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はりぼての日本の黙示録的な現在、真犯人はどこにいる
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2020-08-22 八木啓代のひとりごと
今月のライブも中止となり、家にこもりがちの今日このごろ。
まだまだ日本の重症数は少ないと指摘する人もいますが、新型コロナの場合、重症というのは人工呼吸器をつける生命の危機レベルですので、重傷者が少ないから大丈夫そう、というものではありません。収まってもいないのに Go to Travel などと、そもそも英語としても政策としてもバツ印なことがのさばっているのが、今の日本です。
何かあったら罹った方の責任、民間のせいにされるのですから、たまったものではありません。
とはいえ、それでも外出したい気持ちになることはあります。
今週の最大の収穫は、映画「はりぼて」でした。
映画『はりぼて』予告編
https://haribote.ayapro.ne.jp/
富山で、市議十数人がドミノ辞任に追い込まれた汚職事件を追ったドキュメンタリーなんですが........
というと、地味な感じするでしょ? でしょ?
ところがね、それがあなた、違うんですよ。
はっきり言います。超絶、面白かったです。一分たりとも退屈しません。
以前、韓国の「共犯者たち」という映画を見たとき、すごくスリリングで面白かったと同時に、「なぜ日本ではジャーナリズムが、ここまでだめになったんだろう」と悲しいものがありましたが、「はりぼて」では、「日本でもできるじゃないか」と、希望の光を与えてくれます。
しかも、この手の映画って、重苦しい苦い気持ちにさせられることが少なくないのですが、これは違います。なんたって笑えます。テンポも軽い。そして、見終わったあとの爽快感もあります。しかも、良くやったね、お見事だったねの自画自賛ではなく、重い問題提起もきっちり置き土産にしておきながら、です。ドキュメンタリー系苦手な人でも、きっと楽しめます。監督のこのセンスは素晴らしい。
とはいえ、この追求、地方のローカル局だからできた、という部分もあるのでしょう。
それにひきかえ、NHK広島では、とうとう公共放送の公式ツイートで差別発言を垂れ流して恥じないまでになってしまっているのは、どういうことでしょうか。劣化という言葉がこれほどふさわしい事例はないでしょう。
一方、最近読んだ本で非常に面白かったのは、清水潔「殺人犯はここにいる」、海堂尊「コロナ黙示録」の2冊。
前者はノンフィクションで足利事件、正確には、北関東幼女連続殺人事件を追ったものですが、検察と裁判所が「いったん決めたことに関して、意地でも引き返さない」おそろしさが、これでもかと描かれています。足利事件のDNA鑑定に重大な疑問が出てきてもとことん無視。証拠に重大な矛盾があっても隠蔽。ついに検察側鑑定で違うDNA鑑定結果が出てきても「間違い」は認めず、やがて、本当の犯人らしき人物が明らかになってきても、真犯人をあえて野放しに....なぜなら.....という、すごい話です。
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私も、課外活動(笑)で多少検察問題をやっていますので、この「間違いを認めるのだけはぜったい嫌。謝罪するぐらいなら、凶悪な真犯人をのさばらせようが、無実の人間が何人死のうが、かまわない」的な検察の姿勢はよくわかります。てか、森友事件なんてのも、もろにそうですよねえ、皆さん。
そして、興味深いのは、これだけ地道な調査報道の書籍に、必死で「一つ星」つけて「荒唐無稽」と叩いている複数のレビューで、ぽろぽろ「検察用語」みたいなのが出ちゃっているあたり、どういう人が書いているのか見え見えで、検察関係者はほんとに読んでほしくない本なんでしょうねえ。
そして、そういう意味で、ある種の人達にとっては、読まれてはぜったいイヤな本、この大横綱として推したいのが、後者の海堂尊「コロナ黙示録」。これは7月に出たばかりの本です。
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海堂尊氏といえば、映画やTVシリーズとしても大ヒットの「チーム・バチスタ」シリーズの作者である大ベストセラー作家。去年もTBSの日曜劇場で二宮和也主演で「ブラック・ペアン」やってましたね。その、まさに「バチスタ」シリーズの最新作です。
北海道で救命医として活躍していた速水医師のもとで入院患者から病院内集団感染が起こって院内パニックに.......一方、豪華クルーズ客船でウイルス・パンデミックが発生し、厚労省役人の画策で「バチスタシリーズ」の主人公田口医師の在籍する東城大学病院が受け入れることに.......という、スリリングなストーリーです。
にも関わらず、この本、なんと出版直後に、Amazonに一つ星評価のバッシングが並び、なぜか5つ星評価のレビューに限って削除されるとか、投稿できないという奇妙な事態が私の知っているだけでも何件も発生。さらに人気作家の新作なのに、テレビも新聞も黙殺、というすごいことになっています。
そこまでつまらないのか?
でも、人気作家さんだけに熱心なファンなどもいるはずですから、ここまで叩かれ無視されるとはちょっとおかしいとは思われませんか? ましてや、発売直後の5つ星レビューが削除されるとか、投稿できないって???
で、その理由として推察できるのは、実は、この本、ものすごい政権批判的な内容なんです。
もちろん、今の日本政府のコロナ対策がアレですので、2020年の日本を舞台に新型コロナを描けば、そりゃあ政府の対応のとんでもなさが顕になるようなものになるのは仕方ありません。海堂氏は医師だけあって、執筆時点での欧米の医学雑誌の最新の研究論文なども踏まえて描かれるコロナ病棟の描写は迫真で、政府や厚労省のダメっぷりにはきわめて辛辣です。
さらに物語には、なんと森友問題を彷彿とさせる事件までからんできます。
黒川弘務氏に頼んで、公文書問題や背任問題を無理やり不起訴にして、メディアを抑え、強引な幕引きを図ったにもかかわらず、赤木夫人による遺書公開や提訴などでふたたび森友事件に光が当てられそうになっているこのタイミングです。これは....官邸としては、この本、絶対に絶対に売れてなんかほしくないでしょうねえ。(笑)
しかも、つい先日、内調がツイッターの政権擁護の極右アカウントに直接関わっているらしいことが、情報開示請求でバレちゃったりとか、Amazonがよりにもよって三浦瑠麗をCMに起用したと思ったら、政府の基盤クラウドを300億でAmazonに発注してたとか、香ばしさが満開な状態ですからねえ。
それにしても、政府の基盤クラウドをわざわざ海外企業に発注するって、どこまで頭おかしいんでしょうか? いくら日本が ITでは先進国の座からすでに滑り落ちたとしても、まだ富士通とかNECとかPanasonicとか、それなりの技術力がある日本企業は存在しているというのに、危機管理センス皆無としか言いようがありません。
そこまでして、政府批判本の5つ星を減らして目立たせないようにし、一方で、政府ヨイショ本や忖度本を「あなたへのおすすめ」に並べてほしいんでしょうかね。
というわけで、この映画一本と二冊、めちゃめちゃ面白いですので、おすすめです。(個人の感想です。)
よろしければ、ぜひ、率直な感想も、レビューに寄せられると、他の方のお役に立つかもしれません。
(現在は、5つ星レビューがことごとく削除されるとか投稿できないことはないようですが、皆さん各自でお試しください)
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