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支離滅裂を絵に描く安倍内閣の瀬戸際対応
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2020年3月 3日 植草一秀の『知られざる真実』
安倍首相は専門家会議が示した 「これから1、2週間が、感染が急速な拡大に進むのか、収束できるのかの瀬戸際である」 の言葉を使い、小中高の一斉休校を要請し、各種イベントの自粛を要請した。 そのなかで安倍内閣が実施したのが3月1日の東京マラソンだ。 メディアが提供する東京マラソンの写真を見る限り、 「これから1、2週間が感染のスピードが急速に拡大するか、収束できるかの瀬戸際である」 との認識を安倍内閣が保持しているとはまったく思えない。 東京マラソンの沿道に7万人もの市民が集結したと伝えられている。 写真を見る限り、人と人が極めて近い距離で接触するような状況である。 この状況が一定時間維持されていたと考えられる。 屋内ではないが、大規模な濃厚接触を首都東京で創出したと言える。 学校を休校にしたが、保育所、学童クラブは対象外である。 何よりも満員電車での通勤が放置されている。 また、感染が広がっている国、地域からの日本への人の移動を制限していない。 ダイヤモンド・プリンセスの乗客を公共交通機関の利用で帰宅させた。 この乗客の感染が明らかになり、乗客が下船後にスポーツクラブを利用したことも明らかになっている。 乗客はスポーツクラブの利用を制限されていなかった。 安倍首相は国会答弁で 「かかりつけ医などが必要と考える場合、すべての患者が検査を受けられる十分な検査能力を確保する」 と答弁したが、加藤勝信厚労相は異なる答弁を維持している。 閣内不一致である。 加藤厚労相は「帰国者・接触者外来」の医師がPCR検査を行うかどうかを判断するというプロセスを維持する方針を示している。 「帰国者・接触者外来」は3月2日時点で全国に844機関しかない。 一つの都道府県に18しかないという数である。 この「帰国者・接触者外来」で受診した数は、2月の1ヵ月間で2185件にとどまっている(厚労省に報告があったもの)。 1ヵ月間に「帰国者・接触者外来」1機関が受診した患者の数は平均2.6人に過ぎない。 しかも、その「帰国者・接触者外来」の具体名が公表されていない。 安倍内閣は「帰国者・接触者外来」を支配して、PCR検査の拡大を阻止している。 目的は感染確認者数を抑制するためだ。 この不当な措置を正当化するためのロジックは、「感染者と非感染者が待合室で同室にならないため」のものというもの。 しかし、感染者と非感染者の臨床的区別はつかない。 したがって、現状で、感染者と非感染者は待合室で同室になっている。 このとき、街のクリニックの医師が、PCR検査が必要だと判断すれば、このクリニックから検査機関に直接検査を発注すればよい。 これが、安倍首相のいうところの、「かかりつけ医などが必要と考える場合、すべての患者が検査を受けられる十分な検査能力を確保する」というものだ。 しかし、国会での加藤厚労相の答弁は、PCR検査の発注権限を「帰国者・接触者外来」の医師に限定するというもの。 目的は明白だ。 PCR検査を広範に実施することを阻止することにある。 国会質疑で重要なことは、一般の医療機関の医師の判断によって、民間検査機関にPCR検査を発注できるよう、直ちに運用を変えることについて明確な答弁を得ることだ。 安倍首相答弁と加藤厚労相答弁の矛盾を突けば、これは可能になる。 実効性のある国会質疑とは、このようなことを言う。 安倍首相の記者会見について、私はかねてより「やらせ会見」だと指摘してきた。 壇上にはプロンプターが用意され、透明な板に映し出される文字を読むことで会見が行われている。 記者からの質問は事前に提出されており、質問者として誰を指名するのかもあらかじめ決められている。 質疑応答の質問に対する答弁も事前に官僚が用意しており、安倍首相はその原稿を読むだけである。 事前に質問が提出され、官僚が答弁を用意していない質問は受け付けない。 このことが、3月2日の国会質疑で安倍首相の言葉によって明らかにされた。 通常はこれを記者会見と言わない。 単なる朗読会または学芸会だ。 漢字に読み仮名が書かれていないと、 「云々(うんぬん)」を「でんでん」と読み上げ、 「背後(はいご)」を「せご」と読み上げ、 願って「已(やみ)ません」を「いません」と読み上げることになる。 Leaderの資質を欠くだけでなくReaderにもなれないのが現実だ。 |
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