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※2020年10月21日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※2020年10月21日 日刊ゲンダイ2面
【目指すのは弱肉強食の分断社会】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) October 22, 2020
国民が知らない
菅義偉と竹中平蔵 最悪コンビのおぞましさ
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/r1Lqxa71h6
※文字起こし※文字起こし
「3大スガ案件」と呼ぶらしい。首相が掲げた目玉政策の「デジタル庁」「携帯電話料金の引き下げ」「不妊治療の保険適用」に関するニュースがあふれかえる一方、陰に隠れてあまり大きく報じられていない“重大案件”があることを見過ごしてはならない。
菅政権の弱肉強食の経済政策の方向性が明確になった肝いり人事のことだ。「成長戦略会議」や「内閣官房参与」のメンバーに新自由主義の規制緩和人脈がズラリ並んでいる。
成長戦略会議には、人材派遣会社「パソナグループ」会長でもある竹中平蔵慶応大名誉教授とITコンサル企業「フューチャー」の金丸恭文会長。2人は安倍政権時代の「未来投資会議」からの継続で、金丸会長は官房長官だった菅の名代として、農協改革などを主導した。新たに起用されたデービッド・アトキンソン小西美術工芸社社長は、元金融アナリストで菅の知恵袋の一人。赤字の中小企業の退場を主張する再編論者だ。内閣参与には、竹中に近い元財務官僚の高橋洋一嘉悦大教授が任命された。
とりわけ戦慄するのが、司令塔が竹中だということである。小泉政権で過度な構造改革を推し進め、非正規労働者を増やし、経済格差を広げた、まさに新自由主義の権化のような人物。竹中が総務大臣だった時に副大臣を務めていたのが菅で、2人は「師弟関係」みたいなもの。自民党総裁選で菅が打ち出した「自助・共助・公助」のフレーズも自己責任と競争社会の実現を訴え続ける竹中仕込みと言われたものだ。
竹中は安倍政権の7年8カ月の間、ずっと政府の経済政策の会議に席があった。だから「何も変わっていないのでは」と思うかもしれないが、それは違う。
安倍政権では当初、経済財政諮問会議の民間議員に就くはずが、麻生財務相に煙たがられ、格下の産業競争力会議のメンバーになった経緯があった。
それで裏でちょこちょこ我田引水の動きをして、規制緩和を仕切ってきていたのだが、菅政権になると「私が師匠です」とばかりに表舞台に出てきて、俄然、露出と存在感を高めている。
菅首相は「竹中教」の敬虔な信者
メディアのインタビューや取材も積極的に受けて持論を提言。「淘汰されるべき企業を残しておくと、将来的に日本経済の弱体化につながる」とアトキンソン氏同様の「中小企業ゾンビ論」を展開中だ。さらには、1人月7万円を支給する「ベーシックインカム導入論」も披露。代わりに、生活保護や年金を廃止して財源に充てると言って、「弱者切り捨てだ」と批判を浴びた。
揚げ句に、月刊「文芸春秋」11月号では、「コロナ禍で『東京問題』が浮き彫りになった」と、小池都知事を牽制して菅が使ったフレーズを繰り出し、「東京を米国のワシントンDCのような政府直轄地にせよ」とまで言い出した。
20日もBS11の報道番組に出演。「行政のデジタル化推進」も竹中の提言だとされるが、「デジタル庁創設の先の社会像が見えない」と質問されると、「まず各論ありきでいい。各論で具体的にやってみるのが政治のリアリズムだ」などとヌカしていた。
一緒に勉強会を開くなど、30年前から竹中を知る元参院議員の平野貞夫氏がこう言う。
「閣僚だった竹中氏に参院の委員会で『文明論の思想のない経済政策はダメだ』と質問したら、『すべて市場原理に任せればいい』と答えたことを覚えています。市場原理主義の『竹中教』という宗教みたいなもので、その宗旨は『今だけ、カネだけ、自分だけ』。経済的利益を追求できるものに狙いを定め、規制緩和を進める。そこに倫理観はなく、利用できるものは徹底的に利用するのです。そんな『竹中教』にすっかり心酔した『信者代表』が菅首相です」
