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吉村知事の危うい“人体実験” うがい薬騒動に専門家も警鐘
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/276962
2020/08/06 日刊ゲンダイ
わざわざ実物を手にして説明(左は松井大阪市長)/(C)共同通信社
4日、「嘘みたいな本当の話」と切り出し、ポビドンヨードを含むうがい薬で「コロナに打ち勝てるんじゃないか」と“ドヤ顔”で会見した吉村洋文大阪府知事。5日は一転「誤解がある」「予防薬でも治療薬でもない」と火消しに走った。たった1日で態度が変わった「イソジン吉村」が扇動する社会実験は極めて危うい。
◇ ◇ ◇
うがい薬の実証実験の対象は、府の宿泊利用施設に入居していた軽症者で、その数はたった41人。しかも「うがい薬でうがいした患者」と「うがいをしなかった患者」の2群にしか分けておらず、「うがい薬」なしでも「うがい」そのもので唾液中のウイルスが減った可能性もある。「うがい薬」の有効性を認めるのは早計だろう。
やりすぎるとコロナ以外の病気にかかるリスクも
実は、京大環境安全保健機構が公式HPに〈水うがいで風邪発症が4割減少〉との興味深いコラムを掲載している。同機構は2002〜03年、国内387人を「水うがい」「ヨード液(=うがい薬)うがい」「うがいしない」の3群に分けて追跡調査。1カ月当たりの風邪の発症率は、「水うがい」群が100人中17人に対し、「ヨード液うがい」群は23・6人。一方、「うがいしない」群は26・4人で「ヨード液」群と大差なかった。
さらに、〈ヨード液がのどに常在する細菌叢(微生物の集団)を壊して風邪ウイルスの侵入を許したり、のどの正常細胞を傷害したりする可能性が考えられる〉と記載。むしろ、うがい薬にはコロナ以外の病気にかかるリスクが高くなるという弊害もあるわけだ。
実際、研究に当たった専門家は冷静だ。4日の“ドヤ顔”会見に同席した「大阪はびきの医療センター」の松山晃文・次世代創薬創生センター長は、「(うがい薬が)体内のウイルス量を減らす効果はない」「さらに研究が必要だ」と明言。「ずっと使い続けると、のどを傷める」と、注意喚起もしていた。
それなのに「(うがい薬が)コロナに効くかもしれない」と目をギラつかせていたのが、吉村知事だ。会見の25分前から「“コロナ”治療 効果が期待できる薬 発表へ」とあおった読売テレビ「ミヤネ屋」も罪深い。テレビを通じて会見を見た庶民の「誤解」は当然。薬局に殺到し、うがい薬が店頭から消えたパニック後に、慌てて誤解を与えた張本人が「誤解がある」とは、どの口が言うのか。
「予防薬でも治療薬でもない」のに、接待を伴う飲食店従業員や医療・介護従事者などに「20日までポビドンヨードによるうがいを励行していただきたい」と勧めたのだから、ムチャクチャだ。
「トランプ発言」彷彿
ハーバード大学院卒で医学博士・作家の左門新氏(元WHO専門委員)はこう言う。
「ポビドンヨードを含むうがい薬は、使いすぎると口内のウイルスが一時的に死滅することで、PCR検査でウイルスを検知できなくなる恐れがある。結果、偽陰性の患者を見逃してしまうことも考えられます。吉村知事の発表は『消毒液の体内注射』を提案し、猛批判を浴びたトランプ米大統領の発言を彷彿させる。デメリットが大きく、広く府民に呼び掛けるのは危険だと思います」
吉村知事が進める「社会実験」は戦時中、生物兵器開発のため人体実験に走った「731部隊」のような悪夢すら想起させる。
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