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コロナで保健所崩壊 「土地勘なし」の委託業者でトラブルも
https://dot.asahi.com/wa/2021012000050.html
2021.1.22 08:02 井上有紀子
コロナ禍の中で対応に追われる保健所の様子 (c)朝日新聞社
愛知県内の会社員女性(28)は2020年12月中旬、新型コロナウイルスの陽性が判明し、自宅療養になった。ぜんそくの基礎疾患があるからか症状は悪化。熱はすぐに38度以上になった。呼吸も苦しい。
1日目、保健所の職員が「症状どうですか」と電話をくれた。「しんどいです」「呼吸が苦しい」と伝えたが、職員は「若いから大丈夫ですよ。ぜんそくが悪化したんでしょう」と言うのみだった。2日目、女性は「これまで付き合ってきた疾患だからわかるんです。これはぜんそくではない」「せめてぜんそく用の薬を処方して」と訴えたが、職員から「公共交通機関を使わず、病院まで来られたら」と無理な条件を提示された。3日目、貸し出された機器で測定した血中の酸素量が危険な値まで下がった。「数値が下がりました。入院させてください」と訴えたが、職員は「まだしゃべれるなら大丈夫ですよ」。4日目、意識がもうろうとし始めた。「死ぬってこういうことなのかな」と、訴える気力もなかった。同居人が「もう許せない」と心配と怒りで交渉し、やっと入院できたが、症状はかなり悪化していた。
12月中旬といえば「Go To トラベル」の停止がようやく決まった時期。この間、コロナ医療の最前線では、こうした“崩壊”が始まっていた。中国地方の県庁所在地に住むフリーランスの50代女性が語る。
「微熱があるので県のコールセンターに電話すると、『かかりつけ医に診てもらい様子を見てください』と繰り返すのみ。『かかりつけ医がいない』と言っても、『こちらでは紹介できない』と、冷たくあしらわれました」
コールセンターとは「受診(発熱)相談センター」(以下、センター)のこと。コロナ禍初期に各都道府県の保健所などに設置された「帰国者・接触者相談センター」の後身で、昨秋の改名とともに保健所の負担軽減などのため多くの地域で民間業者に業務を委託するようになった。かかりつけ医のいない住民は感染が疑われる場合はここに電話することになっている。スタッフが電話で症状などを聞き取って病院の発熱外来や検査ができる医療機関を案内する仕組みだ。
だが、新体制が整う間もなく第3波が襲った。東京都の場合、12月中旬に1日あたり1千件前後だった相談件数が年末には2700件超に急増。状況が急変する中、現場ではトラブルが続いている。京都民主医療機関連合会(京都民医連)の松田貴弘事務局長が言う。
「11月末に発熱や嗅覚異常があった知人がセンターに電話すると、『府の医療機関紹介サイトで自分で調べて受診するか決めてください。しんどい場合は救急車を呼んで』と対応され、困っていた」
京都民医連が11月から12月にかけて加盟病院の一つで発熱外来の予約者に「予約した経路」を尋ねたところ、医療機関の紹介が38%、かかりつけ医の紹介が36%、自力で探した人が20%で、センターや行政からの紹介は5%にとどまった。
「検査医療機関にたどり着けるのは、かかりつけ医から『あそこの病院ならPCR検査をやっているかも』と口コミを聞いたり、救急車で運ばれたりした人が大半。相談センターが機能していない」
京都府健康対策課は本誌の取材にこう話した。
「11月の運用開始当初は体制が確立しておらず『府のサイトで探して』と伝えることがあったかもしれないが、今はない」
京都府のセンターは庁舎内にあるが、電話の先が県外、という都道府県もある。石川県では12月、県議会の質疑でセンターの業務が東京都に本社を置く企業に委託されていると判明し、地元紙の1面で報道された。質問をした佐藤正幸県議が語る。
「民間委託したとは聞いていたが、センターは県内にあると思っていた。地域の医療体制の実情を踏まえているのか、一抹の不安があります」
昨秋までの「帰国者・接触者相談センター」は県内の5保健所が運営しており、県民からすると「顔の見える相談体制」だったが、民間委託を機にがらりと変わった。
