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菅総理は「空気が読めない」「能力に疑問」「闇内閣だ」…海外メディアからの“痛烈バッシング”が始まった!
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/78565?imp=0
2020.12.23 飯塚 真紀子 在米ジャーナリスト マネー現代
菅総理「ステーキディナー」を海外メディアは…
首相就任から約3ヶ月、就任直後は「イチゴ農家出身で叩き上げの苦労人」として世界でわずかばかりの脚光を浴びた菅義偉首相。しかし、その後、世界ではすっかり影が薄い存在となっていた。菅首相に関するニュースをすっかり報じなくなった欧米メディアだが、首相が銀座の高級ステーキレストランで開いた忘年会は別もののようだ。
それもそのはず、イギリスでは、4月、ジョンソン首相の上級顧問を務めるドミニク・カミングス氏が、ロックダウン中にもかかわらず、妻と400キロ以上離れたところに住む親族を訪問したことが発覚し、11月は、アメリカでも感染者数が激増しているカリフォルニア州の州知事ギャビン・ニューサム氏がフランス料理店で行われた誕生パーティーにマスクなしで参加していたことが発覚して大バッシングされた。
また、直近では、新型コロナウイルスに感染したことが判明したフランスのマクロン大統領が、7人以上での会食を控えるよう国民に呼び掛けていたにもかかわらず、十数人の政府高官らと長時間にわたって会食していたことも発覚した。
日本の菅首相も、規則破りの世界の政治家たちの仲間入りと相成ってしまったわけだが、欧米メディアはこのスキャンダルをどう報じたのか?
当然のことながら、まず指摘されたのは、これまで日本政府が強く訴えてきたことと今回の菅氏の行動の間にある矛盾である。
「菅氏は苦境に立たされている」
米紙ワシントン・ポストは“新型コロナウイルスのルールをバカにして無視しているステーキディナーで、日本の菅氏は苦境に立たされている”というタイトルで、日本の人々が政府のアドバイス通りにマスク着用、手洗い、人混みの回避などをきちんと行ってきたことを前置きしつつ、
「多くの人々が、菅首相がセレブや政治家と高級なステーキディナーを楽しみ、四人以上の会食は避けるという公式ガイダンスを無視したことを知って苦々しく思っている」
「ソーシャルメディアや至るところで、怒りが沸き起こっている」
と報じている。
ロイター通信も「大人数での集まりを国民に警告しているにもかかわらず、菅氏はいくつかの集まりに参加し、ソーシャルメディアや連立政権の政治家からも批判された」と報じた。
ブルームバーグ通信は「菅首相は新型コロナウイルス対策をめぐって支持率が下落し、高級ステーキディナーの集まりに参加したことで新たな批判が起きている」と指摘している。
折しも、菅首相はGoToトラベルの全国一斉停止を発表したばかりだった。国民が怒るのは当然のことだ。
菅首相はコロナ禍、自制し、我慢を重ねてきた国民の気持ちが理解できているのだろうか…? そんな疑問がわき上がる。
菅氏は「空気が読めない」…
ワシントン・ポストは、ディナーパーティーに出席した菅氏について「菅氏は国民のムードを読むことができないのだと確信した有権者もいる」としている。ムードが読めない、すなわち、菅氏は空気が読めなかったのだ。
“空気が読めない”ということで思い当たるのは安倍前首相である。安倍氏が緊急事態宣言の最中、国民が在宅勤務がままならずに苦しんでいる時に自宅でリラックスしている動画を投稿し、CNNから“tone deaf”=空気が読めない、と揶揄されたことは記憶に新しい。
2世首相の安倍氏とは違い、菅氏は叩き上げの苦労人の平民宰相であるから、国民の空気は読めるものと期待されていたと思うが、そんな期待は裏切られてしまった。むしろ、安倍前首相にして、この後継者あり、といったところか。
テンプル大学のアジア研究ディレクターのジェフ・キングストン氏は菅氏の共感心の欠如について、同紙でこうコメントしている。
「菅氏は良いコミュニケーターではない。共感力測定器のスコアはゼロで、嫌いな質問には無表情で答えたり、避けたりしている」
同紙は菅首相がコミュニケーション能力に問題があるとも指摘。
「彼のパフォーマンスには、政治的洞察力の点で疑問が感じられる。菅氏を批判する人々は、彼が8年間政府のスポークスマンだったにもかかわらず、コミュニケーション下手で、国会で弁明したり、パンデミックやリセッションと闘う有権者たちと繋がったりすることに四苦八苦してきたと話している」
日本人の「幻滅」
英紙ガーディアンも、菅氏は安倍前首相のスポークスマンを務めていた8年間は1日2回メディアに対応していたにもかかわらず、今では新型コロナウイルスの対応状況を国民に向けて毎日発信しなくなったこと、また、12月4日にようやく首相就任後初の記者会見を開いた遅さを問題視している。
つまり両紙とも、コミュニケーション不足により、菅首相は国民との繋がりが欠如してしまっているとみているのだ。
