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”失言王”森喜朗会長は「暴走老人」か「老害」か 問題の本質を精神科医がズバリ指摘
https://dot.asahi.com/dot/2021020600019.html
2021.2.7 11:30 鎌田倫子 AERA dot.
東京五輪・パラリンピック大会組織委員の森喜朗会長
東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長(83)の失言問題。森氏は続投を表明し、関係者はこの問題の幕引きを図ろうとしている。それに対し、世間では「老害だ!」という声が絶えない。ただ、年齢をとらまえて排除する動きは「差別」ともいえる。では何が問題の本質なのか。映画監督であり、精神科医和田秀樹さんは、「感情の老化」と、いったん権力を握るとクビにできない「日本の組織のいびつさ」を指摘する。
* * *
――森会長が「女性が入ると会議が長くなる」と発言した問題が尾を引いています。相次ぐのが、森氏の存在が「老害」だという指摘。「もう83歳のおじいちゃんなんだから身を引くべき」という意見です。発言は問題がありましたが、「老害」という言葉は年齢差別ではありませんか?
和田氏(以下、敬称略):確かに、年齢だけをとらまえて組織から排除することは差別です。問題は、83歳という年齢自体にあるわけではないと思います。確率統計的に加齢による変化は語れますが、個人に当てはまるとは限らないからです。
――加齢とともに判断力が衰えるので、高齢の森氏は辞任すべきとはいえないのでしょうか。
和田:優秀で高齢で活躍している人は海外にたくさんいますよ。かのピーター・ドラッカーも90代まで現役でした。
現在、米国でもEUでも年齢差別は法律で禁止されています。性別や信条と同様、年齢を理由に不利益を被るというのはあってはならないことなのです。米国では1967年に「雇用における年齢差別禁止法」が成立しました。例えば、日本では求人広告には性別の条件をつけてはいけませんが、米国では年齢の条件をつけることもできません。
一方で、非常にアメリカ的だなと私が思うのは、能力による区別は差別ではない、ひらたく言えば能力差別は許される、という点です。
日本人にはなじみの薄い考え方かもしれませんが、数年前に医学部の大学入試で、女性と多浪生に対して不適切な採点をしていたことが問題になったニュースを思い出してください。年齢差別が許されないならば、同じ点数であれば、18歳の男性も40歳の男性も合格させなければいけないのです。
医学部入試の差別問題では、「医師になってから若い人より活躍できないので年齢も考慮すべきだ」、「女性は出産・育児を理由に当直から外れることが多いので仕方がない」といった声もあり、理由として納得した人が中にはいるかもしれません。しかし、例えそのような統計データがあったとしても、個々人に当てはまるかどうかは別の問題。少なくとも米国ではそのような考え方が「正しい」とされます。
年齢であれ、性別であれ、予測はバイアスなんですね。何か不都合が実際に起きたり、実力に差が出たりした時点で処遇を変えればいいことなのです。
――なるほど。83歳という年齢だけをとらまえて、存在が害だと決めつけるのは乱暴だというのはわかりました。しかし今回、予測ではなく実際に問題が起きました。発言を撤回したとはいえ、公の組織のトップが「女性蔑視」の発言をしたというニュースが世界中を駆け巡り、批判にさらされています。
和田:そこが今回の問題の本質です。日本の組織は、いったん権力を握ったり、ポジションを得たりして、「実力者」になると、クビや降格にされにくいシステムなのです。日本社会のシステムのおかしさが、今回の問題で露呈したのです。
大企業にはいまだに年功序列が色濃く残っています。日本の終身雇用は社員が忠誠心をもって働けるシステムともいえるし、一般労働者の雇用の安定につながるのでいい面もあると思いますが、長く組織にいた方が評価される年功序列の慣習には疑問を感じます。少なくともトップが固定化することに関しては、問題だと思います。もちろん中には実力があってトップに居続けるべき人もいますが。
これは日本のあらゆる組織にあてはまることで、私が身を置く医学界も例外ではありません。日本の大学では医学部教授の言うことがいくらおかしくても、医局員は逆らうことはできない。「先生まずいですよ」なんて言ったら飛ばされるだけです。
ですから、研究もバリバリして、優秀な40歳の医師が大学教授の役職につくことはまれなのです。現職教授の退官を待たねばなりませんから。欧米は違います。海外では教授になることは研究の本格的なスタートラインに着くことを意味しますが、日本は「上がり」のポジションなのです。これは、はちゃめちゃなシステムなんですよ。
今回、関係者は誰も森さんに逆らえないでしょう? 間違ったことをした偉い人に逆らえないシステムはやはり問題だと思います。公的な性格のある組織は、トップは固定化せずにやめさせることができるシステムを作らないといけない。
――今回、森氏はなぜあんな“暴論”を吐いたのでしょうか。社会のシステムだけに原因があるのでしょうか。「暴走老人」に例える報道もありました。
和田:脳の前頭葉という部分の機能が低下すると、感情のコントロールがしづらくなることがわかっています。もちろんこれにも、個人差はあります。いわゆる「暴走老人」はカッとなったときに感情が止められない人。市役所などで高齢の市民が職員を延々と罵倒している場面に出くわしたことはありませんか?
暴走老人は普段は「いいおじいちゃん」が多いんですよ。感情を止められなくなるというだけで。森さんの釈明会見を見ましたが、不機嫌ですが比較的自制か効いており、「暴走老人」とまではいえない気がします。
ただ、加齢によってもともとの性格が先鋭化することは珍しくありません。もともと疑り深い人が高齢になると猜疑心の塊のようになったり、偉そうな人が年齢とともに横柄な態度が目立つようになったり、逆に気遣いができる人はよりいっそう他人に丁寧に接するようになったりします。森さんは、もともとと失言が多かった人ですよね。80代から性格の先鋭化は進みますから、急に変わったというより、森さんのもともとの性格が際立ってきたのかもしれません。
――和田さんは、超高齢社会の日本において「感情の老化」という概念を提唱しています。森氏の問題も感情の老化と関係があるのでしょうか。
和田:多くの人は知能の老化を気にします。脳トレなどに励むのもそのためです。しかし、実は意外と知的な作業は加齢による変化の影響は少ないのです。本を読み、内容を理解する、計算をするといった能力は加齢で変化しくにくいのです。
それよりも、自覚しないとどんどん進んでしまうのが「感情の老化」です。感情の老化とは、異論を認めない、未知のものに対応する能力が落ちてくる、感情のコントロールが利きにくいといった変化です。加齢による前頭葉の変化が影響しています。同じ著者の本ばかり読む、行きつけの店にしかいかない、同じ趣向の服ばかり着ているといった行動に表れてきます。
では、感情の老化はどうやって防ぐか。敵方と議論を戦わせるというのが脳の老化防止にはとても効果的です。蓮舫さんや辻元清美さんのような手ごわい相手とときどき議論するのはいいと思います。四六時中だとしんどいかもしれませんが。
森さんも周囲をイエスマンばかりで固めるよりも、自分の考えに異論を唱える相手を積極的に組織の中に入れた方がよっぽど脳の老化防止に役立ちますよ。
(聞き手/AERAdot.編集部 鎌田倫子)
■和田秀樹(わだ・ひでき)/1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、精神科医・臨床心理士。国際医療福祉大学心理学科教授。和田秀樹こころと体のクリニック院長。和田秀樹カウンセリングルーム所長。一橋大学経済学部非常勤講師。川崎幸病院精神科顧問。映画監督としても活躍。『東大医学部』『「コロナうつ」かな?』『感情の整理学』『「感情の老化」を防ぐ本』など著書多数。
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