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原子力緊急事態宣言下の五輪に反対
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2020年12月10日 植草一秀の『知られざる真実』
昨年末、小出裕章氏が 『フクシマ事故と東京オリンピック【7ヵ国語対応】』 “The disaster in Fukushima and the 2020 Tokyo Olympics” (小出裕章著、径書房) https://amzn.to/2OAIdzO を出版された。 小出氏は 「私は自分の本を出すことに興味がなく、本を出すために文章を書いたことはない。 しかし、止むに止まれぬ思いで書いた文章を、多くの人に届けて下さるというお申し出はありがたいことと思う。」 と記している。さらに、 「筆舌に尽くしがたい被害と被害者が生まれた。 一方、原発の破局的事故は決して起こらないと嘘をついてきた国や東京電力は、誰一人として責任を取ろうとしないし、処罰もされていない。 絶大な権力を持つ彼らは、教育とマスコミを使ってフクシマ事故を忘れさせる作戦に出た。 そして、東京オリンピックのお祭り騒ぎに国民の目を集めることで、フクシマ事故をなきものし、一度は止まった原発を再稼働させようとしている。」 と指摘された。 小出氏はフクシマ事故の被害者を切り捨てて実施する東京オリンピックに反対の意思を明示された。 フクシマ原発事故はいまなお、まったく収束していない。 環境省が定める一般公衆の被曝上限の基準はICRP(国際放射線防護委員会)のガイドラインに基づいて年間1ミリシーベルトに定められている。 ICRPは1960年に一般公衆の線量限度を年間5ミリシーベルト程度とした。 この基準が長く続いたが、1986年4月のチェルノブイリ原発事故を受けて1988〜90年に一般公衆の年間被曝許容量を1ミリシーベルトに引き下げた。 この基準が現在も存続している。 1年間に20ミリシーベルトという被曝量は、「放射線業務従事者」に対して国が初めて許した被曝の限度。 「放射線業務従事者」だけが「放射線管理区域」への立ち入りを許される。 この「放射線管理区域」において許容される放射線被曝上限が年間20ミリシーベルト。 その「放射線管理区域」においては、放射線業務従事者であっても、水を飲むことも食べ物を食べることも禁じられている。 寝ることも禁じられ、トイレすらなく、排せつもできない。 小出氏は、 「ところが、国は、今は緊急事態だとして、従来の法令を反故にし、その汚染地帯に数百万人の人を棄て、そこで生活するように強いた。」 と指摘する。 コロナの緊急事態宣言は解除されているが、 「原子力緊急事態宣言」は発出されたまま、いまも解除されていない。 日本が「原子力緊急事態宣言」下に置かれているから、「放射線業務従事者」だけが「放射線管理区域」において許される年間20ミリシーベルトの被曝が一般公衆に強制されている。 フクシマ事故に伴う避難指示に関して、「避難指示解除準備区域」は「長期的に年間1ミリシーベルト以下」と定められていた。 ところが、安倍内閣は2015年にこれを、 「年間20ミリシーベルト以下に減少することが確実であると認められた地域は避難解除とする」 に要件を大幅緩和した。 その結果、福島県民は年間線量20ミリシーベルトの地域への居住を強制されることになった。 年間線量20ミリシーベルトの地域に住む住民には避難に伴う補償措置を講じないことにした。 年間線量20ミリシーベルトの地域に国民を居住させ、避難手当をすべて廃止した。 原発事故の被害者を放射能汚染地帯に棄てた。 年間線量20ミリシーベルトの土地に国民の居住を強制することは「原子力緊急事態宣言」の下でしか実現できない。 だから、政府は「原子力緊急事態宣言」を発出したままなのだ。 原発事故被害者を斬り捨てて五輪のお祭り騒ぎに興じる醜悪さ。 大阪地裁が大飯原発3号機、4号機の設置許可を取り消した。 原発の問題を曖昧に処理するべきでない。 原子力緊急事態宣言を発出したまま、年間線量20ミリシーベルトの放射能汚染地帯に被害者の居住を強制しつつ、オリンピックのお祭り騒ぎに興じることの意味を考えようとしないのか。 原子力緊急事態宣言下のオリンピック開催は原発事故被害者への冒とくそのものだ。 |
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