(回答先: ■第1回 国家を超える市民パワー 〜国際政治に挑むNGO〜 〔NHK〕 投稿者 PBS 日時 2002 年 4 月 14 日 21:45:09)
1999年11月WTO閣僚会議(シアトル)、2000年9月IMF世銀年次総会(プラハ)、同年12月EU首脳級会議(ニース)、そして2001年7月ジェノバ・サミット。ここ数年、国際会議のたびに「反グローバル化」を掲げる市民たちが会場に押し寄せ、会議の行方に影響力を持つまでになっている。ジェノバ・サミットには10万人以上が結集し、現地警察との衝突で死者が出たことから大きな注目を集めた。インターネットを駆使して国境を越えた情報交換や動員が行われるのが特徴で、急進的活動家から穏健派のNGOまで、世界中からの参加者は様々。一連の動きは、国際政治のあり方に一石を投じている。
番組では、ヨーロッパを中心に数万人の支持者を抱える国際NGOの活動や、「もうひとつの世界は可能だ」を合い言葉に、世界各国から約6万人の市民が集まったブラジルでのNGOの集会などを取材した。
◆市民発の政策
フランス・パリに本拠地を置く国際NGO・ATTACは「世界を金融市場から市民の手に取り戻そう」を合言葉に1998年結成され、ヨーロッパを中心に39カ国に広がっている。投機的なマネーの動きを抑え込むため国際間の為替取引に課税をし、途上国の貧困解決に役立てようという「トービン税」の導入を提唱、その動向にはヨーロッパ各国首脳らも注目している。
◆インタビュー 市民には現状を変える力がある
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ベルナール・カッセン
ATTAC代表 フランスの月刊誌『ルモンド・ディプロマティック』編集長
ATTACは『ルモンド・ディプロマティック』に掲載された記事「市場を非武装化せよ」から生まれました。これは、金融市場の独裁に振り回されるのはやめよう、という意味です。すぐさま、何千人もの読者から物凄い反響がありました。それは何故か? 私達が世界の本当の支配者を正確に言い当てたからです。選ばれた政府には何ら決定権はなく、権力は金融市場にある。ではその市場とは一体何者なのか?誰の名のもとに金融市場が国の政治に指図できるのか?これが実態なのです。市民はこの事にすでに気付いていたのです。あらゆるメデイアが「グローバリゼーションは良い、自由主義は善だ」と言い続けてきました。20年間それが私達の頭の中に叩き込まれ、私達には何も出来ないと言われてきました。その結果は悲惨なものです。まず最初にできることは、市民には現状を変える力がある、と言うことです。市民がみずから、自分達の将来を決めなければいけません。
◆パリ23:00 カルティエ・ラタンの熱い議論
ATTACでは週に1回、カフェで自由な討論会を行っている。ネットで参加を呼びかけ、会員以外にも多くの人が飛び入りでやってくる。大学教授、サラリーマン、主婦、学生。職業も世代も様々な市民が国際政治について語り合おうと集まってくる。こうしたカフェでの討論が活動の基盤となっている。老若男女、普通の市民が自分の利益を越えて、世界のことを論じ合う。
「市場がすべてを決定する、私たちには何もできないと人々は思っていますが、私たちは、他の可能性があることを示しています。このまま黙って未来を迎えるなんて、まっぴらごめんです。娘には、人間を尊重しない世界で暮らして欲しくはないのです」──小学校教師
「私たちは、一人一人を見れば良き父親です。ところが知らない間に、途上国の10億人の農民を飢えさせるという恐ろしいことを犯してしまっているのです。これこそ、いま世界が抱えている矛盾です。まず、問題をしっかりと理解する。ささやかなことから始めなければなりません」──退職者
「これほど多くの人々が我々の仲間になるということは、それ以前には欠けているものがあったということです。組合や政党は人々の期待に応えられなくなっています。状況を変えようとしている人が他にもいると感じてうれしくなります。私たちだけではないのです」──高等師範学校の生徒
「私たちは耐えることにうんざりしていますし、子供たちの運命を自分たちの手に取り戻したいと思っています。無法世界、無秩序な世界を残したくありません。他の国々にある不平等を見ると、これらの人々のために何かを絶対にするべきだと思います」──医師
◆国境を越えた市民たち
ポルトアレグレ・世界社会フォーラム
2002年2月、ブラジルのポルトアレグレ市で、「世界社会フォーラム」と銘打った巨大なフォーラムが開催された。世界123カ国から約6万人が集まり、4日間にわたって「もうひとつの世界は可能だ」を合い言葉に、地球規模で検討すべき数多くの課題について話し合った。市民たちが、セミナーやワークショップで発表した政策や提言は、途上国の貧困、環境破壊、遺伝子組み換え、アフガン問題など多岐にわたった。反グローバル化から始まった市民の運動は、「国際政治を自分たちの手で変えていこう」という声に高まっている。ポルトアレグレ宣言には、重債務国の債務帳消しやODAの引き上げなど、21項目の提案が盛り込まれた。