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※2020年11月14日 日刊ゲンダイ2面 紙面クリック拡大
【聞く耳持たぬ頑迷固陋】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) November 15, 2020
このままではGo To 地獄になる懸念
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/06lP7s1tjM
※文字お越し
連日、各地で過去最多の感染者数を更新。新型コロナウイルス“第3波”の勢いは猛烈だ。
全国の1日当たりの新たな感染者は13日、1700人を超えて、前日に続き2日連続で過去最多を更新した。地域や世代を超えて、急速に広がっているのは、政府が実施するGo To キャンペーンの影響だという見方がある。
欧州で最も死者数が多い英国でも、日本の「Go To イート」とよく似た政府の事業「Eat Out to Help Out(外食して支援しよう)」が感染拡大に影響を与えたという英ウォーリック大の調査結果が先月30日に発表されたばかり。このキャンペーンに参加した飲食店が多いエリアで顕著にクラスターが増加したという。しかも、キャンペーンによる経済効果は持続しなかったというオマケつきだ。
日本でもGo To キャンペーンの見直しや緊急事態宣言の再発令を促す声が出ているが、どこ吹く風なのが菅首相である。感染者数が過去最多になったことを受けてきのう午前、会見嫌いの菅が珍しく首相官邸で記者団の質問に答えたと思ったら、Go Toの見直しや緊急事態宣言について、「現時点において、そのような状況にはない」とわざわざ言うためだった。一方で、国民に対しては、「新型コロナウイルス分科会が提言した『飲食を伴う懇親会』や『マスクを外しての会話』など、感染リスクが高まる5つの場面を踏まえて、いま一度、基本的な感染拡大防止対策に努めていただきたい」と注文をつけたのだ。
見直しどころか延長で予算増加
観光支援の「Go To トラベル」を管轄する赤羽国交相も、きのうの会見で、来年1月末までを実施期間にしている「Go To トラベル」を延長し、予算枠を追加すると言いだした。
国民の不安が高まり、見直し論が起こっている最中に延長とは、この政府は何を考えているのか。「Go To」による感染拡大の懸念については、「国民はそうしたことを賢明に判断しながら利用していると思う」と赤羽は言っていた。
何でもかんでも国民の自己責任に押し付けて、新型コロナ感染拡大に何の対策も示さない政府を見ていると、菅が言う「自助」とは、こういうことかと合点するのだ。
西武学園医学技術専門学校東京校校長の中原英臣氏(感染症学)もこう言う。
「安倍政権も後手後手だったし、アベノマスクに代表されるような失敗だらけでしたが、少なくとも対策はしていました。それに比べて、現政権は何もしていない。菅首相が就任時に『新型コロナウイルス対応が最優先』『国民のために働く』と繰り返していたのは嘘だったのでしょうか。これだけ急速に感染が拡大しているのは、季節的な要因に加え『Go To』で人の移動が活発になっているからです。医師会も警告を発している。それなのに、頑迷に『Go To』の全国的な実施にこだわる神経が理解できません。せめて専門家の意見をちゃんと聞いて欲しいと思います」
日本医師会の中川俊男会長は11日の会見で北海道のコロナ感染者数が急増していることを憂慮し、Go To トラベルについて「急速な拡大の兆候が見られたら柔軟に見直しを考えていただきたい」と訴えていた。北海道はおととい、利尻島でクラスター発生が確認され、医療体制の逼迫に不安が広がっている。
強権発動で何をやっても許されると勘違い |
「もちろん、経済を回すことも大切です。しかし、政府は当初、新型コロナが収束したら『Go To』を開始すると言っていたはずです。それを収束前にスタートさせ、やってみたら感染者が増えているのだから、感染拡大を止めるためには、地域の状況に応じてGo To キャンペーンの実施を見直す必要があるでしょう。一部の人だけが恩恵を受ける『Go To』よりも、旅行する余裕もなく現場で頑張っている医療関係者への支援を手厚くして欲しいという声も高まっています。東京スカイツリーを青く点灯したり、自衛隊のブルーインパルスを飛ばすパフォーマンスでは医療崩壊を防げません。このままでは冬に向かって大変なことになりますよ」(中原英臣氏=前出)
冬場の感染爆発が危惧され、足元の対策が急務なのに、菅は来年の東京五輪が優先で、「何が何でもやる」とシャカリキになっている。
12日開かれた東京五輪・パラリンピックの新型コロナウイルス対策を話し合う調整会議の第5回会合では、大会時に外国人チケット保有者の入国を認める方向で、感染状況が安定した国や地域からの入国者は14日間の隔離措置を免除する方針が確認された。
その場合、公共交通機関の使用も原則認めるという。
また、五輪・パラに関連する国内での国際大会に出場する日本人選手と外国人選手の「入国後14日間の隔離措置」を緩和し、大会や試合に参加できることも認めた。「2週間隔離、公共交通機関不使用」を厳格化すると大会開催や観戦が困難になるというのだが、あまりにズサンな対応ではないか。五輪関係者にはウイルスも遠慮して感染しないとでもいうのだろうか。
必要な支援が弱者には届かない
「五輪の1年延期が決まり、緊急事態宣言を発令した春先よりも、今は感染者数が増えて急拡大している。日本以上に感染拡大が止まらない欧米各国を見ても、五輪開催なんて考えられる状況ではありません。カネのために無理やり開催して、感染が拡大したら、誰が責任を取るつもりなのか。政治の核心は国民の命と安全を守ることなのに、この政権は五輪ありきなのです。Go To キャンペーンにしても、グルメ予約サイトや旅行代理店の大手業者だけが儲かる仕組みで、国民生活そっちのけでオトモダチ企業に大盤振る舞いする姿勢は、安倍政権以上にひどいと思います」(政治評論家・本澤二郎氏)
そして、そのツケは必ず、国民に跳ね返ってくるのだ。“コロナ支出”を増税で回収することは、自民党内で既定路線になりつつある。
「コロナで仕事を失って、食うや食わずの生活を余儀なくされている人も大勢いる。そういう弱者には支援が届かず、さらなる増税で庶民を苦しめて大手業者の支援につぎ込むなんて、税金の使い方がおかしいでしょう。菅首相は、『Go To』は自分が始めた政策だから絶対に見直さないと意固地になっているのかもしれませんが、冷静な判断能力を失っているか、もともとなかったとしか思えません。あるいは、官房長官として安倍前首相を間近で見てきて、総理大臣になれば強権を発動できて、何をやっても許されると勘違いしているのでしょうか。金持ちに税金を投入して感染を拡大させているような無能政権に任せていたら、国民生活は“Go To 地獄”になってしまいます」(本澤二郎氏=前出)
アベノマスクに続き、Go To キャンペーンも世紀の愚策として歴史に刻まれることになりそうだ。
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