GoToキャンペーン自体も、ガーディガンは「世界でも、もっとも高齢化社会の一つである国は新型コロナの影響は比較的軽く済んでいるものの、菅氏がコロナ危機下、旅行をしてお金を使うよう人々に促したことは今では不適当にみえる」と疑問視し、新型コロナウイルスの第3波のために、菅首相は、通常、国の指導者が就任直後享受するハネムーン期間を享受していないという見方をしている。
「菅氏のハネムーン期間は新型コロナウイルスのため、ほとんど始まらなかった。首相に就任して2ヶ月、彼は、感染拡大と有権者の間で生じている幻滅と闘っている」(ガーディアン)
「菅氏は9月に首相になったが、新型コロナ感染の再拡大といつまで現職を維持できるかという疑問が提起され始め、国民のフラストレーションが高まる中、あまりハネムーン期間をエンジョイしなかった」(US News and World Report誌)
有権者の幻滅は、菅首相の支持率低下という形で明らかに現れている。支持率は首相に就任当初は60%を超えていたものの、最新の朝日新聞の調査では39%と3ヶ月で21ポイントも下落した。
欧米メディアは政治家としての情熱という点でも、菅氏を評価していない。この点で、菅氏と比較されたのがドイツのメルケル首相だ。
ドイツとの違い
ドイツは今年前半は新型コロナウイルスの感染拡大が抑止ができている国として、世界的ベストセラーとなった『銃・病原菌・鉄』でピューリッツァー賞を受賞したカリフォルニア大学ロサンゼルス校教授のジャレッド・ダイアモンド氏も評価していた。
ドイツの感染抑止が当初成功していた理由について同氏は「個人主義的側面よりも社会意識を重視している国民性」を指摘し、日本にも同様の国民性があることに言及した。個人主義、すなはち、個人の自由を重視するアメリカやオーストラリアと比べた場合、日本やドイツは社会秩序を守ることを重視しているため、お上の命令を順守する傾向が強いというのである。
お上の勧告に従って感染防止をし続けた日本とドイツ。しかし、新型コロナウイルスの収束が見られぬ中、両国の人々は社会秩序を守り続けるという忍耐力が限界に達してしまったようだ。今、両国の人々がコロナ慣れし、気持ちが緩んでしまっているために感染が再拡大している状況はそのことを証明しているように思う。
国民の緩んだ心に両国の指導者はどう対応したかというと、そこには雲泥の差があった。
メルケル首相は、拳を振りかざし、懇願するような眼差しで熱く訴えた。
「クリスマス前にたくさんの人と接触し続けることで、今年のクリスマスが祖父母と過ごす“最後のクリスマス”になるような事態は絶対に避けなくてはなりません」
ドイツの国民はそこから差し迫った危機感を感じ取ったことだろう。
2021年選挙への影響
一方、菅首相は先日行われた記者会見で冗談とも取れぬような笑うに笑えない一言を放った。「こんにちは、ガースーです」。その結果は、渋谷のスクランブル交差点を見ればわかる。今も多くの人々が危機感なく行き交っている。
この指導者にしてこの国民あり。国の指導者は国民の鏡だ。指導者が危機感を示さなければ、国民もそれを実感しない。
ワシントン・ポストはそんな両首脳の様子を比較してこう述べている。
「72歳の首相の記者会見でのぎこちない様子は、ソーシャルメディア上で、メルケル首相の情熱的な演説と好ましくない比較をされた」
ガーディアンも菅首相の情熱不足についてこう触れている。
「苦学しながら大学に通った農夫の息子の情熱は、9月に就任して以降、消滅したも同然だった」
国民の気持ちを理解しておらず、コミュニケーション下手で情熱にも欠ける菅首相。
気になるのは、そんな菅首相が来年の選挙にどんな影響を与えるのかだ。
「能力に対する疑問」「闇の内閣だ」…
欧米メディアは、同氏が選挙の際、自民党陣営に暗雲をもたらす可能性があるという見方をしている。
「菅氏が総選挙で自民党を勝利に導くことができるのか、彼の能力に対する疑問が党内で高まっている。ある自民党の高官は匿名で、自民党の候補者たちが選挙運動中、地元の選挙区に菅氏のポスターを掲げたがるか疑問だと話している」(ガーディアン)
「菅氏では自民党は勝てないと考える人が増えたら、首相の陣営は勢いを大きく失う可能性がある」(ロイター通信)
菅政権については、当初、実務型内閣になると言われていた。ところが、GoToキャンペーンを推進して経済を優先する中、新型コロナウイルス第3波の拡大を抑止できず、その果てには、国民の気持ちを裏切るような行動までとってしまった。
そんな菅政権の変わりようを、ガーディアンはあまりにも的確に表現しているように思う。
「菅政権は堅実な内閣としてスタートしたが、今では“闇の内閣”へと変わってしまった」
今、ツイッターでは、ハッシュタグ#菅やめろで、多くの日本人が菅首相を激しくバッシングしている。
“闇の内閣”は、国民の気持ちを理解し、国民の心に光を灯す内閣へと変わることができるのだろうか?
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