「地名が似ていても実際はひと山越える土地もある。家から遠い医療機関を紹介された人もいるようだ。県外の人に地域の細やかな事情がわかるのか」(石川県の関係者)
首都圏で勤務するある保健師は、民間委託についてこう語る。
「地域のどこに診療所があり、どこの先生が柔軟で受け入れてもらいやすいかなど、地元の細かい事情を知り尽くした保健師が紹介したほうがスムーズなのは間違いない。委託先の業者はコールセンターのプロでも地元事情は知らないから難しいところもあるのでは」
なぜ県外の企業に委託するのか。県健康推進課は本誌の取材にこう話す。
「信頼できる実績があり専門職も所属しているような、条件に合う業者はなかなか県内にはない」
行政とセンターとの情報共有はきちんとされているのかを尋ねると、
「センターには医療機関の住所や電話番号が載ったリストを渡し、当番医の情報も提供している。感染情報は逐一知らせていませんが、ホームページなどで把握しているはず」(県健康推進課)
そもそも業務を民間に委託せざるをえないことには、保健所が別の業務に追われていることが関係している。ある都道府県の幹部がこう語る。
「感染の急増で負担が増えている保健所が積極的疫学調査に集中できるようにするためには、民間委託が必要なんです」
積極的疫学調査とは、感染者の濃厚接触者を特定して感染経路を明らかにしていく、いわゆるクラスター対策のことだ。
全国保健所長会の内田勝彦会長(大分県東部保健所)はこう語る。
「コロナ禍で一番力を入れてきたのが、積極的疫学調査。陽性者にこの2週間の行動履歴を1日ずつさかのぼりながら聞きます。『どこで誰と会いましたか』『そのときどれくらい離れていましたか』『マスクをしていましたか』『マスクの素材は』などと聞くので1件につき30分から1時間くらいかかります。そこで洗い出した濃厚接触者に連絡をして、検査を求め、行動自粛を要請する。感覚的には8割くらいの労力と時間を使っている気がします」
どれくらいの労力がかかっているのか。
「保健所はもともと、結核の疫学調査に対応できる人員を確保していた。結核の新規感染者は全国で1日40人ほど。一方、コロナの新規感染者は6千人以上。全国平均でコロナ前の労力の150倍が必要なんです」(内田会長)
大分県東部保健所も増員態勢にしているが、調査は深夜に及ぶという。
「都市の保健所では本来の疫学調査の半分もできていないと思います」(同)
こうしたクラスター対策への固執を改めるべきだという指摘もある。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師が話す。
「コロナ対策の根拠となる感染症法では、感染者が確認されると濃厚接触者を割り出して検査を受けさせる『クラスター対策』が求められている。保健所はこの業務に時間を割かれていますが、無症状患者がいるとわかった時点で、この方法での封じ込めには無理があった」
検査で陽性となった人を起点にした調査では、無症状患者が感染を広めている経路は把握できない。そうして市中に感染が広まってしまった以上、もはやクラスター対策は機能しないというのだ。
「保健所職員は目の前の人のケアをすべき。受診の相談をコールセンターに委託するなら、聞き取るだけの濃厚接触者の特定も外部委託やAIでできるはずです」(上医師)
実際、ニューヨーク州で民間事業者が協力して濃厚接触者の特定を行っている例もあるという。
前出の内田会長も本誌の取材に、クラスター対策の限界を認めている。
「感染が広がっていない地方では何とかすべての濃厚接触者を追えますが、緊急事態宣言が出ているような都市部ではすでに追えていないと思います。都市部の保健所は、濃厚接触者の特定に力を入れることをやめ、新たなフェーズに入っていくでしょう」(内田会長)
1月12日には首都圏1都3県の知事が菅首相らと会談して、濃厚接触者の調査を重症化リスクの高い高齢者に重点化するなど基準の明示を要望したが、16日現在、国はまだ方向性を示していない。ここでも、菅義偉政権の「後手後手」がネックになっているのだ。(井上有紀子)
>>【後編/“コロナ放置”の自宅死を防ぐには もう保健所はあてにならない?】へ続く
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