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※2021年1月22日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※2021年1月22日 日刊ゲンダイ2面
【菅政権に頼っていたら命はないぞ】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) January 23, 2021
日本は もはや「無政府状態」の自覚が必要
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/2zpuNslhB9
※文字お越し
「このままではトリアージもせざるを得ない。助かる命に優先順位をつけなければならない」
日本医師会の中川俊男会長が20日の会見でこう言って危機感をあらわにしたが、既にその域に達しつつあるのではないか。
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急病人が救急車を呼んでも搬送先が決まらない“タライ回し”が急増、先月上旬と比べ2・3倍にもなっているのだ。全国主要都市の52消防本部の事例を集計している総務省消防庁によれば、今月17日までの1週間で計3317件に上ったという。
医療現場は悲鳴や苦悩に包まれ、それが連日、新聞やテレビで報じられる。患者の受け入れを求める救急隊員の切迫した声にも「受け入れられません」と断らざるを得ない医師のやるせなさ。「現場の努力では、もうどうしようもない」とにじませる悔しさ。業務過多でパンクしている保健所の職員は「今までのやり方では限界」と訴える。
中でも、自宅待機中だったコロナ陽性者が死亡した神奈川県は深刻だ。自宅療養者が増えすぎて職員の手が回らないため、1日2回、職員が電話をかける「健康観察」を見直すことを決めた。
電話連絡は容体の急変を察知するのが目的。40代以上の自宅療養者の見守りに重点を置くため、これまでのように全員には電話をかけられないということだ。
黒岩知事は「誰かを切り捨てるわけではなく、リスクの高い人にはちゃんと対応する」と理解を求めたが、そもそもリスクの高い人が自宅療養している現状に問題がある。
神奈川県のコロナ病床の不足は危機的。これまで1939床としていた「最大確保病床」が現状は1078床にとどまっているため、実態に合わせて発表数字を減らすことを検討していると、21日の東京新聞が報じてもいる。要は、実際の病床使用率は、さらに逼迫しているということだ。
もちろん神奈川だけの話じゃない。感染者急増にともなう病床逼迫で、全国的に医療体制や行政対応が破綻状態なのである。
責任逃れ答弁に終始
ところが、この期に及んでも、菅首相の口からは出まかせばかり。「1カ月後には事態を改善させる」「国民の命と健康を守り抜く」なんて、誰が信じられるものか。楽観論にしがみつき、年末には感染者が減ると期待していたのはどこのどいつだ。
21日の国会の代表質問でも、野党議員から、爆発的感染や医療崩壊を招いた責任を問われると「適切に判断し、対策を講じてきた」と言ってのけるのだから唖然。PCR検査についても、「可能な限り拡充を図ってきた」と開き直る。検査を待つ間に急死した立憲民主党の羽田雄一郎参院議員の同僚議員が、「1日約5万件ではあまりにわずかだ。これで回るようになったと言える神経が分からない」と憤ったが、もっともである。
政治評論家の野上忠興氏が言う。
「菅首相の答弁からは、責任逃れに徹しようという姿勢しか見えません。冬場の感染拡大は予想されていたのですから、どうして事前にもっと準備できなかったのか。病院はクラスター発生を恐れている。経営にも直結するからで、そうした事情を考慮した対応も必要でした。コロナ失政で支持率が急落し、いまや菅首相は、思考力や集中力が欠如している状態です。焦りの裏返しが、河野大臣のワクチン担当指名。見え透いた人気取りなのは誰の目にも明らかです」
独断専行の末の官邸ガバナンス崩壊という醜態 |
菅は、ワクチン接種さえ始まれば、すべてがバラ色になるとでも思っているのだろう。21日の国会答弁でも、米ファイザーが開発したコロナワクチンの供給を受ける契約を正式締結したことに触れ、「全体として3億1000万回分を確保できる見込み」「感染対策の決め手になる」と強調していた。
ギョッとしたのは、「ワクチンを前提としなくても安全安心な大会を開催できるよう準備を進める」と、改めて東京五輪開催に意欲を示したことだ。ワクチンと五輪開催を関連づけられるのを嫌った言い訳なのか意味不明だが、菅政権がワクチン接種を急ぐ裏に五輪があることを、いまや多くの国民が感づいている。
内閣支持率の暴落で分かるように、世論はもはや菅というリーダーを信頼していないのだ。首相就任前から「コロナ対策が最優先」と言いながら、感染防止は二の次で、経済のアクセルばかりを踏み、利権絡みの「Go To キャンペーン」に固執。「エビデンスがない」の一点張りでマトモに説明責任を果たさず、感染拡大や医療崩壊を招いた。
そのうえ、大人数での会食が感染リスクだとしながら、自分は二階幹事長とともに高級ステーキ会食で舌鼓。そんなリーダーに、国民がついていけないのは当然だ。
それは霞が関の官僚も同様で、総務大臣時代に意に沿わない課長を更迭した際、「飛ばしてやったよ」と興奮するような人物が、7年8カ月の長期にわたった官房長官を経て、官僚の人事権を完全掌握しているのだから、周囲はイエスマンばかりになる。
本気で菅を支えようという官僚がどれだけいるのか。側近が諫言したり、菅に聞く耳があれば、「ガースー」発言のようなピント外れや「Go To」停止のドタバタは起きていない。官邸内のガバナンスが利いていない証左である。
ワクチン大臣と政府関係者が齟齬
そのひとつの象徴が元日発令の異例人事だ。首相の政務秘書官がわずか4カ月で交代。官房長官時代の秘書官だった財務官僚が再登板することになった。「菅首相には菅官房長官がいない」と言われたが、これまで通り、全てを独断専行で動かせると勘違いした結果が、いまの醜態なのである。
で、菅が起死回生の一手として繰り出したのが、河野行革担当相のワクチン担当相なのだが、さっそく混乱が起きている。政府関係者の話として「早ければ5月下旬にも一般向け接種を開始」と20日報じられたが、河野はこれをツイッターで否定。<勝手にワクチン接種のスケジュールを作らないでくれ。デタラメだぞ><新聞各紙が「政府関係者」なる者を引用しているけれど、全く根拠のないあてずっぽうになっている。信用しない方がいいよ>と投稿した。
担当大臣と政府関係者が齟齬をきたし、振り回されるのは国民だ。一体全体、この政府は何をやっているのか。ただでさえワクチン接種をめぐっては、1万カ所にのぼる接種会場、氷点下75度での輸送と保管、医師や看護師らの人員確保など、膨大な調整が必要なのに、この体たらくでは未曽有の大混乱になるのは確実だ。
政治ジャーナリストの角谷浩一氏がこう言う。
「ワクチン担当大臣なんて、本来は各省庁の調整役である官房長官か、自治体の窓口である総務大臣の仕事でしょう。ハンコ大臣にワクチン大臣をくっつけるのは、やってる感の演出でしかありません。官邸が機能しなくなり、自民党が菅首相を支えなければならない状態になっている。しかし皆で助けても、状況は改善することはなく、むしろ混乱の渦は拡大して、どんどんメチャクチャになっています。蚊取り線香の逆パターンで、官邸という渦の真ん中に火がついて、ぐるぐると広がっているような感じです」
1年以上続いてもまだ出口の見えないコロナ禍という有事で、国民にも官僚にも信頼されない首相が陣頭指揮にあたる。つまりは、この国はもはや「無政府状態」と言っていい。
怪しいワクチン“神頼み”政権に任せていたら、命がいくつあっても足りない。国民はその自覚が必要になってきた。
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