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(回答先: 飢餓で30万人死亡の可能性 アフリカ南部でと報告 投稿者 倉田佳典 日時 2002 年 8 月 08 日 20:28:10)
村上龍のメールマガジンJMMの金曜版に掲載される、秋山氏のコラムです。
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■ 『南からの声 ジンバブエ・レポート』 秋山寛 第23回目
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「遺伝子組み換え食品」
先日のジンバブエの新聞に次のような記事が載っていました。
「ジンバブエ政府は、アメリカからの食糧援助(トウモロコシ)をGMO
(Genetically Modified Organism遺伝子組み換え種)混入の恐れがあるため拒否し
ていたが、その決定を撤回したと援助関係者が明らかにした。(中略)
関係者によると、ジンバブエ政府は、当初、GMOではない1万8千トンのメイズ
(白トウモロコシ)と2千トンの他の食糧を求めていたが、アメリカはそれを拒否し、
ジンバブエ向けに用意した食糧は他の国に振り替えると述べた。(中略)
ワシントンのUSAID援助担当者は、同様に経済危機に陥っているジンバブエに
対し、GMOトウモロコシの受け入れを躊躇しているうちに、飢餓状況はどんどん悪
化することになると警告した。」
また、隣国ザンビアでも同様に旱魃による飢餓に苦しんでおり、大口であるアメリカ
からの食糧援助がGMOトウモロコシに限られるため、与野党間での論議をよんでい
ます。
ジンバブエでも遺伝子組み換え種子による栽培についてはいろいろと論議されてきま
したが、食糧という形ではGMOの問題はありませんでしたので、農業関係者の神学
論争的な議論に止まっていました。
ジンバブエ、ザンビア両国とも飢餓に苦しんでいますから、食糧はのどから手が出る
ほど欲しいのですが、長期的な健康に対する影響という直ぐには結論の出ない問題点
で、議論が行き詰まっています。というのも、この地域ではメイズ(トウモロコシ)
が主食ですから、一人当たり摂取量は格段に大きく、万が一影響があった場合、発生
までの期間の短さ・ダメージの大きさは欧米の比では無いのです。
また、援助物資として持ち込まれたGMOメイズが発芽しGMOフリーのメイズに混
入する可能性があり、将来、両国のメイズ(白トウモロコシ)が、外国から輸入を拒
否される可能性があるのです。また、ジンバブエでは牛肉も貴重な輸出品ですが、牛
がGMOメイズを食べる可能性があるため、輸入を拒否される可能性があります。
特に、大きな市場であるEUが、7月にGMOに関する新たな規制案を決定し、
GMO表示義務の対象が拡大され、GMOそのものだけでなく原料・飼料にGMOが
使用された場合も表示が義務つけられ、結局、輸入出来なくなるので両国とも神経質
にならざるを得ません。
援助する側のアメリカにもいろいろと事情があります。アメリカがお金でなく、トウ
モロコシの現物で援助をするのは、余剰農産物を政府が買い上げるという、一種の選
挙対策のためです。余剰農産物ということですから、EU等に輸出しにくいGMOト
ウモロコシが出てくるのは必然ですし、アメリカでは遺伝子組み換えの表示は行わな
いので、一般的には集荷されてストックされる段階でGMOとGMOフリーとは区別
がされず、現実的に分ける術がないという事もあります。
現在、妥協案として、GMOトウモロコシを製粉して発芽の可能性を無くして援助を
受け入れるという妥協案も囁かれていますが、コストの問題と長期的な影響、飼料と
しての問題は解決出来ません。
実際に飢餓に苦しむ人々を目の当たりにしている者として、GMO反対派の健康への
影響が不明等の意見には、長期的な健康への悪影響が発生云々という前に大量の餓死
者が発生することになってしまうと言いたくなりますし、GMO賛成派の断れない状
況でとにかく既成事実を作ってしまえ(若しくは人体実験を行え)というやり方にも
不快感を感じます。
ジンバブエが受け入れに合意するのも、間近ではないかと思います。もはや、抽象的
なイデオロギー論争の段階ではないからです。それは、対外的強硬派の代表であるモ
ヨ社会福祉大臣が受け入れ同意に傾いているということが何よりもはっきり示してい
ると思います。彼は偏執的に欧米拒否を貫いている対外強硬派のシンボル・リーダー
ですが、その彼が同意することの苦渋を考えると、責任ある決断とはなにかという事
を考えさせられます。
それにしても、強者の覇権争いに翻弄されるのは、弱者の定めなのでしょうか。
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秋山寛
早稲田大学卒。東京で情報通信・金融関係での勤務を経て、現在は、主として金融面
からアフリカ開発をサポートする業務のため南部アフリカのジンバブエ共和国ハラレ
在住。
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