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コロナ対策は長期戦略が不可欠 政府と都の政策は認識欠如 日本外交と政治の正体
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/274461
2020/06/12 日刊ゲンダイ
「東京アラート」発動で赤のライトアップになったレインボーブリッジ(手前は東京五輪マークのモニュメント)/(C)日刊ゲンダイ
東京都は5月末、緊急事態宣言の解除に伴い、社会経済活動の円滑な再活動に向けての4つのステップを発表した。ところが、その後、新たに感染者が増加。感染経路が分からない比率が高いため、「東京アラート」が発動されるという、ちぐはぐな事態になった。ただ、これは東京都だけではない。日本の新型コロナウイルス対策の初期段階からそうである。
安倍首相は2月28日の衆院予算委で「ここ1、2週間が極めて重要な時期」と説明していたが、日本で感染者が急増したのはその後である。安倍政権は各家庭に布マスクを2枚配布した。新型コロナ感染は数カ月間続いているが、各家庭に2枚を配っただけで、どうしろというのか。
新型コロナは短期で終息しない。この認識が政府、都の政策には欠如している。だから意味のない布マスク2枚配布という税金の無駄遣いをしたのだ。問題を整理する。
@日本の場合、徹底した検査がなく、感染者がどれくらいかわからない
A米国では、新型コロナ感染者中、35%が兆候を示さず、街で活動しているとみなしている。日本にも同程度の人の存在が予測される
B米国、欧州は終息していない。日本の感染が海外から来た経緯を考えれば、鎖国体制を取らない限り、海外からの感染者の流入は続く。そして、一般的には1、2年は継続するとみられるため、日本の終息も、国際社会の終息の動きとはかけ離れてできない。
はしかや天然痘、ポリオなどはワクチンがあるが、呼吸器系統のワクチンは開発が難しい。新型コロナに対応するには長期的視点に立ち、マスクの着用や社会的密着度を避けることしかない。
新型コロナ対策では、人命を守ることと、社会の機能を保つ、という2つの相矛盾する要請に応える必要がある。政治家が早期に解決したいとはやる気持ちは理解できるが、新型コロナはそうはいかないのだ。
新型コロナ「感染前」と「感染後」社会のありようは大きく変容した。「感染前」は当たり前だった行動も切り替えざるを得ない時期に来ているのだ。
その代表例はオリンピックであろう。世界の多くの国は今、新型コロナと戦い、そこにあらゆる資源を投入しなければならない時である、平和の祭典とはいえ、果たしてオリンピック開催の意義がどこまであるのか。朝日新聞が報じた読者アンケートの結果によると、「東京五輪の1年後の開催に賛成?」で「はい」が36%だったのに対し、「いいえ」は64%だった。
孫崎享 外交評論家
1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。
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