安定した政権運営のために重要だと竹中が説くのが「アーリー・スモール・サクセス」だ。国民にとって身近で分かりやすい問題を取り上げ、それを突破口に改革を広げるというもの。実は菅は以前、「プレジデント」誌で連載していた「人生相談」で、「成功するためのコツは、できそうなことから始めて、実績をコツコツ積み上げること」と言っていた。だから国家観とは無縁のハンコ廃止であり、携帯電話料金引き下げなのか。いやはや、竹中教の敬虔な信者である。
理屈も理念もない「アーリー・スモール・サクセス」 |
「健全でフェアな競争が必要不可欠」「今の日本社会は既得権益層が自分たちの利益を生む規制をかたくなに守ろうとしている」――。竹中はこんなことも主張するが、どの口で、と言いたい。
竹中が規制緩和の名の下にこれまでやってきたのは、政府の会議を利用し、もっともらしい理屈をつけて民間導入を進め、新たな利権事業を作り出すこと。つまり、新たな権益層を生んでいるだけで、健全でもフェアでも何でもない。
その恩恵を受けてきた民間企業のひとつが竹中が2009年から会長を務めるパソナである。今回の成長戦略会議もそうだが、政府の会議のメンバーとしての竹中の肩書はいつも「大学教授」。パソナを“隠す”のは利益相反の疑いを自認している証左ではないのか。
実際、国家戦略特区で外国人労働者の家事代行サービスが解禁された際、政府のあっせん事業を真っ先に受注したのは、パソナグループの子会社だった。働き方改革の一環で導入された「残業代ゼロ」の高度プロフェッショナル制度も竹中の主張だった。雇用改革によって人材派遣会社の仕事が増えるわけで、利益誘導のそしりを免れない。
維新も絡む「国際金融センター」構想
菅が進める「地銀再編」にも竹中の我田引水のにおいがプンプンする。竹中はネット金融大手「SBIホールディングス」の社外取締役という顔も持ち、同社の北尾吉孝社長は地銀を糾合して「第4のメガバンク」を形成する構想を掲げているのだ。金融関係者によれば、菅と北尾社長も昵懇の仲らしく、今月10日の菅の首相動静にホテルでの朝食相手として北尾社長が登場した。
金融ジャーナリストの森岡英樹氏が言う。
「竹中氏、北尾氏、アトキンソン氏の3人が菅首相の経済指南役の中心人物になるのではないか。アトキンソン氏は米ゴールドマン・サックス出身なので、竹中氏とも親しい。竹中氏は成長戦略会議のメンバーという立場をテコにして、これまで以上に持論を実現させるために動くのでしょう。菅首相は経済界のパイプが弱いので『仲介役としてサポートします』という売り込みも増えているようです。経済政策が歪むのではと懸念しています」
怪しい話はまだある。菅・竹中・北尾社長のトライアングルに、「大阪維新の会」が絡む動きが見え隠れするのだ。
「成長戦略会議では『国際金融都市の実現』も議題となりそうですが、北尾氏は関西に国際金融センターをつくる構想を掲げています。吉村大阪府知事も同センターの誘致に意欲を示していて、北尾氏と維新はつながっています。竹中氏のパソナも兵庫県の淡路島に本社機能を移したばかりですしね」(森岡英樹氏=前出)
菅と竹中という最悪コンビのおぞましさは、今後、増幅の一途をたどることになるだろう。前出の平野貞夫氏が言う。
「菅首相は竹中氏のペースに完全に乗っかっている。竹中氏の言う『アーリー・スモール・サクセス』には理屈や理念はない。目先の食いつきやすい政策で支持率を上げて突っ走れば、大衆は付いてくると思っているのです。携帯電話料金の引き下げはその最たるもので、私の周囲でも『これで2000円くらい下がれば、消費税減税と同じ効果だ』と期待する声が聞かれます。しかし、資本主義のルールに反するような値下げ要求を、自身の人気取りに利用する政策を正当化するのは間違い。菅政権が長く続いたら、この国は大変なことになりますよ」
この事態を放置したら、格差と分断がますます深刻化し、取り返しのつかない暗黒社会になってしまう。
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