと見ます。たしかに、二十年近い年月が経っていますから、九七年初めの時点では、古くからの新潟市民でも、「横田めぐみさん」という固有名詞を覚えている人は殆どいなかったでしょう。
しかし、「日銀職員の娘さんが行方不明になったあの事件」として記憶している人ならたくさんいたのです。新潟市在住の小島さん(「救う会」代表)などもその口でした。「日銀」というキーワードを得るのは難しいことではありません。兵本さんが関係者に二、三本電話を掛ければ当然知るはずの情報であり、実際、兵本さんはそうしたのです。
悪質なのは、横田滋さんが兵本さんを議員会館に訪ねたことを述べた後、「議員会館という場所は、情報に信憑性を付与するにはよい場所だ」などという思わせぶりな表現を挟み込んで、全体の経緯におどろおどろしい印象を与えるよう脚色していることです。
(中略)

私は、研究者もジャーナリストも、真実に限りなく近づこうとする同じ情熱に動かされている職業だと思っています。本や新聞に書いであることが本当なのかどうかを、当事者に確認することは必須の作業ではないでしょうか。事実確認するにはちょっと電話を掛ければよいのです。小学生でもできることなのに、和田さんはそれもせずに推測だけで書き、結果としてたくさんの誤りを冒してしまいました。これを何と表現するのでしょうか。単なる「怠慢」でしょうか。いや、ここまでくると単なる「怠慢」というより、和田さんは「見ザル」や「聞かザル」のように、事実を知りたくないのかもしれません。ひょっとしたら、和田さんには特殊な政治的な意図でもあるのでしょうか。大変失礼かもしれませんが、私にそうまで思わせるほど記述の誤りがひどいのです。
もし、私に話を聞きたいという要求があれば、立場が異なる人であっても、会ってきちんと説明したはずです。和田さんが論文で取り上げた他の人たちも取材に応じてくれたでしょう。なぜなら、和田さんの「推測」とは逆に、めぐみさん事件がブレイクする経緯には何の秘密も陰謀もないのですから。研究者であるなら、誠実に、あくまで一つ一つの事実を確認するという調査・研究の基本に戻って議論してほしいというのが、和田さんに対する私の要望です。


http://www.jin-net.co.jp/
ジン・ネット

緊急出版
北朝鮮の国家犯罪−拉致 高世 仁著
講談社文庫
590円(税別)
http://www.jin-net.co.jp/#takarajima

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