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古賀茂明「弱者を切り捨てる安倍政権のコロナ対策」
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200302-00000013-sasahi-pol
AERA dot. 3/3(火) 7:00配信 週刊朝日 2020年3月13日号
古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。主著『日本中枢の崩壊』(講談...
新型コロナウイルス感染症対策本部の会合で2月26日、発言する安倍晋三首相(左端)
2月25日、政府は新型コロナウイルス感染症対策の基本方針を発表したが、そこに非常に心配なことが書いてある。それは、国内での感染状況の把握についての将来の方針転換である。
現在は、PCR検査(ウイルス感染の有無を判断する遺伝子検査)は、様々な要因を勘案して医師が必要と認める場合に実施することになっている。ただし、実際の現場では、4日前から咳が続き、ようやく熱が38度に上がった妊婦が検査を拒否されたとか医師が必要だと言っても検査できないなど理不尽な例が多発し、国民の間には不満と不安が高まりつつある状況だ。
しかし、今回の基本方針は、さらに不安を増幅する内容になっている。今後、「入院を要する肺炎患者の治療に必要な確定診断のためのPCR検査に移行」する可能性を予告したのだ。わかりやすく言えば、熱があってもダメ、苦しくてもダメで、肺炎で入院が必要だという状況になって初めて検査が認められるという意味になる。
いつそうなるのかというと、「地域で患者数が継続的に増えている状況では」と書いてある。今後は、各地域で患者数は継続的に増加していく確率が非常に高いと誰もが思っている。ということは、「肺炎になって入院」という危機に陥るまで検査ができない事態になるのはほぼ確実だと考えたほうが良い。
感染したとわかってもまだ特効薬はないからたいしたことはできない、だから早めに検査しても仕方ないと思っている人もいるが、これは完全な間違いだ。なぜなら、エイズ用などの既存の抗ウイルス薬に効果があることが判明していて、重症化しやすい患者などには、発症したら必要なタイミングですぐにこうした薬を投与すれば死に至る危険を軽減できる。逆に、肺炎で重症化してから検査をするのでは、対応が遅れて一命を落とすことになる確率が高まる。早期治療には早期診断が必須、早期診断には早期検査が必要というのは誰にもわかることだ。それができないということは、常識的に考えれば、必要な検査ができず、重症化して死に至るリスクを避けられないということだから、政府がまさに医療崩壊の予告を行ったと言っても良いだろう。
また、軽症者への検査をしないという方針だと、若者など軽症者が外でウイルスをまき散らすことで、お年寄り、基礎疾患のある方、妊婦などの弱者がその犠牲になる恐れが高まる。それを避けるためにも早期検査により軽症段階で感染者を特定し自宅待機を求めることが必要だ。今回の方針は、弱者切り捨て宣言でもある。
厚生労働省は何とか検査の数を減らしたいと考えているようだ。同省は、2月26日現在、クルーズ船とチャーター便と一部の地方機関の分を除き、1061件の検査を行い、うち149件が陽性だったとホームページで公表した。お隣韓国では、同25日までに1日7500件以上の検査態勢になっていて、累計4万件強の検査で977人が陽性だった。比例計算では、もし日本で4万件以上の検査を行えば、5千人以上の感染者が出てもおかしくない。
感染者が激増しても、検査しなければ、統計上の感染者数は増えない。感染がわからないまま死亡しても、新型コロナウイルスによる死者の数も増えないから、五輪開催などには好都合なのだろう。
安倍政権の「医療崩壊予告」と「医療弱者切り捨て宣言」を黙って見過ごすわけにはいかない。
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