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黒川弘務東京高等検察庁検事長(当時)の「訓告」措置への批判が高まっている。この「訓告」は、国家公務員法上の正式な懲戒処分ではなく、内規による「指導監督上の措置」に過ぎない。
官僚から見れば、「あっ、そう」という程度で、かすり傷にもならない。
そんな甘い結果になったのは、内閣・安倍総理の責任なのか、それとも法務・検察の責任なのか。いろいろな解説が流された。
しかし、この議論はあまりにも馬鹿げている。
なぜなら、国家公務員法上の懲戒処分の権限は内閣だけに与えられているからだ。これは、二つの法律の条文で決まっている。まず、国家公務員法84条には、「懲戒処分は、任命権者が、これを行う」と書いてある。処分権限は任命権者にあるという意味だ。次に、検察庁法15条には、「検事総長、次長検事及び各検事長……の任免は、内閣が行い」と書いてある。「黒川検事長の任命権は内閣にある」という意味になる。
この二つの条文を合わせると、黒川検事長に国公法上の懲戒処分をできるのは、黒川氏の任命権者である「内閣」しかないということになる。もちろん、内閣の代表は安倍晋三総理だ。
逆に言えば、森雅子法相や稲田伸夫検事総長は、どう頑張っても、黒川氏に国公法上の正式な懲戒処分を科すことはできないのだ。
従って、懲戒処分をするかしないかを決めるのは内閣であって、法務・検察ではないということには、議論の余地がないのである。
今回の結果を法律的に解釈すれば、内閣(安倍総理)が、黒川検事長に懲戒処分をしないと決めたので、森法相と稲田検事総長が内規により、最も重い「訓告」という「指導監督上の措置」を下したということになる。つまり、厳しい懲戒処分にしなかった責任は、ひとえに安倍総理にあると言うべきなのだ。
安倍総理は、黒川氏の「任命責任は私にある」と言うが、それは任命権者であるからだ。しかし、任命権者であるということは、同時に懲戒処分権者でもあり、処分を行わないと決定した責任も自分が負っているということはわかっていなかったようだ。「訓告は法務・検察が決めた」と言って、自分の責任が免れるかのような発言を繰り返した。
そこには、国民を欺こうという官邸官僚の策略もある。訓告という措置を行ったのは法務・検察であるのは事実だが、それだけ言って黙っていれば、懲戒処分をしないと決めたのも法務・検察であるかのように聞こえるという計算だ。
ちなみに、マスコミの報道でもう一つ注意したいのは、黒川氏の行為が該当すると思われる「常習とばく」の場合の懲戒処分は、「停職」であるという解説だ。これは、人事院の「懲戒処分の指針」の「標準例」によるものだが、実は、その「指針」の中には、標準例より重くする可能性のある例として、「職責が特に高いとき」や「公務内外に及ぼす影響が特に大きい」場合を挙げている。黒川氏は検察ナンバー2で極めて高い地位にあり、また、今回の行為による検察への国民の信頼の失墜という影響は特大級だ。これら2点を勘案すれば、標準例の「停職」よりも一段厳しい処分、すなわち、「免職」にするのが常識的判断だろう。
その場合、退職金はゼロとなる。
つまり、テレビや新聞のまどろっこしい解説などに惑わされず、素直に人事院の指針に従えば、誰もが妥当だと納得する結論になるということだ。
※週刊朝日 2020年6月12日号
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- そもそも、なぜ異例の出世ができた? 黒川前検事長が陰で呼ばれていた「意外なニックネーム〜『猛獣使い』などと…」/文春オン… 仁王像 2020/6/02 10:38:34
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