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さらなる日米軍事連携強化を要求 CSISが「第5次アーミテージ・ナイレポート」で対日政策提言
https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/19433
2020年12月12日 長周新聞
アーミテージ元米国務副長官、ジョセフ・ナイ元米国防次官補らが主導する米国の政策研究機関「戦略国際問題研究所(CSIS)」が7日、第5次となる対日政策提言「アーミテージ・ナイレポート」を発表した。「アーミテージ・ナイレポート」は米国の対日要求をまとめた「年次改革要望書」(民主・鳩山政府の時に廃止)を引き継ぐ提言で、日本政府が政策立案の指南書にしている。提言は「中国が安全保障上の最大の課題」と指摘し、敵基地攻撃力保有の具体化、日米間の軍事機密共有、思いやり予算(在日米軍駐留経費)交渉の早期決着、日米豪印(クアッド)の連携強化、米国の環太平洋経済連携協定(TPP)の復帰などを求めている。
日本を対中攻撃基地に 米国のTPP復帰も
リチャード・アーミテージ
「2020年の日米同盟」と題した提言は、前書き部分で「変革の功績の多くは安倍晋三前首相に与えられるべきだ。憲法第九条を長期間かけて再解釈し集団的自衛権行使を認めた。米国や他の志を同じくする国々と国際的に安全保障協力できる体制づくりを彼が主導した」「彼は中国の野心に対抗するためインド太平洋戦略の枠組みを作り上げた」と主張し、「日本の革新的でダイナミックな地域のリーダーシップは米国に利益をもたらす」とのべている。さらに「菅義偉首相がこうした方向で指導的役割を果たし、バイデン大統領と会うもっとも早い訪問者の一人となることを勧める」と太字で記載している。
そのうえで「日米同盟にとって最大の安全保障上の課題は、アジアの現状変革を試みる中国だ」「米国と日本は歴史上どの時期よりも双方を必要としている」と主張し、南西諸島の軍事力強化等、日米同盟の更なる強化を求めている。また中国に次ぐ安全保障上の懸念として北朝鮮情勢に触れ「短期的に非核化を目指すのは非現実的」「抑止と封じ込めが日米韓の優先事項となる」とのべている。
今後の方向性としては「マルチドメイン防衛力(陸海空だけでなく、宇宙・サイバー・電磁波を含む全領域の防衛力)」の構築を進めながら、反撃能力(事実上の敵基地攻撃能力)とミサイル防衛の強化に言及している。加えて英語圏5カ国のみで軍事機密情報を共有するネットワーク・「ファイブ・アイズ」(米国、英国、カナダ、豪州、ニュージーランド)に日本を含めるべきだと主張し、「日米両国はシックス・アイズネットワーク(ファイブ・アイズへの日本参画)にむけて真剣にとりくむべきだ」「これは同盟を強化し地域を構築する力だ」と強調している。思いやり予算交渉については「交渉をできる限り早く完了させるべきだ」と要求。中国に対抗する日本版NATO(北大西洋条約機構)形成に向けたクアッドの連携強化に関連して、韓国との関係を強めるよう求め、早い段階でクアッドの範囲を広げた「クアッド・プラス」形成を目指す意図をにじませている。
経済分野では、米国がTPPに復帰するよう要求し「日本とともに経済のルール作りを主導するうえで必要」と主張。デジタル分野のグローバル化や規制緩和を進めることに言及している。また中国の一帯一路に対抗するインド太平洋戦略とも関連して、新技術(5G、モノのインターネット、人工知能等)分野で日米間の連携を強めることを強調している。こうしたアーミテージレポートについて、発表翌日の8日、加藤勝信官房長官が記者会見で「政府としてしっかりと受け止めていきたい」とのべた。
今回のアーミテージレポートは2000年、07年、12年、18年に続く5回目となった。その内容は世界的なコロナ禍と相まって経済危機が進行し、朝鮮半島やアジア圏で米国が主導してきた軍事的・経済的な覇権が崩れていくなか、日本を米国の先兵として前面に押し出していく方向が色濃くあらわれている。
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